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8月 6
しおりを挟む「・・・・・・。足、いたい・・・」
「あははっ!草履なんて履きなれてるのはボタンくらいだもんね!任せて!」
「ありがとう!!」
モミジは慣れた手付きで草履を弄る。
「ちょっと鼻緒をほぐしてみるわね・・・どう?」
「あ、全然違う!凄い!!」
「他にも、鼻緒にあたるまで足の指を押し込まず、指1本程度の隙間を残して、軽く引っ掛けるように履いてね。内股の小股で、軽く下駄を引き摺るように歩くのがいいわ音がカラコロ鳴るようにね」
なるほど・・・」
「靴擦れしたところは絆創膏貼っておくわね」
「ありがとうモミジちゃん!」
「じゃあ、アタシはイカ焼き買って来るわ!」
「うん、じゃあね!」
その時、モミジの肩にポンと手が置かれた。
「モミジちゃん、一緒に行こう?1人だと危ないよ」
「ヒイラギ?うん。いいわよ?」
あ、ひょっとしたらヒイラギ君って・・・エヘヘ上手く行くといいな!でも、ちょっと羨ましい・・・なんてね!
「・・・・・・・・・・・・」
アスター君がとある屋台から少し離れたところにいる
少し裾丈が短めなのは動きにくいと不満を洩らしたのだろう。どこか子供のような雰囲気なのが不思議だ。
「アスター君?チョコバナナじっと見て、買わないの?」
「・・・食いたいけど、チョコや氷は直ぐ溶けるか
「見たい!」
「いや、大変だぞ!?ベタベタに
「見たい!!」
ルピナスは食いぎみに食いついた。まるで魚だ。
「・・・わかった!その代わりどうなっても知らないぞ!オレは止めたか
「買ってきた!」
「早いな!」
「混んでなかったからね」
「・・・って!よりによって白か!?」
アスターはルピナスの買ってきた白いチョコバナナを見て真っ赤になった。
「ん?いけなかった?」
「ま、いいけど・・・。じゃ、手に取るぞ?受け皿用意しろ」
アスターは自分が持ち、下に向けて溶けていく様子を見せようとしていたが、受け皿なんて、お店の人に頼むしかないし、ここにはない。
チョコバナナはアスターが近づくだけで徐々に溶け出す。
「うわぁ!もう溶けてる溶けてる!」
「オイ!下に向けて落とせ!浴衣汚すぞ!?」
アスターはチョコバナナに向かって手をのばす。
「やだよもったいない!」
ルピナスは渡さないと守る。このチョコバナナはルピナスが買ったものだ。
「ならオレが食う!」
「ダメダメばかぁ!」
チリン
ぱくっ
「・・・・・・!!」
ルピナスは溶けていくチョコバナナをアスターと持っている手から髪飾りの鈴を鳴らして急ぎ口に含んだ。そのまま奪い、向こうを向く。
「ほーかひは?」
「な、何でもない!なんでも!!」
「うわっ凄い!溶けちゃって手がドロドロだ!!」
「ひ、表現するなよ!!!!す、水道探すぞ!!」
「ん?うん・・・」
袖を捲っていたので浴衣は無傷だ。ルピナスは真っ赤なアスターの後ろを不思議に思いながら着いていった。
「・・・大丈夫か?」
「ん。急いで食べて大変だった」
「だろうな!しかもお前が全部食うなよ!!」
ルピナスは不満気に軽く睨む。
「私が買ったのに?」
「だったな!!・・・りんごあめのが良かったな」
「あー1人じゃ食べきれなくて、よくお父さんにあげてたな・・・」
「いや、噛めよ!」
「固いよ?」
「やってみろ!買ってくるから!」
「え?飴も溶けるんじゃないの?」
「溶けるけど、飴はゆっくり溶けるんだよ」
「やろやろ!」
「お前、楽しんでるだろ・・・」
「うん!」
「・・・・・・」
「ほら!早く!!」
「・・・はいはい」
アスターはルピナスの後をゆっくり着いて行った。
りんごあめは2個買って、かじって食べました。
もちろん水道の近くでね。
「あ、暑い・・・ちょっと涼んでくるな」
「うん?私は他を回ってくるね」
水道の近くでも、アスター君には直ぐ熱く感じるのかな?
ルピナスは疑問に思ったが、わかれた。
「おう!じゃあな」
確かにちょっと蒸し暑いな・・・。あ、かき氷食べよっと。ルピナスは屋台のおじさんに言った。
『イチゴ味ください』
左側の人とハモった。
「ルピナス?」
「ナズナお兄ちゃん?」
「イチゴ味2つ?」
「は、はい!」
「はい、おまちどおさま。兄妹かい?仲が良いね~!」
え?あ、そっかお兄ちゃんって呼んでるもんね
「ありがとうございます。幼馴染なんです」
「・・・おや、そうかい」
ナズナが言うとおじさんは不思議そうにしていた。
・・・いつまでもお兄ちゃんって呼んでるからいけないのかな?でも、ナズナお兄ちゃんは、お兄ちゃんだから・・・
「・・・好みはあの頃と変わってないね」
ナズナは柔らかく微笑む。
「・・・え?あ、うん!!今でもイチゴ好きだから!」
するとナズナは何処からか練乳を取り出して、自分のとルピナスのかき氷にかけた。
「はい、これで本当に一緒だね」
「た、確かに美味しそうだけど、お店にはなかったよね?練乳なんていったい何処から?」
「・・・・・・ふふっヒミツ」
ルピナスはかき氷を口に含む。
「ナズナお兄ちゃんも、やっぱりイチゴ好きなの?」
「うん、他の味は考えられない・・・」
「そう・・・?」
ナズナは優しく微笑む。
「よく似合ってるよ、浴衣」
「あ、ありがとう。お兄ちゃんも似合ってるよ」
ナズナは何かポツリと溢した。
「でも、なんで・・・なの・・・?」
「え?何か言った?」
「ううん、何でもないよ。練乳があるとより美味しいね」
「うん」
その時、ザバーッと強い雨が降ってきた。
「あ、雨だ!凄い集中豪雨だよ!!」
強い雨に驚くルピナスを横目に、ナズナは慣れた手つきで折り畳み傘を取り出してポンッ!と差した。少し大きめの暗い黒のボーダー柄の傘だ。
「はい、傘に入りな」
「え?傘?ありがとう・・・天気予報言ってたかな?」
「ん、僕は雨男だからね。折り畳み傘はいつでも持ってる。きっと花火大会も中止だよ」
「え?でも体育祭も旅行の時も晴れてたのに?」
「そうだね。アスター君が屋内に入ったんじゃないかな?」
「え?」
固まったルピナスにナズナは聞いた。
「ルピナスは雨、嫌い?」
「う~ん、嫌いではないけど、こういう時は困るね」
「・・・そうだね。じゃ、僕は屋内に入るよ。皆困ってるしね」
「あ、雨落ち着いてきたよ!ナズナお兄ちゃ
「ルピナスか!?」
髪飾りの鈴を高くチリンと鳴らして振り向くと、雨の中でアスターがびしょ濡れで立っていた。
「アスター君・・・・・・。どうしたの?」
「暑くって屋内で涼んでたらみんなに雨降ってきただろって追い出されたんだよ!」
「もう!タオルは?」
「こんなのすぐ乾くって」
「もう!風邪ひくよ!?」
ルピナスは屋根の下へ引っ張り、ハンカチを取り出してアスターに渡す。
「・・・じゃあね、ルピナス」
「え?あ、うん!」
ナズナは傘を差して1人ゆっくり進む。どうやら寮に戻るらしい。
「お前本当に誰とでも仲良いな。あの人とも話すなんて」
「幼なじみなんだ」
「そうか・・・」
「・・・ってか体育祭で一緒に走ってたでしょ!?」
ルピナスは思わず突っ込みを入れた。
「あ~あの人か。浴衣だと雰囲気変わるな・・・」
確かに、どこか儚い雰囲気がしてた・・・。
先ほどよりは弱まったがまだ雨がザーザーと降っている。屋台も片付けていたり、屋根のある場所に人が集まり、帰宅する人も多い。
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