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さよなら世界、こんにちは異世界

41.異世界でアフタヌーンティー3

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 サウにいちゃんが、クレープを両手で掲げてプルプルと震えている。

 まるで、その姿は4年に1回あるスポーツの祭典のトーチを持っているようで、ちょっとだけ皆んなが引き気味だ。

「これは、エディたんがミャウミャウの言語で書いたんですか?」
「えっ……」

 サウにいちゃん……。まったく、意味が分かりません。目をキラキラさせながら、僕に訴えかける姿は可愛いと言えなくもないけど。
 ミャウミャウって、なぁに?まったく分からないので、ガディにいちゃんに救いを求めて見たら、クレープの3分の1をひと口でガブリと食べているところだった。続けてガブガブ、ゴグンと飲み込んで。えぇ~、クレープもペロリと食べちゃった!!

「こんな柔らかい食べ物は、初めてだ」

 そう言って、サウにいちゃんをチラリと見ると、2つ目のクレープに手を伸ばした。ガディにいちゃんは食べるのに忙しくて、サウにいちゃんのことは放置している……。助けにはならないみたい。
 
 僕はちょっと緊張しちゃうけど、思い切ってサウにいちゃんに聞いてみた。

「あのね、サウにいちゃん。ミャウミャウって、なあに?僕に教えて貰えませんか?」

 サウにいちゃんが、ハッとしたように我に返った。

「私、ミャウミャウって言ってましたか?」

 サウにいちゃんが青ざめた顔をしている。僕が強く頷くと、ガクリと膝をついた。

「だ、大丈夫?サウにいちゃん?僕、へんな事を聞いちゃったかな?言いたくなければ、いいの!」
「エディたん……。可愛い…。そして、優しい…」

 サウにいちゃんは、前は僕の事をすごい嫌ってた。今は好かれてると思うけど、振り幅が大きくて戸惑うの。
 でも、好かれてるのって嬉しいな。嫌われてたエディは毎日泣いていたから。

「エディたん…。何を聞いても笑いませんか?」
「すごい楽しい事なら笑っちゃうかも知れないけど、僕は誰かをバカにしたりして絶対に笑わないよ」
「そうですか……。ミャウミャウというのは、私のお気に入りのぬいぐるみの事なんです。実は私は可愛いくて小さい雑貨やぬいぐるみがたまらなく好きで。成人をとうに過ぎた男性が、こんな趣味があるのは気持ち悪いですよね」
「全然、気持ち悪くないもん。サウにいちゃんが好きなんだから、良いじゃない?趣味は自分が楽しければイイの!ミャウミャウだって、サウにいちゃんっ、顔を上げて!と言ってるよ」

 僕は好きは好きでイイじゃんと手をグーにして力説すると、さっと顔を上げてサウにいちゃんは僕の手を掴んで言った。

「エディたん、それではお願いがあります」
「サウにいちゃん、なあに?僕が出来る事なら協力するよ」
「では、せっかくなのでエディたんが作ってくれたクレープを頂きますね。その後にお願いしまね。ところで、この可愛らしい字はなんて書いてあるんですか?」

 クレープを包む紙には、日本語で『サウにいちゃんへ』と書いてあった。あっーー!僕のバカ!日本語じゃ、ダメじゃんかぁ。

「うーんとね、暗号でサウにいちゃんへって書いたの。えへへ」

 こんな言い訳、通じるかな~?

「エディたん、私と2人だけの暗号を書いてくれたんですね」

 通じました!でも騙すようで心苦しいので、サウにいちゃん本当は違うよー!って心の中でコソッと言って、満面の笑顔で誤魔化した。

「美味しいです!クリームが口当たりは軽くて、生地がもちもちしてますね。初めて食べました。エディたんは、まだ小さいのにこんなに美味しい物を作れるのはすごいね」
「本当に、おいしい?」
「ええ、美味しいですよ」

 すごく嬉しい!褒められるってこんなに嬉しい事なんだね。僕はとっても嬉しくなって、また張り切ってたくさん作った。

「エディたん、可愛いですよ。まるで、ミャウミャウみたいです!」
「サウにいちゃん……。お願いって、僕の髪をツインテールに結ぶ事だったのぉ」
「とっても可愛い、うさたんになりましたね」
 「恥ずかしいよぉ。サウにいちゃんのばかぁ」

 僕、異世界に来る前は普通の短髪だったから、倒れそうになるくらい恥ずかしいよ。でもサウにいちゃんが楽しそうしているから、これくらいならまぁいいかぁと、思った。
 
 ガディにいちゃんは、まだうまいうまいと食べ続けてる。サウにいちゃんは、僕の髪をうっとりした顔で、頬擦りしてて。なんだかおかしな光景だけど、僕はにいちゃん達と前より仲良くなれた気がする。

 楽しくて、嬉しくて、驚いて、やっぱり楽しい。そんな僕の気持ちが届いたように、ダンからもらった琥珀石が僕の胸元でチカッと光った。

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