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9月 4

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「痛いじゃない!何すんのよ!バカエデ!」
「きちんと話を聞かずにモミジがサイコロを投げようとするからでしょ!?」
「もう!2人とも最近ケンカが多いよ?」
ルピナスは叱るように心配する。
「・・・ごめんなさい」
「・・・確かに、モミジの暴走は何時もの事だしね」
謝ったモミジと裏腹にカエデは軽口を叩く。そのせいでまたしてもケンカが始まる。
「何よ!」
「何だよ!」
「落ち着きなさい!!!!」
『・・・ごめんなさい』
ルピナスが一括すると2人は反省したように謝った。
理事長は気にせずサイコロを探す。
「さて、サイコロは何処へいったかな~?」
「理事長投げるのは何回ですか!?」
カエデが気づいたように顔をあげると理事長は探しながら答える。
「うん、1人1回ずつ投げて、目が一番良かった人のを使えるよ。もちろん!みんなで今みたいに一斉に投げるのもOK。ただし、それは3人で1回になるけどね」
「・・・じゃあ、今のサイコロの目しか使えないという事ですか?」
「そうだね。そうなるね」
「・・・!」
「ごめん・・・」
カエデはいやな予感があたり、モミジは突っ走った事を再度謝った。
「あ、サイコロあったよ!目は・・・軍手だね!」
「軍手?」
「うん。はい、軍手。頑張ってね!」
「クソッ!」
渡された軍手を受けとったカエデは舌打ちした。ルピナスは重い空気をとるように励ます。
「過ぎた事は仕方ないよ!2人とも頑張ろう!」
「じゃあ、軍手での栗拾い!採った個数の栗がそのまま賞品になるよ!時間制限あるから、作戦も大切だからね!じゃあ、スタート!」
理事長はタンバリンをシャラシャラ鳴らした。
落ちている栗のイガを軍手で取り除くのはとても大変で、制限時間の半分をかけてみんなで拾ったが、とれたのは片手で収まる程度だった。

カエデは焦っていた。カエデは体力や知力だとポトスやヤマブキには到底かなわない。今回の得意なのは最後の料理だけだ。
実際の体力はポトスやアスター、ヒイラギが得意だが、カエデも運動が苦手な訳じゃない。スポーツの種目によっては勝てる物もある。
そして、カエデが得意とするのは情報戦だ。状況を冷静に分析して、策を何重にも張った指揮官としてその力を最大限生かす。
カエデは知力でもヤマブキやボタン、ヒイラギにかなわない。飛び級が大量発生しているこの学校では、カエデの成績だって悪くないが、飛び抜けている訳じゃない。ポトスだって体力バカに見えるが、育ちが良いせいかカエデよりも成績が良い。

カエデは深呼吸してコンプレックスを振り払う。自分に出来る最大限の策を考える。
モミジの能力は重力操作。カエデの能力は透明。
今回の栗拾いには向いてない。落ちている栗しか食べられない。
ただ、カエデには作戦があった。今回服装はジャージだが、小物についての指定ははきなれたクツぐらいしかない。
カエデが用意したとある物も、今回のオリエンテーリングで推奨された物だ。
これを使えば、気になっていた彼女の能力を手動で引き出す事が出来るはずだ。 カエデはそのとある物を自分の身体からそっと外して、ルピナスの頭に被せて、彼女が驚いて振り返ったところでそれを取った。

「ちょっとカエデ君何?イタズラ?もう、髪がぐしゃぐしゃだよ~!」
彼女の指先がピンク色に光り、乱れた髪を直していく。 指先が光っているのに彼女は気づいていなさそうだ。
カエデは被せたキャップ帽を落とし、近くにいたモミジと一緒に頬がりんごのように染まる。
『ルピナス・・・』
「え?2人ともどうかした?」
2人の様子が変だ。その時、他のチームの人が数人やってきた。近くで同じように栗拾いをしていたらしい。
「良かったらコレどうぞ!」
「これ、あげるわ!」
「え?あの・・・」
「全部やる!がんばれよな」

「全部やる!がんばれよな」
「あ、ありがとう。 でも、こんなにはいらな
「そんなぁ~!」
「あ、じゃあ、みんなからその半分貰うよ。本当にありがとうね」
「はうっ!」
「いやーんっ!」
「あ、あの、好

ピシッ

「何?どうかしたの?」
「ひは、はんへもはいへふ!」
どうかしたのかな? 口に何か詰まってる?でも、大丈夫そうだし、いいかな
「カエデ君、モミジちゃん。たっくさん集まったよ?って消えないで!浮かばないで!」
『無理・・・』
カエデはどんどん消えていき、モミジは何処までも浮かんでいく。
『これももらってー!!』
「ひぇっ!人の波!?」
「カエデ君!モミジちゃ
『ルピナス・・・ふひ
「いやーっ!!!怖いってば!」
とりあえずここから逃げよう!
理事長は割れ関せずだったが、時間が来たのでタンバリンを叩いた。
「はい、そこまで」



全ての生徒が入口を進んだころ、体力コースの理事長が白いモヤに、知力コースの理事長が黒いモヤに身体を変化させた。2つのモヤモヤはサイコロを持つ理事長の元にやってきた。
「ありがとうふたりとも。みんな行ったみたいだね。じゃあ、そろそろゴール地点に行こうか」
理事長はにっこり笑ってゴールへ向かった。



一方ルピナスは?
「ふぅ・・・大変だったなぁ。カエデ君やモミジちゃんとも はぐれちゃったし、ここどこだろう?」
ピピチチ!!
「ん?小鳥がみんな同じ方向に向かってる?」
栗、いっぱいもらったし、今戻るのは危ないよね。 先に進みたいし、気になる・・・え!?う、うさぎとか、鹿まで向かってる!?
ちょっと覗いてみようかな・・・


その頃のポトスチーム
ポトスに小鳥やウサギ、鹿が寄ってくるのでカスミは楽しそうだ。
「すごいすごい!かわいい~!」
「いつもこうなんだよ。番犬にも懐かれるのは有り難いがな」
ピーピー!
チーチー!
「こら、場所の取り合いするな!俺様はでかいぞ?」
ポトスは肩に乗った小鳥を気づかいそっと腕を上げる
「し、白雪姫かよ・・・!」
「なにかエサとかもってるの?」
アスターがぷるぷる震えて含み笑いし、カスミは純粋な興味で聞いてくる。
「持ってるのは暗器だ!」
ピチピチ
「その暗器に鳥が止まってるぜ?ぷぷっ!」
ポトスが素早く出した小さい刀の先に小鳥が指先のように止まる。
「能力の・・・ふく・・・さようだ!!」
ポトスは真っ赤になって声を荒げるが、身体は動かさない。本質的に優しいのを見抜かれている。
ポトスは暗器を仕舞い、動物達を撫でながら言う。
「先ほどの騒ぎのせいかもな皆怯えている・・・。動物は環境の変化に敏感だ」

その時、新しく小動物と一緒にやってきた人がいた。
「ポトス君!?」
「ルピナス?一体どうした」
「あ・・・えっと、2人とはぐれちゃって」
ルピナスは苦笑いしながら髪を触り確認する。もう完全に戻っていて安心する。
「何があった?」
アスターが心配そうに聞く。ルピナスはわからないながらも状況を説明する。
「うん、チェックポイントで栗拾いしてたんだけど、 カエデ君に何故かイタズラで帽子かぶせられて、 すぐ取ってくれたんだけどね?」
「あのカエデがイタズラ!?」
カスミちゃんは驚いていた。
「うん。で、髪直してたら、色んな人に栗をもらって、カエデ君やモミジちゃんもおかしくなって!いろんな人が追いかけてきたからとりあえず逃げて、そしたら小動物をいっぱい見かけて、戻るのも怖かったから・・・」
「それで?」
捲し立てるルピナスは段々と声が小さくなる。訳がわからないのはルピナス本人なのだ。それでもアスターに促される。
「それで、動物達の流れにそってみたら・・・」
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