能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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9月 11

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モミジは椅子に座りホッと一息つく。カエデはため息をつく。
「・・・靴擦れ?」
「・・・何でよ?」
「足、引き摺ってる」
「う・・・」
「だから言ったのに」
モミジはムッとして軽口を叩く。
「・・・カエデは?アスターとルピナスのイチャイチャでも見た?」
「・・・別に」
「・・・見たの・・・!」
・・・しまった!ヤバい!口に出しちゃった!カエデだって傷付いてるわよ!!!
慌てて口を塞ぎ焦るモミジと違い、カエデは冷静だ。
「・・・気づいたらここにいた。モミジこそ泣いたの?」
「カエデもよ?涙の跡がある」
「あ・・・雨だよ降ってきたから」
確かに、雨は降ってきている。失言も涙の言い訳も、動けない言い訳にもなってくれている。今はとにかく有難い。
モミジはカエデと背中合わせに座り、背中をくっ付ける。
「アタシを泣かせたのはカエデよ?」
「・・・そうだね」
「ぶつけてない?」
「あのくらい日常でしょ平気」
「そうね」
その時カエデは少し驚く。今までなら横に寄りかかってきたモミジが背中合わせに寄りかかってきた。カエデの猫背に反るようにくっつく。雨で濡れたジャージがお互いの体温で温かい。
モミジが反りながら言い、カエデも猫背を軽く治す。
「嘘はすぐばれるんだから、隠さないでよ」
「わかった。言いたい事言うから言ってね」
「わかった。お洋服はカエデだけじゃつまんない!」
「・・・うん。俺は男だからね」
「わかってる。でもたまには付き合って」
「・・・うん。お菓子も、たくさんレパートリー増やしたい」
「別にキャラメルが好きなだけで、他のお菓子が嫌いな訳じゃないわよ」
「嘘つけ。キャラメル以外だと不機嫌になるクセに」
「・・・。なら、隠し味に使って」
「わかった。付き合ってね」
「・・・うん。玉入れも出たかった」
「知ってる。・・・キャンプ飯って興味あったから、作りたかった」
「知ってるわ。カエデって手の込んだ料理が好きだもの。簡単なのはあんまり作らないでしょ?」
「そうだね。それに・・・海、そんなに好きじゃないんだ。砂が入ってくるのが嫌だから、川の方がいい」
「・・・アタシも川の方が好き」
「モミジはプールのが好きでしょ?」
モミジが少し猫背気味になり、言いながら治す。
「ウォータースライダーは好きよ?」
「それは同意」
「波の出るプールも好き」
「それは・・・」
今度はカエデが猫背になる。
「嫌い?」
「・・・・・・好き」
「ぷっ!嘘つき。流れるプールの方が好きでしょ?」
「あははっ!すぐバレるから嘘はつかない方がいいね」
「知ってるもの」
「そうだね」
モミジは背中合わせをやめて向き直る。心に閉まっているこの不安をカエデと話し合わないといけない。
「アタシ・・・1人になるのはイヤ」
「そんな事させる訳ないでしょ!?」
カエデは驚く。まさかそこまで思い詰めてしまったなんて・・・!カエデが反省するとモミジは更に続ける。
「1人にするのもイヤなの!」
「・・・・・・」
「・・・カエデがイヤなのは何?」
カエデも、口を開く。きちんと説明しないといけない。これからどうしていくのかも。
「俺は変わらないといけないと思ってる」
「・・・何で?」
「将来、2人だけの世界で閉じ籠るんじゃないかって。それは、いけないよね」
「うん。でもそしたらどうなるの?もうカエデと話すなって言うの?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
「とりあえず、嘘はやめよ」
「他には?」
カエデ自身そこまで言われて気づいた。具体的な事を何一つあげていないのだ。カエデも、わかってはいなかった事に今回は酷く焦っていたのだと理解した。
モミジは不安でいっぱいだった。何を変えるのか、何が変わらないのか、漠然と変われと言われて、必要以上に不安がってしまった。カエデがもう話しかけるな、なんて言うはずないのがわかっていたのに、モミジはかなり前から不満を持ちイライラしていたのだと認めた。
「他は・・・後で一緒に考えようか」
「・・・うん」
自分達のペースで少しずつ考えて、少しずつ決めて、少しずつ実行していけばいい。
「ちょっと・・・眠いな」
「アタシも・・・疲れた」




通り雨だったらしく、雨が止んだ頃バスに乗ってきた先生は
「双子をさがしに行こう。みんな来てくれるか?」
「能力で探したいって訳だね」
「その通りだ」
ヤマブキが言うと先生は頷いた。

Zクラスみんなでバスを出てリフトで上に昇った
「範囲が広すぎるもっと場所が特定出来ないと・・・」
ヤマブキは悔しそうに呟く。電波が通る学校では平気だが、ケータイも使えない山ではもう少し範囲を特定してほしい。普段から能力を使う癖があり、電池が切れやすいのだ。
「カスミ占うてっぺんにいこう!」
「それがいいかもね。山の中心だし」
ヒイラギも賛成し、オリーブ先生のいたチェックポイントの頂上まで来た。

「んー、コレでいいかな?」
カスミが木の棒を拾ってきた。右手でくるくる回してからこめかみに当てて、
「カエデとモミジちゃんど~っち?」

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