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さよなら世界、こんにちは異世界
23.異世界でにいちゃんと
しおりを挟む「しっかし、エディン!おまえ、変わったよなぁ~!うっま、このミートパイ、サクサクのうまうまだなぁ~。ゴクン……」
「でしょでしょ!ばあやのミートパイ最高ですよね。ガンにいちゃんも、そんな性格でしたっけ?僕、もっと怖い人だと思ってました。もぐもぐ……」
「うん?俺は怖い人だぜ。なんせ、騎士団長だからな。しっかし、うまいな。これ、販売したら流行ると思うぞ。あと、俺の事はガディにいちゃんって呼んでくれ。むしゃむしゃ……」
「お二人とも、食べながら話すのはお行儀悪いですよ。おやめ下さい」
えへへ。ばあやに言われちゃった。パイも食べたいし、にいちゃん達とも話したいし、ついつい食べながら話しちゃった。お行儀悪いよね……反省。
「ばあや、お口に入ってないから話していいですか?」
「エディン様、いいですよ」
僕は思い切って、にいちゃん達に聞いてみた。
「あのね、ガディにいちゃんとサウにいちゃん。僕ね、この間ね。寝込んでたの。そしたら、前のことが少ししか覚えてなくて。みんなが、僕のことを前は酷かったみたいに言うけど……前の僕はどうだったのかなぁ。にいちゃん、教えて下さい」
僕は手と手を合わせて、お願いしますのポーズをした。
「エディン、そんな可愛いことをしなくても、おまえは可愛いし、教えてやるから、もっとパイをくれ」
「ガングリオン兄さん、食い気に負けないで下さいよ。エディン、これまでの兄としての態度は申し訳なかった。私も大人気なかったよ。寂しい思いをさせて、すまなかったな」
「サウにいちゃん……、僕、寂しかったよおお――!」
サウにいちゃんが腕を広げるから、思わず抱きついちゃったけど、サウにいちゃんもこんなタイプじゃなかったよね。
サウにいちゃんは、たしか冷静沈着で普段から感情を読ませないタイプだった。物腰は柔らかく優しげな雰囲気だけど、それを裏切るように冷たい語調だった。
今は僕の頭をナデナデしながら、甘い匂いがすると言ってクンクン匂いを嗅いでるよ。カワイイ、すごくカワイイと呟いてるのは聞こえないフリをした方がいいよねぇ。
ばあやをチラッと見たら、僕たちを微笑ましい目で見ていた。ガディにいちゃんを見ると、バクバクとまだ食べている。ブルーベリーパイも美味しそうに食べてるから、作り手としてはうれしいけど僕の分も1つ残しておいて欲しいな。目が合ったら、親指を立ててグッドサインをしてきた。違うから、そうじゃないから。
僕を膝の上に座らせたサウにいちゃんを何とかして欲しくて見てるのにぃ。
「ガングリオン兄さんに取られないように、私たちの分のパイを取り分けておきましょう。そういえば、このブルーベリーパイはエディンが作ったそうですね。私は料理は一切したことがないので、純粋にすごいと思いますよ。エディンはすごいですよ」
「本当に?でも、僕のことを嫌いって言ってたもん」
「さっきの話しが聴こえてしまいましたか……。ごめんね、エディン。貴方を傷つけましたね」
サウにいちゃんは、すごく優しい目で僕を見ていた。その目には、すまない、悪かった、ごめんな、と悔恨の思いが浮かんでいた。こんな目で僕を見る人を責められる訳がない。
「ううん。僕も、悪かったでしょう?サウにいちゃんなら教えて。僕がした、悪い事を教えて欲しいな」
「たわいもない、いたずらだよ。家に持ち帰ってきた書類を燃やされたり、クローゼットの中に汚物を入れてきたり、ベッドに花瓶をぶちまけたり、魔法騎士団の制服のポケットに女性物の下着を入れたり……。地味に痛手になる嫌がらせでしたよ」
ヒエ――!己の所業にめまいがする。話してるサウにいちゃんの目は、酷い弟の話しをしているのに慈しみに溢れていた。すごい許してますよ~って見てくるけど。
僕、サウにいちゃんに許して貰う事をしたっけ?分からないけど、サウにいちゃんに優しくされるのはうれしいから良しとしよう!これ以上、黒歴史を聞かせられたくないもん。
応援ありがとうございます!
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