バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

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さよなら世界、こんにちは異世界

12.異世界で抱っこ

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「大丈夫だったかい?坊っちゃん」
「助けてくれてありがとうございます。この石も貸してくれてありがとうございました。あの……ベヒモスの近くに胸当てをつけて剣を下げている2人組は見ませんでしたか?護衛なんです。様子を見てくると行ってくれたけど、帰ってこなくて。ばあやも、寝てるし。僕、まだ身体が小さくて、ばあやをおんぶしたくても出来ないの……ぐす……」

 僕、16歳だけど……、今は10歳の子どもで。護衛さんもいなくてばあやも傷ついて(治癒したけど)、初めて来た場所で誰も知り合いがいなくて。周りを見たら、瓦礫ばかりでいろんな人のうめき声も聞こえてくる。

 僕がここで泣いても、どうしようもないし、誰も助けてくれないのは分かっていた。だから、泣くまいと思って歯を食いしばって頑張ってたけど、10歳の僕の手は思ったよりも頼りなくて小さい。
 そんなふうに思ってたのに、彼が……「大丈夫だったかい?」なんて、優しく言うから泣いてしまった。怖くて不安で、涙が後からあとから溢れ出た。

「泣いてごめんなさ…い、ひっぐ…。ぼ、ぼく……、泣かないようにしてたのに泣いて……ひぐ…ごめ、ごめんなさい」

 彼はこんな僕を面倒くさそうな顔もしないで、そっと抱きしめてくれた。

「坊ちゃんの歳だったら、泣くのは当たり前だ。1人で、ばあやさんを守って泣かないで我慢していたのは、偉いぞ!」

 そう言って、僕を抱き上げて彼の腕に座らせてくれた。僕はそんなことをされた事がなかったし、彼の身長が高過ぎて怖くて、思わずしがみついてしまった。抱っこなんて、エディはされた事がないから怯えてしまう。

「重いでしょ。降ろして下さい」
「坊ちゃんは小鳥みたいに軽いから、いくらでも大丈夫だよ。それに、視線が高くなった方が、護衛の事も探しやすいだろう?」
「そうだけど、抱っこなんてされた事がないから恥ずかしいよ……」
「こんな小さい子が抱っこをされた事がない?嘘だろ?」
 
 彼はすごい驚いて、食い入るように僕を見つめている。やっぱり、抱っこされた事がないって珍しいことなんだ。ちょっと、ショック。

「子どもはたくさん抱っこされて、いっぱい褒められて大きくなるってシスターが言っていたぜ。だから、今は抱っこされていればいいんだよ」
「はい……ありがとう。あとね、僕はエディって言うの。お兄さんはなんて、お名前ですか?
「エディ、よろしくな。俺はダンバード・スタンフィール。ダンって呼んでな。冒険者をしているんだ」

 僕は、止まったはずの涙がまた頬を一筋伝って落ちるのを感じた。
 彼だ、彼なんだ。やっと、ダンに会えた!僕がいつも読んでいて、大好きだったダンだ!

 ああ、でも、本来のエディなら、ダンには会っていない。どういうことなんだろう?ダンはラストバトルで、第二王子のライデン様と一緒に戦う勇者のはずだ。この「精霊と勇者と滅びの国」の世界が改変している?
 
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