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さよなら世界、こんにちは異世界

17.異世界の適正

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 翌日、ばあやは元気に起きてきた。第一声は、僕を見るなり「まあっ!」だった。いきなり、僕が隣にいて驚くのは分かるけど、「まあ!」ってばあやらしいよね。それを聞いて思わず吹き出して笑ってしまったら、怒られちゃった。
 
 それでも、ばあやはいきなり僕の身体を触ってきて、ケガは無いですか?どこも痛く無いですか?って聞いてくるから、涙ぐんでしまった。

 毎回、ばあやのお説教は「貴族としてのたしなみ」だったけど、今回は「淑女のベッドに入ってきてはいけません」だ。そうでした。ばあやも淑女でした。この国の法律で、男女10歳以上の者は同衾してはならないと法律にもなっていて、これは親子間でもそうなんだって。

 10歳だと、小学4年生のころだから……、前の時は親子川の字で寝たけどなぁ。住んでる世界も違うと文化も違うよね。分かってるけど、やっぱり寂しく思ってしまう。僕が子どもっぽいというのと、どうしても貴族社会に馴染めない。根っからの庶民なんだよね。

「坊ちゃま!いま別の事を考えていたでしょう?」
「ばあやは鋭いなぁ。う~とね、僕は生まれ間違えたんじゃないかと考えてたんだよ。だってさ、どうしても貴族社会に馴染めなくて。僕は本館で出てくるようなフルコースの料理よりも、ばあやのご飯が好きだし、出来たら今度は一緒にご飯を作ってみたい」
「坊ちゃま……。平民になるという事は働かないと食べていけないという事ですよ。お金がない時はお腹が空いても我慢をしなくてはいけない時もあります。薪が買えない時は、寒くても我慢しなくてはいけない時があります。この温かい部屋じゃないって事ですよ」

 ばあや、ありがとう。だいたい、貴族の使用人たちは都合の悪いことは言わないけど、ばあやはいつも僕を認めて心に寄り添ってくれる。

「うん。僕もたくさん考えたんだけど、大きくなって好きなじゃない人と結婚するのもイヤなんだ。僕は小さな家でいいから、のんびり暮らしたいの。僕、変なことを言ってるかなぁ?」
「坊ちゃま、おかしな事は言ってないですよ。ただ、貴族的じゃないだけで。まるで、私の甥っ子みたいな事をいいますね。ばあやは、坊ちゃまの味方ですよ。これから、一緒に坊ちゃまが生きやすい暮らし方を考えていきましょうね」
「うんっ!」

 まだ、僕は10歳。この国の成人は18歳。けれど、本人の事情により16歳から自立が出来る。貴族だったら、現当主が亡くなって16歳で爵位を継がなくてはいけない場合。平民だと、身寄りがなく孤児院で育った場合など。

 だから、僕はあと6年間を黙ってこのまま飼い殺しで過ごすつもりは無い。6年間で、手に職を付けなくては。まずは冒険者ギルドに登録しなくちゃ。牧場経営の適性がなかったらどうしよう。その時はその時に、心配しよ。今は広がっていく未来のために、出来るだけ楽しことを考えたい。

 その日から、僕は本館の図書館に通う事になった。少しでも知識を貯めておきたい。本当なら、公爵家の令息なら三男でも家庭教師がつくはずなんだけど、そんなそぶりは何もない。だったら、自力で出来る事を精一杯やるしかない

 精霊魔法の適性を調べていたら、面白い項目を見つけた。テイマーだって。これって、動物やモンスターが仲間になってくれるスキルだよね。いいなぁ、僕も欲しいなぁ。かっこいいドラゴンも憧れるけど、肩にちょこんと乗ってくれるくらい小さい動物も可愛いなぁ。
 
 その日は、ピンク色の小さなトカゲが仲間になる夢を見た。みゅーみゅーって、泣いてとても可愛かったぁ。いつか、会いたいな。

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