能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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9月 10

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「 俺だってアイツの事好きだよ!?明るくて、バカなくせにみんなの事よく見てるし!」
捲し立てるカエデに気づいてモミジはただ聞く。
「うん・・・」
「常識無いくせに、 あったかくて、うるさくて、優しくて・・・!」
カエデは苦し気にこぼす。この気持ちが何なのか、知りたいけど知りたくない・・・!
「カエデ、ルピナスが好き?」
「・・・わかんない。久しぶりに新しく出来た友達がかっさらわれるのが嫌なだけかもしれないね?」
「別に・・・恋したって・・・・・・!やっぱダメ!」
自嘲するカエデを見ていられなくなってモミジはその想いに名前を着けようとしたが取り消す。
「モミジ?」
「違う!カエデは、恋しちゃダメ!」
「恋?これは、恋?」
「違う!!!」
思わずまた繰り返したのをカエデが口にしてしまった!叫ぶように否定する!
「モミジが言ったんだろ?」
「ルピナスは友達!」
「そっか・・・俺、妬いてるのか」
今の感情を嫉妬心から来るものだと紐付けてしまった。カエデは敏いのだ。
モミジは震えながら質問する。
「・・・カエデは!アタシよりもルピナスが好きなの?」
「何を言ってるんだよ!そんなの比べられるわけないだろ!?」
「じゃあ、アタミとルピナスどっちを助ける?」
「どっちも助けるよ」
「・・・・・・それ、もう好きでしょ」
カエデのルピナスに対する恋心を隠す事はもう出来ない。双子の兄の背中をモミジだって押してあげたいのだ。気持ちを否定する事はもう出来ない。
「そっか・・・・・・」
「・・・ルピナスに好きだって言うの?」
ポツリと呟くように尋ねるモミジにカエデは笑いながら答える。
「まさか、言わないよ。困らせるだけだし、俺はアイツも・・・アスターの事も好きなんだよ。それに、ルピナスの能力についても心あたりがある」
「心あたり?」
「俺の予想が正しければ、アスターはルピナスの能力をあまり受けてないよ」
「・・・ホント?」
「うん。それでも2人は惹かれ合ってる。俺も、たぶんルピナスが好きだけど、2人を喜んで応援出来るよ」
「・・・・・・カエデ」
恋心を自覚した今の段階で失恋は決まっている。
「もし、俺が本気でルピナスを好きでも、モミジに反対されたら諦めてたよ」
「カエデも、能力を受けてるって言いたいの?」
「・・・さあね」
カエデは軽くかわし、2人が結ばれた未来で、実は恋をしていたと伝えて2人をからかう程度なら赦されるだろうとモミジを追い越し先に進む。

モミジもカエデの後をついていく。
・・・アタシ、知ってるわ。双子だもの。元々カエデに向いてるのは追われる恋なの。施設育ちなせいか、愛想が悪くて人に好かれにくいから友達も少ないし、ライクの好きが少ないのよ。カエデにとってライクは結構ラブに近いわ。一度心を許すと優しいのよ
恋心を自覚しても動かないで、機会を伺うタイプ。
向こうから。カスミちゃんとか、アタシみたいに懐かれると世話好きであれこれやってくれるから、押しに弱くて、ヤマブキも懐いてるわ。年下に好かれやすい傾向があるの
カエデにお願い!一生のお願い!!とか言ってご覧なさいよ。仕方ないなぁとか言いながらきっちりお願い叶えてくれるわよ?
妬くと喋ってくれなくなるのは困り者だけどね


決意したカエデは道を進みながら口を開く。
「・・・ね、モミジ知ってる?」
「ん?」
「俺たち、ルピナスと出逢って半年も経ってないんだよ?」
「あ、ホント!」
モミジはケラケラと笑う。いろんな事が変わってしまった。
「だからね、俺たちも、変わらなきゃいけないんだよ」
「カエデ?」
カエデは振り返り、告げる。
「ね、モミジ、俺たち、呼吸が合わなくなってるの、気づいてる?」
「・・・・・・」
カエデも気は進まないが、言わなくてはいけない。嫌われても、ぶつからないといけない。自分達はいつまでも一緒に歩いて、いつまでも同じではいられないから・・・
「前はさ、何も考えなくても合ってた・・・」
「そうかな?偶々だよ!そんな時もある」
モミジはわざと明るく振る舞う。見たくない物を持ってこないでほしい・・・。それなら、気づかないフリさえしていればこのままでいられる・・・!
「わかってるだろ?体育祭の時だって危なかった」
「危なくないよ!1位だったじゃんか!」
「スタートが出遅れたのわかってるだろ?今までなら倍以上の差をつけて圧勝してた」
カエデは眼をそらそうとするモミジに現実を見せる。苦しいだろうが、自分の恋心を否定しなかった今の双子の妹なら理解してくれる。
「巻き返したわよ?ちゃんと!」
「好きなものが違ってきてるんだ」
「違わない!一緒だよ!」
「卒業したらどうする?結婚したら?」
「そんな未来の事知らない!」
こちらに背を向けてしまったモミジにカエデは厳しく言い放つ。
「・・・わがまま言うなよ」
「・・・!カエデ変わっちゃった!」
「そりゃ変わるよ。いつまでもこのままじゃいけない」
「何で?」
「俺もお前も成長してる」
「嫌だ!」
モミジはついに耳を塞いでしまう。カエデは近寄って離そうとし、2人は揉み合う。
「モミジ聞きなよ!」
「嫌だ!聞きたくない」
「大人になれ!」
「嫌だ!このままがいい!」
「モミジ!!」

カエデを突き飛ばしてモミジは一瞬怯んだが、1人ローズ先生の休憩地点とも、進むオリーブ先生とも違うルートへ足を進めてコースアウトするように走ってしまう。
カエデは少し頭をぶつけつつ、やはり今言うべきではなかったかとモミジを追いかけた。
実はそこはオリーブ先生達が叫んでいる方向に来ていた。
「くそっ!何処だ?モミ
「オレのだー!!!!」
「・・・っ!」
カエデは口を閉じ、音をたてないようにしていた。ルピナスが赤くなりながら怒っているやりとりに出ていく事も出来なくなったカエデはルピナス達が行っても動けなかった。
モミジを探しに行かなければいけないのに足を止めてしまった。
ルピナスがいたのに場所を伝えられなかった。
モミジの声が頭から離れない・・・
「じゃあ、アタシとルピナスどっちを助ける?」
自分はどちらも助けると言った。しかし、じゃあ今は?
・・・俺は、どちらも助けられないのか・・・?


モミジはアスターの声に驚いて茂みの中に身を隠した。しばらく呆けてしまったモミジは、去っていくカエデの背中に声をかける事も、追いかける事も出来なかった。
モミジの瞳には涙が溢れていた。
カエデには見られたくないと涙が落ち着いてから立ち上がる。しかし
「・・・・・・っ」
靴擦れをしてしまい、長時間歩く事は困難だった。カエデの言葉がリフレインする。
「ヒールの靴で山登りって本当に大丈夫なの?」
自分はずっと平気なんかじゃなかった。
バカはアタシじゃない・・・。
モミジは、なんとかローズ先生の休憩所へと戻る。


モミジが扉を開くとカエデがいた。
カエデは気づいたら休憩所に戻っていたのだ。
「・・・カエデ?」
「・・・モミジ?」

その時、すでにローズ先生はオリーブ先生の所へ移動していた。そこでイベリスの「ボタンちゃーん」で雨が降り、フクジュ先生と3人で集まっていたからだ。

「どうしているの?」
「そっちこそ・・・」
「別にいいでしょ?」
モミジは椅子に座りホッと一息つく。カエデはため息をつく。
「・・・靴擦れ?」
「・・・何でよ?」
「足、引き摺ってる」
「う・・・」
「だから言ったのに」
モミジはムッとして軽口を叩く。
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