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さよなら世界、こんにちは異世界
2.三度寝からのおはよう異世界
しおりを挟む「大丈夫なのか!?エディは、エディ~!なんてことだ……」
「わたくしのエディは……。ああ、可哀想に……。倒れるなんて、なんてことなの……」
あれから、また僕は三度寝をしてしまったみたい。う~ん、よく寝たな。そろそろ、お昼の時間かな。今日の昼食のメニューは何だろう。出来れば、伸びていないうどんが良いな。こうやって寝ているだけで、食事の用意をして貰えるなんて感謝しなくちゃな。でも入院中は、暇過ぎてけっこう食事は楽しみだったりする。
周りでガヤガヤ聞こえるけど、何だろう?エディ?ああぁぁぁーーー!エディって、さっきの夢の続き!そうっと薄目を開けて周囲の様子を探った。また、薄絹のレースカーテンと天蓋には妖精と花の絵。はぁーと、軽くため息をついた。まだ、夢は覚めてないらしい。僕の寝ているベッドの周りに人影が見える。近くに人かいると知って緊張した。
「エディはまだ目が覚めないのかしら。こんなことになるのなら、本館の方に住めば良かったのに」
「ああ、この別館からまた本館に部屋を移そう。また一緒に暮らせるぞ。エディ付きのメイド達はどうしようか。いっその事、ばあやにも暇を出そうか」
待って───!僕の中のエディが叫んでいる。ばあやは悪くない、ばあやをどこにも行かせないで。
僕の頭の中にエディの記憶がどっと流れこんできた。
お散歩中に、よちよち歩きのエディが疲れたら、さっと目の前に座っておんぶをしてくれた。ばあやの背中はあたたかくて柔らかくて、いつも食べ物の優しい匂いがした。お仕事と公務で忙しいお父様とお母様。愛してくれて我儘をたくさんきいてくれたけど、いつも傍にいなかった。物心ついた時から、部屋には一人で寝て起きていた。朝起きて誰もいないベッドは怖くて寂しかったけど、いつもばあやが気付けば傍にいて「おはようございます」と言ってくれた。寝る時も眠れない時はお唄も歌ってくれた。幼い頃は手を引いて歩いてくれた。
年の離れたお兄様もお会いすれば可愛がってくれたけど、そもそもひと月に一度会えれば良いほうだった。長兄ガディ兄様も次兄サウ兄様も、僕に優しくて我儘を許してくれたけど、いつも傍にはいてくれなかった。
ばあやだけがいつも傍にいてくれた。
「坊ちゃまは公爵さまのご子息なんですから、そんなに我儘を言ってはいけませんよ。市井の民のため、領地の民のために心を傾けなくてはいけません。公爵の誇りと、貴族の慈悲を持って、優しい人になって下さいまし。それがばあやの楽しみです」「坊ちゃま、みんなに内緒ですよ。町で見つけた甘い菓子です。ちょっとだけですよ」「ほら、ばあやが見つけた小さな虫の卵です。この中にも、坊ちゃまやばあやと同じ命が息衝いていますよ」「この卵と僕は同じなの?」「ふふ、坊ちゃまと卵は同じじゃないです。言葉は難しいですね。ただ、等しく生きているんですよ」
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