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9月 6

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「はい。ここ頂上では3チームが集まったら、チームで代表を1人選んでもらい、大声を出してもらいます。一番声量が大きかった人のチームが通れますよ」
Cクラスの担任オリーブ先生だ。
「私の能力は計りなので、いろんな物を計れるんです。一応属性は電気です」
にこやかにオリーブ先生はルールを説明してくれた。能力は原子にも近いが、数値として計れる為だ。
「ゴホゴホッ」
「い、イベリスさん!?」
「や、やあ、ルピナスちゃん、久しぶりだゴホゴホ・・・」
「いえ、しゃべらないでいいですから!大丈夫ですか!?」
イベリスさんは大声出すタイプじゃないし、向いてなさそうだ。大丈夫かなぁ?
オリーブ先生がお水を出してくれた。
「イベリス君、ちゃんとお水飲んでくださいね」
「あっ!カスミのあめあげ
「ひ、必要無い!く・・・!また負けた・・・!」
長くクリア出来ないと大変だなぁ・・・
ポトスはオリーブ先生の持っているメモに興味津々だ。
「今までの最高記録は誰だ?」
「えっと・・・・・・少し前に通ったZクラスのヒイラギ君ですね」
「おおっ、ヒイラギか!流石だな!!」
「えっ?ヒイラギ君!?」
ルピナスは驚く。普段おとなしいヒイラギが大声を出すのはイメージできない。それも、さっきのコブシ以上にだ。
「アイツ怒らすと怖いんだぞ?モミジ以上にな」
「そんなに!?」
アスターが平然として答える。ルピナスはヒイラギを怒らせないようにしようと思った。
コブシがポトスに向かってグッといいねサインをする。体育祭からすっかり懐かれている。ポトスは面倒身も良い。
「アニキ!俺やりました!」
「おお、よくやったコブシ!腹から出ていて力みもなかったぞ!」
「ありがとうございます!では、お先に失礼します!」
「おぅ!」
コブシは綺麗なお辞儀をして去っていった。ポトスは礼儀についても教えているようだ。



「さ、誰が逃戦しま
「俺様だろ!?」
「わかった。負けたらオレと交た
「必要無い!最高記録を塗り替えて圧勝で勝つ!」
オリーブ先生の開始を待っていたかのようにポトスが名乗り出て、アスターが次を希望するが、ポトスはグッと拳を握る。普段からこの2人は声が大きい。
「アセビ、なら私が出るわ」
「アネモネセンパイ・・・?」
「あ、アスター・・・アナタもいるのね!の、能力使ってないアンタなんて怖くないから!!」
「体育祭の時のか?アレはナズナもいたからだろ?」
アネモネはアスターに対してすっかり怯えている。走れなくなったレースを初めて体験したからかトラウマになってしまったようだ。
「ゴホン。でも、アナタの事は気になってたわポトス君」
アネモネは手でピストルを作り、胸の前で軽く撃つマネをする。
「お、俺様!?」
「体育祭の棒倒しから気になっていたのよ」
「なるほど、勝負したかったという事だな!」
「・・・ふふっ!今はそう思ってくれていいわ」
「おぅ!かかって来い!!」


「あ、あの、ボクもそろそろ交替した
「イベリス頑張って~!」
「期待しているのじゃ」
「くっ!や、休みたい・・・!」
一方イベリスはぶっ通しで叫んでいるらしい。交代する気はなさそうなメンバーだ。イベリスも根が真面目なのだろう。
「じゃあ行くよ!」
オリーブ先生のかけ声から始まる。
「進みた~『1等!!!!!!』
「ひゃあっ!うるさいよ~!」
イベリスが言い終わらない内にポトスとアネモネが同時に叫んだ。カスミが思わず驚いてビクッと飛び上がる。勿論ルピナス達も驚いて耳を塞ぐ。
「同時に言ったら計れないですよ・・・」
オリーブ先生は耳を押さえている。
「キーンってする~」
カスミはふらふらだ。



「もう、ポトス君もアネモネさんも2チームとも通過でいいです!僕の鼓膜が危ないです・・・」
『測定は!?』
ポトスとアネモネが詰め寄るが、
「不能です。規定外です!」
「くそっ!もう一度だ!」
「ダメです!!2人でやって下さい!」
ポトスは不満そうだがオリーブ先生は断固としてやり直す気はなさそうだ。アネモネは楽しそうに口を開いた。
「・・・にしても、1等なんて、気が合うわね」
「栄光や名誉。俺の一番求めるものがそれだ。家の方針とは違うがな」
「なら、アナタが栄光や名誉を手に入れて家を黙らせたらいいわ」
「ははっ!お前は俺様の好みじゃないが、中々いい女だな!」
「あら、嬉しいわね」
「さて、賞品はお米です!」
オリーブ先生が拍手する。
「おお!」
「あら、素敵ね」
「はい、お米は重いのでチケットを渡します。麓に降りたら受け取って下さいね」
「な、何故チケットなんだ!」
「そうよ!ガッカリだわ!!」
『トレーニングに最適なのに!!』
ポトスとアネモネはガッカリしている。オリーブ先生は頭を抱える。
「・・・ここは頂上ですよ?そんな重いお米を運ぶのは大変です!それに、ポトス君の能力の影響で鳥に食べられてしまいます!」
「ズルいぞ!オレもやりたい~!」
アスターが口を尖らせるとオリーブ先生はこちらを向いた。
「はい、ローズ先生から聞いてます。ルピナスさんは元々別のチームでしたよね?」
「は、はい!」
「でしたら、再度挑戦して、ここを通過してください」
「え?わ、私がやらないとダメですか?」
「おぉっ!」
ルピナスは不安になりイベリスの顔が輝いたが、
「あ!ならオレやりたい!!」
「あ、アスター君?」
「先生いいか!?」
「はい、構いませんよ」
「あぁ・・・」
イベリスがまた沈む。
ルピナスはアスターに確認の為、釘を刺す。
「アスター君、確かにお願いしたいけど、変なこと叫ばないでね?」
「変なことって?」
「・・・なんでもない」
「・・・・・・?」
アスターが鈍いのは勉強だけではないのだ。
「じゃあ、ポトス君早く来てね」
そう言ってアネモネ達のチームは先に進む。


「さて、次のチームを待ちましょ
「やあ」
「ナズナお兄ちゃん!」
「よお、ナズナ!相手はお前か!」
待とうとしたところに上手い具合にナズナのチームが登場した。
「ルピナス大丈夫?大変だったよね?ケガとかしてない?」
「え?あ、うん」
ナズナはアスターを無視してルピナスを心配する。最初のチェックポイントの騒動を知っているのだろうか?
「イベリスは・・・疲れてるね?」
「・・・お陰様でね・・・」
「無視すんなよ!」
オリーブ先生はケンカになりそうと思い強引に進行する。
「じゃ、そろったし、いい?順番にね」
「ん?何が?」
ナズナは?を浮かべているが、誰も気にしていない。
「じゃあ1人ずつ叫んでね!」
「イベリスがんばってね!応援してるから」
「今度こそ良い叫びを期待しているのじゃ」
イベリスのチームメンバーが応援する。
イベリスは息を吸い込む。この大声を出すというのは普段の自分のイメージと真逆で上手くいかない。せめて歌うならまだこの羞恥心も少しは少なくなるのだろうか・・・?
「さ、先に進みた~い~!」
「はい、次アスターく
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