能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

文字の大きさ
上 下
43 / 84

9月 3

しおりを挟む
「・・・ね、ヤマブキ君、将来先生にならない?」
「絶対にイヤ」
「そんな~!優秀な君が欲~し~い~!」
きっぱりと否定したヤマブキとは対称的に理事長はじたばたと騒ぐ。そんな理事長を横目にヤマブキは、小さく微笑みながら答える。
「・・・ぼくは小さい頃、ハッカーの能力でたくさん悪い事してた。だから、セキュリティシステムを開発して、罪を償いたいんだ。子供に教えられるような優しさ、ぼくには無いしね・・・」
「・・・そう。楽しみだね!そうなったら依頼させてね」
「ん。・・・ってか、ぼくより教えるの上手くて子供好きなヤツがウチのクラスにいるじゃん。見た目ほどケンカっぱやくないし真面目だし」
ヤマブキは冷静に分析する。理事長は微笑みながら答える。
「うん、彼の場合はきっと数年後に彼から言ってきてくれるよ。僕はただ待てば良いだけだ」
「ぼくには言うクセに?」
「君はほっとけないからだよ」
理事長は先生の顔で優しく言った。
「・・・いいから早く問でゃい!!」
ヤマブキは赤くなりながら噛んだ。照れると噛みやすくなるのだ。
「は~い!最後の問題が解けたら、この食材は君の物だよ?それはこちら!!」
理事長は机の真ん中にあったカゴから銀色の布を取った。
「キノコ?」
「キノコはキノコでも、キノコの最高級!松茸です!」
「ふーん・・・キノコの最高級ってトリュフじゃないんだ」
「ま、松茸だって高級だよ!嫌い?」
「・・・臭い。好きじゃない。ガッカリした」
「あ~!確かに君は育ってきた環境が違うからね」
「・・・確かに。僕、セロリ好き」
「・・・そういうのは知ってるんだね」
「パロディ大好きなんでしょ?」
「それはちょっと違うと思うな~!」
「そう?日本語って難しい・・・」
ヤマブキは小首を傾げる。理事長も首を傾げる。
「パロディって日本語だっけ?・・・まあいいや!気を取り直してラスト問題に行こう!応用問題だよ
第三問。これが、最後の問題です・・・!
地と風、火と水、草と電気が反属性。では、水1人VS火が2人。火の子は1人疲れて眠っている。この場合、関係はどうなるか答えてください。
A互角            B高め合う 
C水が有利    D火が有利」
「Cの水が有利 」
「・・・ファイナルアンサー ?」
「はいはい、ファイアン」
「略さないでよ・・・」
「まだ?」
「・・・・・・・・・・・・せいかいで~す」
理事長は長い無言の後、イタズラがバレた子供のように答えた。ヤマブキは終始冷静だ。
「うん」
「何か、盛り上がらないね・・・」
「問題が解りきってるからね。当たり前だよ。簡単すぎる」
理事長は問題を纏めながら聞く。
「・・・もし、この状況。ヤマブキ君が起きてる火属性の子ならどうする?」
「ん?・・・ま、ぼくだったら、まず逃げて他の属性の人を呼んでくるかな」
「寝ている子が危なくても?」
「ならその人にバリアかけてから逃げて、音声のシステムをハッキングするかな。とりあえずたくさんの人を集める」
「・・・はぁ、緊張感無くてつまんないや!僕、みぬもんたさんになりたかった!」
「・・・理事長は理事長でしょう?ほら、早く」
ヤマブキは机に突っ伏して拗ねている理事長に向かって手を伸ばす。
「うん!」
しかし、手を伸ばしたらパンと軽く払われた。
「え?」
「早く賞品ちょうだいよ!ぼくは松茸好きじゃないけど、ボタンとヒイラギが嬉しそうに待ってるから、作って貰う」
「・・・はい」
理事長はヤマブキに松茸を渡した。
「ありがと。さ、行こ行こ」
「失礼します」
「あ、ありがとうございました!た、楽しかったです」
「ぐっ・・・・・・・・・・・・!」
ヤマブキは松茸を手にし、袋に入れ、ヒイラギとボタンと次のチェックポイントへ向かっていった。
理事長は一度睨みつけ、にっこりと笑いながら待っている生徒達に振り返る。
「じゃあ、次の挑戦者を決めようか!もっと難しい問題出すね?」
何時もの理事長とは思えない程の黒いオーラを出しながらニヤリと笑い、順番を待っていた生徒も、最中に集まってきていた生徒も震えあがり、ヤマブキを恨んだ。


こちらはカエデチーム
「はぁ~!山はいいよね!」
「カエデ君、テンション高いね」
山に来れてカエデはとても喜んでいてルピナスは驚く。モミジは不思議そうに聞く。
「・・・カエデ、山が好きなの?」
「うん!空気も澄んでるし、キャンプめしって作ってみたかったんだよね!今回は指定されてるけど、それでもはんごうは使うでしょ?楽しみだ!」
カエデはいろんな調理器具を持ってきていて、誰よりも荷物が重かった。先生の忠告からほとんど調理場に置いてきたが・・・
「・・・それって海より?」
「うん、そうだね!山の方が好きだよ!」
「・・・あっそ」
モミジはふいっとそっぽを向く。
「・・・何?モミジ?」
「・・・・・・何でもない」
「・・・・・・?」
ルピナスも気づいた。モミジの機嫌が悪い。
「モミジこそ、その靴は何?」
「いけない?アタシには履きなれた靴よ?」
モミジの足元はヒールの高いブーツだ。モミジの雰囲気にも似合ってはいる。
「へ~可愛いね。でも大丈夫?」
「平気よ!お気に入りなの」
「ヒールの靴で山登りって本当に大丈夫なの?」
「平気だってば!ほっといてよ」
「わかった!ほっとく」
「・・・・・・っ!」
口ゲンカならカエデが有利だ。モミジはカエデを睨む。
ルピナスは再度2人の空気を感じとる。
最近2人、仲悪い・・・?


「や!ルピナスちゃん!」
「おじちゃん!あ、違った。理事長・・・」
「もう!おじちゃんでいいよ!」
「あ、ありがとうございます、おじちゃん!」
「ふふっ!さて、この真ん中のルートに来たのはカエデ君のチームか。お料理が得意なチームだね!」
「そうだね」
「そうよ」
カエデとモミジが頷く。
「さて、ここでは、実際に栗拾いをしてもらうよ!」
『栗拾い!?』
モミジとルピナスが繰り返す。確かに収穫祭っぽいけど、ちょっと原始的・・・いや、地味だ。
「そう!このサイコロを振って出た目の道具を使ってもらうからね!当たり目もあるよ」
「道具ってどんな物があるのかしら!?」
ワクワクしながらモミジが聞く。
「軍手、長靴、脚立、物干し竿、探知機、当たり目の6つだね」
「運ゲーか・・・」
「運も実力のうちでしょ?」
悩むカエデに理事長はにっこり笑う。サイコロはサイズ的にバスケットボールよりも一回り大きいくらいだ。片手で持てるほどに軽い。
モミジは気にせずサイコロを手に取り、ポンポンと遊ぶ。
「楽しそう!じゃあ投げるわね~!!」
「ちょっと待ちなよモミ
「何よカエデ!邪魔しないでよ!」
モミジが投げようとしたサイコロをカエデが奪い取ろうとし、2人で言い合う。流石にルピナスもよくないと止めに入る。
「ふ、2人とも喧嘩は!
「しまった!!」
カエデの声が響いた。3人の手でバレーボールをトスしたように触れてしまった。3人とも触れた感覚を実感している。
「おぉっ高く上げたね!何が出るかな♪何が出るかな♪」
「きゃっ!」「うわっ!」「ひゃあっ!」
「あれま、大丈夫?」
バランスを崩し、3人それぞれがバラバラに転んだ。
「痛いじゃない!何すんのよ!バカエデ!」
「きちんと話を聞かずにモミジがサイコロを投げようとするからでしょ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...