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さよなら世界、こんにちは異世界
8.異世界の商店街
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市街地に出掛けることになって、護衛騎士が2人もついた。2人も僕の私用についてきて貰っていいのかなと恐縮したけど、公爵家のご子息なので当たり前ですと言われてしまった。16歳の僕も、10歳のエディも、貴族の生活は窮屈で、早く家を出たがっている。けれど、現実では年齢が壁となって、なかなか上手くいかない。
よし!うじうじしてても、仕方がない。僕、買い食いって一度もやったことが無かったんだ。今日のミッションは、買い食いをするにしよう!
華美な貴族の洋服から、裕福な商家の子息風の洋服に着替えて、上からさらにフード付きのマントを羽織って、いざ出発だ!馬車も公爵家の家紋が入っていないお忍び用の馬車に乗った。石畳のエントランスから乗り込んで公爵家の広い敷地を通り大きな門を出ると、視界がガラリと一変した。
「うわーあ、畑がある。原っぱもある。すごい家が多い!いっぱい人が住んでるんだねぇ。ばあや、見て見て!羊だよ、本当にモコモコだぁ。ばあや、すごいねぇ」
「エディン様、前も見たことがあったでしょう?」
「そうなんだけどね。この間、寝込んだら忘れちゃったの。ダメかなあ」
「そうですか。そうしたら、またいろいろ見ましょうね。忘れたなら仕方ありません。今度は牛も見に行きましょうか?」
「うん、行っていいの?」
「エディン様は牧場経営を行いたいのでしょう?それならば、たくさん見ていろいろ体験しなくてはね」
「うん!!」
僕の世界が広がった気がした。真っ白い病室から、こんなに色鮮やかな世界に生まれ変わった。新緑が眩しくて、羊たちが食んでいる草原はグリーンの絨毯を敷き詰めたように美しい。
煙突がついている家屋は、屋根の色がピンクだったり水色だったり、まるで童話の世界に迷い込んだみたいだ。道端には野草が可愛らしい花を咲かせている。山からは涼しい風が吹いてくる。遠くへ眼を向ければ、地平線の切れ間に蜃気楼のように海が見えた。空は澄み切ってどこまでも青く、世界は広く見たことのない国へ続いているのだと予感させる。
僕は生きている。この異世界で、「精霊と勇者と滅びの国」で!身体は痛くなくて、チューブに繋がれていない。きっと、この足は疲れるまで走れて心臓も止まらない。病室のベッドで夢見てきたことが、現実なんだとじわじわと実感してきた。そして、初川終の父さんと母さんには、もう会えなくて走る姿を見せられない事に涙がポロリとこぼれた。
しばらくすると、馬車のスピードが徐々にゆっくりになってきた。窓から顔を出すと、道の先に大きな商店街のような場所に近付いている。馬車は乗り入れられないから、ここで停留場して徒歩で行くらしい。停留場には休憩所のような小さな小屋があった。御者さんは、こちらで待機しているみたい。
「ねえ、ばあや。御者さんのお昼ご飯は用意してあるの?何も食べないで待ってたら、お腹ペコペコになっちゃうよ。僕、なんか買ってこようか?」
「エディン様。いいですか、お優しいお気持ちは御者も喜ぶと思いますが、まず御者さんと呼ぶのはお止めください。人前では絶対にダメですよ」
「はい、分かりました。ご飯は?」
「エディン様が気になさるのであれば、買い物の途中で購入してお渡ししましょうか?」
「それ、いいね!僕だけ美味しい物を食べて、御者さんが何も食べないのって気になるよね!」
ばあやとそんな話をしていたら、馬車が停まった。着いたみたいだ。
よし!うじうじしてても、仕方がない。僕、買い食いって一度もやったことが無かったんだ。今日のミッションは、買い食いをするにしよう!
華美な貴族の洋服から、裕福な商家の子息風の洋服に着替えて、上からさらにフード付きのマントを羽織って、いざ出発だ!馬車も公爵家の家紋が入っていないお忍び用の馬車に乗った。石畳のエントランスから乗り込んで公爵家の広い敷地を通り大きな門を出ると、視界がガラリと一変した。
「うわーあ、畑がある。原っぱもある。すごい家が多い!いっぱい人が住んでるんだねぇ。ばあや、見て見て!羊だよ、本当にモコモコだぁ。ばあや、すごいねぇ」
「エディン様、前も見たことがあったでしょう?」
「そうなんだけどね。この間、寝込んだら忘れちゃったの。ダメかなあ」
「そうですか。そうしたら、またいろいろ見ましょうね。忘れたなら仕方ありません。今度は牛も見に行きましょうか?」
「うん、行っていいの?」
「エディン様は牧場経営を行いたいのでしょう?それならば、たくさん見ていろいろ体験しなくてはね」
「うん!!」
僕の世界が広がった気がした。真っ白い病室から、こんなに色鮮やかな世界に生まれ変わった。新緑が眩しくて、羊たちが食んでいる草原はグリーンの絨毯を敷き詰めたように美しい。
煙突がついている家屋は、屋根の色がピンクだったり水色だったり、まるで童話の世界に迷い込んだみたいだ。道端には野草が可愛らしい花を咲かせている。山からは涼しい風が吹いてくる。遠くへ眼を向ければ、地平線の切れ間に蜃気楼のように海が見えた。空は澄み切ってどこまでも青く、世界は広く見たことのない国へ続いているのだと予感させる。
僕は生きている。この異世界で、「精霊と勇者と滅びの国」で!身体は痛くなくて、チューブに繋がれていない。きっと、この足は疲れるまで走れて心臓も止まらない。病室のベッドで夢見てきたことが、現実なんだとじわじわと実感してきた。そして、初川終の父さんと母さんには、もう会えなくて走る姿を見せられない事に涙がポロリとこぼれた。
しばらくすると、馬車のスピードが徐々にゆっくりになってきた。窓から顔を出すと、道の先に大きな商店街のような場所に近付いている。馬車は乗り入れられないから、ここで停留場して徒歩で行くらしい。停留場には休憩所のような小さな小屋があった。御者さんは、こちらで待機しているみたい。
「ねえ、ばあや。御者さんのお昼ご飯は用意してあるの?何も食べないで待ってたら、お腹ペコペコになっちゃうよ。僕、なんか買ってこようか?」
「エディン様。いいですか、お優しいお気持ちは御者も喜ぶと思いますが、まず御者さんと呼ぶのはお止めください。人前では絶対にダメですよ」
「はい、分かりました。ご飯は?」
「エディン様が気になさるのであれば、買い物の途中で購入してお渡ししましょうか?」
「それ、いいね!僕だけ美味しい物を食べて、御者さんが何も食べないのって気になるよね!」
ばあやとそんな話をしていたら、馬車が停まった。着いたみたいだ。
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