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さよなら世界、こんにちは異世界
13.異世界で抱っこ2
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ダンに抱っこされてるなんて、あのダンだよ!
「精霊と勇者と滅びの国」の本の登場人物の中で、僕が一番大好きだった人だ。まさか、実物はこんなにかっこ良かったなんて!
焦げ茶い色の髪の毛も明るい茶色の瞳も、何度も想像した。その身体は岩山のように固く、逞しい体格をしていながら、動きは虎のように敏捷だった。こんなふうに書いてあったから、ものすごい大男だと思っていたけど……。確かに大きい人だけど、この人は何頭身なの?というぐらい、足が長くてバランスが取れたスタイルをしていた。
ほえ~、カッコいい!僕も大きくなったらこんなにカッコよく逞しくなれるかな。
「ダンさん。護衛さん達、見えないみたい。ばあやを馬車に乗せたいから、すみませんが手伝って貰っていいですか?」
「ああ、いいよ。まずは、ばあやさんを安全な場所に連れていこう。馬車の停車場で大丈夫か?それと、俺のことはダンって呼んでくれ」
「ダンさんを、ダン?いいんですか?ばあやをよろしくお願いします」
ダンの腕に座らせて貰いながら、僕はぺこりと頭を下げた。
「ああ、ダンさんと呼ばれるのに慣れてないからな。あと、いくら子どもでも貴族が簡単に頭を下げるもんじゃないぞ」
「貴族?貴族ってどこかに書いてありましたっけ?なんで分かったの?」
なんで、バレたんだろう。洋服に紋章が付いてるのかな?学校の制服みたいに、内側にエディンとか?そんな訳、ないよね。
「エディ、平民はこんな金を溶かしたような色の髪や、蜂蜜や琥珀のような色の瞳に、抜けるような色白の肌はしていない。この見た目だと、貴族ですと言ってるようなものだ。俺が見つけて良かったよ。人攫いに捕まったら、すぐに国外に売られてしまうぞ。今度からは気を付けるんだよ」
また、頭をぽんぽんとされて。ダンは、僕をいったん降ろすと右手にばあやを抱えて、左手に僕を抱え直した。僕は歩くよって、ちゃんと言ったんだよ。
でも、ダンが「女と子どもは甘やかしなさいと、小さい頃からシスターに言われてたんだよ。だから、どうか俺に抱えさせて貰えませんか?」なんて言うから、僕は嬉しくなって抱っこされたままでいた。ダンが僕とばあやを抱えても、歩くスピードは僕が1人で歩くよりも早くて頬に風が当たった。
「どうした?こうやって歩くのが楽しいのか?」
「はい、抱っこされて歩くのも初めてだし、こんなに早く歩くのも初めてでドキドキしちゃった。楽しい!あっ、こんな時に楽しいだなんて不謹慎ですみません」
「なぁに、子どもが気にするな。それに、エディは1人で心細いだろ。良く頑張ってるよ」
また、頭をぽんぽんとしてくれた。ダンの手は大きくて温かくて、すごく安心する。でも、僕のこと何歳だと思ってるんだろう?
「ダン。僕の事を何歳だと思ってるの?」
「エディは6歳くらいかな?それか、しっかりしてるから、7歳かな」
「ええ……、僕、そんなに小さく見えるの?これでも10歳だよ」
ちょっとだけ、ムカついたから顔をプイっと背けてしまう。ダンのばか。僕、背が小さいことを気にしてるのに。
「エディ、ごめんな。傷つけるつもりは無かったんだ。エディは可愛いから、つい小さい子どものように思ってしまう」
「いいよ。ダンは悪くない。僕がダンぐらいの大人になったら、ダンより大きくなるんだから」
「あは、楽しみだな。待ってるよ。おっ、そろそろ停車場だぞ」
僕たちは、停車場に着くと待合所の小屋に向かった。ドアの手前で、中から数人の話し声と笑い声が聞こえた。
「お前ら、公爵家の子息の護衛だろう?こんな所で休んでいていいのか?」
「だって、なあ。魔獣が出たから護衛なんてしていると、こっちの命が危ねえだろう。それに三男のことなんて、誰も気に掛けてねえよ」
「もう少ししたら、ご無事でしたかー?って走って行ってくるさ。バカそうな子どもだったから、ここで休んでるのもバレねえだろう」
ドアノブに手を掛けようとしたダンを黙って止めて、向こうの馬車を指差した。ダンはそのまま静かに、馬車に向かってくれた。ばあやを休ませる方が先だ。
このくらいで泣くのは悔しいから、泣かないように我慢していた。僕は呪いの悪役令息だから、悪く言われるのは慣れている。こんなの大したことはない。僕はこんなことぐらいで傷つかない。僕は大丈夫だ。
ただ、ダンの手が、僕を抱えるダンの腕が優しくて。
ばあやを馬車の座席に降ろすと、何も言わずに優しい目をして、また頭をぽんぽんしてくれた。
「精霊と勇者と滅びの国」の本の登場人物の中で、僕が一番大好きだった人だ。まさか、実物はこんなにかっこ良かったなんて!
焦げ茶い色の髪の毛も明るい茶色の瞳も、何度も想像した。その身体は岩山のように固く、逞しい体格をしていながら、動きは虎のように敏捷だった。こんなふうに書いてあったから、ものすごい大男だと思っていたけど……。確かに大きい人だけど、この人は何頭身なの?というぐらい、足が長くてバランスが取れたスタイルをしていた。
ほえ~、カッコいい!僕も大きくなったらこんなにカッコよく逞しくなれるかな。
「ダンさん。護衛さん達、見えないみたい。ばあやを馬車に乗せたいから、すみませんが手伝って貰っていいですか?」
「ああ、いいよ。まずは、ばあやさんを安全な場所に連れていこう。馬車の停車場で大丈夫か?それと、俺のことはダンって呼んでくれ」
「ダンさんを、ダン?いいんですか?ばあやをよろしくお願いします」
ダンの腕に座らせて貰いながら、僕はぺこりと頭を下げた。
「ああ、ダンさんと呼ばれるのに慣れてないからな。あと、いくら子どもでも貴族が簡単に頭を下げるもんじゃないぞ」
「貴族?貴族ってどこかに書いてありましたっけ?なんで分かったの?」
なんで、バレたんだろう。洋服に紋章が付いてるのかな?学校の制服みたいに、内側にエディンとか?そんな訳、ないよね。
「エディ、平民はこんな金を溶かしたような色の髪や、蜂蜜や琥珀のような色の瞳に、抜けるような色白の肌はしていない。この見た目だと、貴族ですと言ってるようなものだ。俺が見つけて良かったよ。人攫いに捕まったら、すぐに国外に売られてしまうぞ。今度からは気を付けるんだよ」
また、頭をぽんぽんとされて。ダンは、僕をいったん降ろすと右手にばあやを抱えて、左手に僕を抱え直した。僕は歩くよって、ちゃんと言ったんだよ。
でも、ダンが「女と子どもは甘やかしなさいと、小さい頃からシスターに言われてたんだよ。だから、どうか俺に抱えさせて貰えませんか?」なんて言うから、僕は嬉しくなって抱っこされたままでいた。ダンが僕とばあやを抱えても、歩くスピードは僕が1人で歩くよりも早くて頬に風が当たった。
「どうした?こうやって歩くのが楽しいのか?」
「はい、抱っこされて歩くのも初めてだし、こんなに早く歩くのも初めてでドキドキしちゃった。楽しい!あっ、こんな時に楽しいだなんて不謹慎ですみません」
「なぁに、子どもが気にするな。それに、エディは1人で心細いだろ。良く頑張ってるよ」
また、頭をぽんぽんとしてくれた。ダンの手は大きくて温かくて、すごく安心する。でも、僕のこと何歳だと思ってるんだろう?
「ダン。僕の事を何歳だと思ってるの?」
「エディは6歳くらいかな?それか、しっかりしてるから、7歳かな」
「ええ……、僕、そんなに小さく見えるの?これでも10歳だよ」
ちょっとだけ、ムカついたから顔をプイっと背けてしまう。ダンのばか。僕、背が小さいことを気にしてるのに。
「エディ、ごめんな。傷つけるつもりは無かったんだ。エディは可愛いから、つい小さい子どものように思ってしまう」
「いいよ。ダンは悪くない。僕がダンぐらいの大人になったら、ダンより大きくなるんだから」
「あは、楽しみだな。待ってるよ。おっ、そろそろ停車場だぞ」
僕たちは、停車場に着くと待合所の小屋に向かった。ドアの手前で、中から数人の話し声と笑い声が聞こえた。
「お前ら、公爵家の子息の護衛だろう?こんな所で休んでいていいのか?」
「だって、なあ。魔獣が出たから護衛なんてしていると、こっちの命が危ねえだろう。それに三男のことなんて、誰も気に掛けてねえよ」
「もう少ししたら、ご無事でしたかー?って走って行ってくるさ。バカそうな子どもだったから、ここで休んでるのもバレねえだろう」
ドアノブに手を掛けようとしたダンを黙って止めて、向こうの馬車を指差した。ダンはそのまま静かに、馬車に向かってくれた。ばあやを休ませる方が先だ。
このくらいで泣くのは悔しいから、泣かないように我慢していた。僕は呪いの悪役令息だから、悪く言われるのは慣れている。こんなの大したことはない。僕はこんなことぐらいで傷つかない。僕は大丈夫だ。
ただ、ダンの手が、僕を抱えるダンの腕が優しくて。
ばあやを馬車の座席に降ろすと、何も言わずに優しい目をして、また頭をぽんぽんしてくれた。
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