11 / 37
兄弟の章
しおりを挟む「可愛い後輩が出来ましたわね」
「はぁ~」
にこやかに微笑むシェールの隣でペイストが大きなため息を吐いた。
「ペイストが入学式前におかしかったのは弟さんがいたから?」
「まぁ、な。両親離婚して、逢うの久しぶりなんだよ・・・」
「そうなんだ」
現代では珍しくないけど、原因はそこじゃなくて、きっかけにしかなってないんだろうけど、なんかあんまり立ち入っちゃいけない雰囲気だ。
私もシェールもそれ以上は聞かない事にした。
少し経ったある日の夕方、オルドルに中庭に呼び出された。
試験の結果を聞いたんだろうな。
「・・・・・・。質問してもいい、デスカ?」
「どうぞ。何でも聞いて」
頑張って敬語を使っているみたいで可愛い。ラルにでも言われたのかな?
「魔法剣士はいつか片方だけに絞るべきですか?」
直球だなぁ。
「そうだね~。魔法の勉強は大変だし、剣の練習だって大変だから、ひとつに絞った方がラクだからって勧める人は多いね」
そう。1年前に私も先生に言われた。いつかどちらかに絞るべきだって。
勉強は大変だし、全体を見る必要がある。結果的に私は魔法剣士を選んだ。理由は・・・先生同士が喧嘩しそうだったからなんだけど。
今この学校には魔法剣士の卒業生はまだ1人もいない。ゲームでは魔王が初めてだった。そしてオルドルは・・・
「・・・・・・」
悔しそうにしてる。
「ペイストの言う通りな事もあるけど、それでも両方やりたいなら、才能とかもそうだけど、絶対に手放さない覚悟が必要だよ。2人分頑張らないといけないからね」
「でも、オレは、もっと剣が使えるようになりたい!オレは、剣士になりたい!」
「魔法が全く使えない人もいるから、僕個人としてはもったいないと思うけどね」
そう。オルドルは魔法使いを勧められていた。
ゲームではオルドルの過去も語られている。魔法使いとして学校を卒業して、騎士団に所属した時に剣士として頑張ったけど、騎士団では嫌味を言われることも多かったみたい。
なんで魔法使わないんだって・・・
オルドルは騎士団長だったけど、魔法も使えるみたいなのに、覚えなくて、ストーリーのピンチな時と、最終奥義でしか使わない。
なんだか、使いたくないみたいだった。魔王の仲間になる前はペイストが騎士団長だったから、目には目を剣には剣をかと思ってたけど、ひょっとして・・・
「ねぇ、オルドルはペイストが好きなの?」
「はあ!?変なこと言わないでくださいよ」
「そうだね~。ペイストって魔法全く使えないしね」
「え!そうなんですか!?」
純粋に驚いている。知らないなら、ごめん、オルドル。少し卑怯になるね。
「うん。気配もわからないから、魔法に対しての防御が凄く弱いんだ」
「へー」
「会った時は素直じゃなくってね、好きな子にイタズラするような子供なんだよ」
「はぁ、そうですか・・・」
「単純バカだから突き進むだけだし」
「・・・・・・」
よし、もう少しかな?
「力が強いから引っ張っていかれると痛いんだよね~」
「・・・あの!アンタ兄貴の友達なんじゃないのかよ!さっきから黙って聞いてれば、悪口ばっかり言いやがって!確かに単純バカの筋肉バカだけど、優しいし、頼りがいあるし、守りたい想いは誰にも負けてない!オレの自慢の兄貴をバカにすんな!!」
「ふふふっ」
やっぱりそうだ。
「なんだよ!」
「ごめんごめん。君も素直じゃないね」
「ふざけてんのか!?」
「自慢の兄貴、か。僕、一人っ子だから羨ましいな」
「・・・・・・っ!!」
オルドルは真っ赤に染まった。やっぱり後輩は可愛いね。
「ごめんね、君をからかっただけだよ。僕も結構迷うから、引っ張ってくれるの有難いんだ。・・・やっぱりオルドルはペイストが好きなんだね。いや、憧れてるって言った方がいい?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
長い沈黙の後で答えてくれた。普通に聞いたってダメなのはわかってた。
「そう」
オルドルは観念したように話してくれた。
「オレたち、両親離婚して、別々に暮らしてるんだ。あんまり似てないだろ?」
「う~ん。体格がまず違うね。ペイストは筋肉ムキムキで、学校でもっとムキムキになってる。多分もっとムキムキになる。オルドルは、引き締まった感じだね」
「だよなぁ~。オレ中々筋肉付かないんだよ。兄貴は父さん似で、オレは母さん似なんだ」
素直に思った事を言うと、オルドルは笑っていたけど少し凹んだ。
「でも、やっぱりよく似てるよ?」
「え?ど、どこ!?どこが!?」
「ふふふっ尻尾が見えた。嬉しい?憧れのお兄ちゃんと似てるところがあると」
「うるさいっ!・・・・・・で?」
気になるし、嬉しいみたい。仲良いね~。
「うん。まずはその素直じゃないけど、思い立ったら突き進む性格」
「オレも!?慎重だって言われるけど」
「考える時間が違うだけだよ」
「あー、それはあるかも」
「見た目はその瞳と髪だね」
「瞳?髪もか?」
2人ともどことなく似てる。
「瞳の色はペイストが空の青で、オルドルは海の青。あと髪質が似てるんだよ」
「そっか。へへへへへっ!」
ペイストより黄色い山吹色の髪をナデナデしてみる。やっぱりツンツンしてて、気持ちいい
「あ、ペイストの方が身長も高いね!こんな事出来ないし」
「俺がチビだって言いたいのか?子供扱いすんなよ!」
「何それ~後輩を可愛がってるだけだよ~?」
「モノは言いようだな!!センパイ!」
オルドルとペイストもすれ違いから、ああなってしまったみたい。
数日後、学校で2人を見かけた時は誰が見ても仲の良い兄弟にしか見えなかった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!
杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!!
※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。
※タイトル変更しました。3/31
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる