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転生の章

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真央が目を覚ますと、木目の天上が見えた。しかし、上手く身体が動かせない。

それもそうか。電車に轢かれたんだろうし、あーあー馬鹿な事したなあ。
・・・って事はここは病院?
でも、病院は天上だって真っ白だ。救急車でも木目なんてありえない。
まさか、ここはあの世?いや、あの世にも木目の天井は無さそうだ。


周りを見渡すとかろうじて自分の手が見えた。だけど、おかしい。何が?全てが。
腕が短い?手が小さい?ついでにつま先が近い?

混乱してジタバタしていると、女性が自分を覗き込み抱き上げた。
真央はパニックだ。

「あーよしよし。起きたのね~」
はあ?私は中学生ですけど?子供扱いもいい所だ
「あっ!起きたのオルーチェ!俺も見たい見たい!」
「んもうあなた、あんまり大きい声出しちゃダメよ!」
「あはは!そうだね」
オルーチェと呼ばれた女性が嗜める。どうやらこの2人は夫婦らしい。左手の薬指に銀色の指輪が光っている。
にしても見たい?見せもんじゃないっつの!

「うん、可愛い!俺の息子はいつ見ても可愛い!それによく似てる!」
はああ?確かに小さい頃に男女って呼ばれた事あるけど、見ず知らずの人間に・・・え?俺の息子?この人、私の父親って事?
「あら酷いわ!この髪は私譲りよ!」
「あぁ!俺達の息子は可愛い。この緩やかなウェーブと柔らかい金髪は君譲りだ」
「あら、このエメラルドのような緑色の瞳はあなたそっくりだわ!」
「そうだね。君のペリドットのような瞳を期待したんだけど」
「あら、私だってあなたみたいに元気な茶髪を期待したわ」
・・・とりあえず、この夫婦がらぶらぶな事はわかった。

男性が手を伸ばし、私の指先に触れた。なんとなく握る。
「小さいなぁ、パパが守るからな」
「赤ちゃんだもの。これから大きくなるのよ」
ホントよ。全く

ん?あか、ちゃん?

改めて自分の手を見てみる。一回りもふた回りも小さくなっている。立つどころか起き上がる事さえ、身体を上手く動かす事も出来ない。上手く喋れない。そして、下半身に感じる違和感。ひょっとして・・・
何だか怖くなって、涙がポロポロと溢れてきた。

「うあっ!うっ!」
「あらあらどうしたの?よしよし」
「おしめか?ご飯か?眠いのか~!?」
「もう、ケイン落ち着いてよ!」
「そんなぁ~!俺だって抱っこしたい~!」
「あとでね~!」
「オルーチェ!ずるい~!」
今置かれている状況が怖くて、とても不安になった。そのまま私は気の済むまで泣く。抱っこされているからか、温かい体温だけが私を安心させてくれていた。



ようやく落ち着いてきた。どうやら前世の記憶を持ったまま転生したらしい。
それにしても、余りにも世界が違う。ご飯を作るのに窯を使い、火を起こしている。
不思議そうに見ていると、男性に抱き上げられる。
「ジュニアってば火が気になるのか?危ないからあんまり近寄らないようにな」
「もう少し待ってね~、今ぼうやのミルクを用意するわ」

「そうだ!名前決めなくちゃいけないな!」
父親が右手でポンと左手を叩いた。
今更感があったけど、なんだか不思議だ。自分の名前を決める両親に意識を持って立ち会えるなんて。

「そうね!うーん、何にしようかしら?」
母親も両手をパチンと叩いて、楽しそうに考える。のんきな両親だ。大丈夫かな?

「決めた!」「決まったわ!」
嫌な予感。

『     』!!
その時、2人は同時にある名前を口にした。
その名前は、中々倒せなくてイライラし、やっと見つけたあのラスボスの名前だった。

絶対に嫌だ。
喋れないのでプイと横を向いて拒否した。
「う!!」
2人は何故か悶えていた。


その後、私は名前をことごとく拒否して、なんとかマオという名前に誘導する事に成功した。
全く違う名前で呼ばれても自分だと思えないのは困るからだ。





月日は流れ、私マオはどんどん成長していく。
自分の姿をはっきり見た時はマジで最悪だった。名前から予想していたとはいえ、見た目はあどけない子供だけど、私の黒髪のボブは、緩やかなウェーブの金髪に。真っ黒の瞳はエメラルドみたいな緑色の瞳。顔付きまでゲームで勝てなかったラスボスにそっくりだった。


縋るようにと、前世で調べていた記憶を頼りに両親に確認してみた。
両親の名前は父がケイン、母はオルーチェ。
私が生まれた場所こそログハウスみたいな家だったけど、両親の出産用の家だったらしく、小国の王家であった事が判明。両親が王家の人間なのも調べていた記憶と一致した。


ただ、王家のわりには生活に困らないような庶民派で、国民と支え合って生きてる温かい家庭だった。

家も・・・へー広いね~というくらいで、前世で遊びに行ったちょっと大きい友達の家サイズで、プールとかも無い。
家にはメイドさんっぽい人と執事さんのような人2人ずつで、住み込みって訳じゃなく、近所に住んでいる。
メイド服や執事服じゃないし、言葉遣いも畏まっていないし、私も王子と呼ばれていない。
仕事を手伝ったり、家事をしたり、私の世話をしてくれたり、両親と分担して行っていた。



文字が読めるようになると、この世界について調べてみてさらに絶句した。
この世界は、まさしくクリア出来なかったあのゲーム。イノセント ワールドの世界!
そして、最初に言われた名前に、この見た目。
どうやら私は、前世の中学女子の記憶のままでゲームのラスボスキャラに転生してしまったらしい
がくっ!

せめて女子キャラにしてよ・・・!



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