35 / 70
8月 2
しおりを挟む「ひっく・・・ひっ・・・!」
「な、泣くなよ!!別にもう気にしてないから!」
アスターはルピナスの頭をまたポンポンするが、効果はあまり無い。
「でも・・・そんな・・・事あったら・・・ストーブ、嫌いに・・・なるよ!!」
「・・・・・・」
アスターは顔が熱くなり、ルピナスの肩に触れる。
こうするのが自然な気がしてその肩を引き寄せ・・・
「忘れ物をしてしまったぞ!」
大きな声とドアの音にアスターは我に返り肩から素早く手を離した。更に顔が熱くなった。
「ぽ、ポトス!?」
「やっぱりあっちはやめた・・・。めんどくさい・・・」
「日にち間違えたわ」
「変だと思ったよ!」
「ヤマブキにモミジ、カエデ・・・!?みんないる・・・?」
「ひっく・・・ううっ・・・!!」
「ルピナスさんどうしたんですか!?」
「アスターがなかせたの?」
泣いているルピナスをボタンが心配して、カスミが小首をかしげる。
「あ、えっと、そうだけどそうじゃない!」
焦るアスターにヒイラギはにっこり笑う。
「なるほど、焦げた匂いがするし、泣かせたんだね」
「ヒイラギまでなんなんだよ!・・・そうだけど違うって言ってるだろ!?」
「・・・・・・・・・・・・」
カエデは周囲の焦げた箇所とルピナスの身体を見比べて、考えるような仕草をしていた。
その日の夜、私は寮の食堂の縁側に1人で外を見て座っている彼に、気になって聞いてみる事にしたんだ!
「・・・あのさアスター君、お父さんどんな人か聞いてもいい?」
「いいけど、幼稚園の頃だしほとんど覚えてないぞ?」
「覚えているだけでいいよ」
「そうか?ん~・・・優しくて・・・」
「うん」
アスター君は考えながらゆっくり教えてくれた
「マイペースで・・・」
「うん?」
「どっか抜けてて、振り回されるし、常識無いし、影う・・・どした?」
「ア、アスター君が常識無いって言うの・・・?相当だね」
「はぁ!?お前までそう言うのかよ!」
「ふふっ、・・・でも聞いてて思った」
ルピナスは外を向いて膝を抱えた。
「ん?」
顔だけ向けて微笑んだ。
「アスター君、お父さんに似てるんだろうね」
「そうか?・・・確かに、爺ちゃんに言われたかも・・・」
「きっとそうだと思うな・・・」
「・・・頭抱えて、小さい頃の父さんを相手してるみたいだって」
「そっか・・・」
アスターは勢いよく立ち上がった。
「・・・な、花火やろうぜ!手持ち花火買ったんだ!」
「え、いいの?」
「言ったろ?能力は使い方を間違えなければいいんだよ!」
「うん。アスター君の炎、好き」
「・・・あ、ああ。だろ?・・・な、なんか暑いな!」
「・・・?夏だから?」
「そ、そうだな!夏だもんな!」
「みんなも呼んでくるね!」
「おう!」
ルピナスはみんなを呼びながら楽しそうにかけていく。アスターはまた縁側に座り、少し寂しく思いながら思わず口に出す。
「・・・夏、だもんな。当然だ」
そんな呟きをケロケロと鳴くカエルの鳴き声が包んでいた。
今日は夏休み中での登校日だ!学校に来たけど・・・
「アレ?先生来ないね」
ホームルームの時間はとっくに過ぎているのにフクジュ先生が来ない。
「カスミちゃん知ってる?」
ルピナスはカスミに聞いたが、カスミはふるふると首を横に振る。
「さいきん、かおみてない・・・」
「それ、このまま寮に戻って良いって事?」
「なら、ショッピングモールに行ってトゥエンティーワンでアイス食べない?制服で行きたいわ!」
「速攻先生にバレるからやめろ!」
ダレるヤマブキとはしゃぐモミジをカエデが止める。モミジは不服そうに呟いた。
「カエデは真面目ね」
「モミジが適当なんでしょ?」
「何よ!」
「何さ!?」
「はいはいケンカしない」
ヒイラギが双子の首根っこを掴み止める。
その時、カツカツとヒールの音がし、ガラリとドアが開けられる。ローズ先生だ。
「Z組うるさいわよ!ウチまで声が聞こえてきたわ!!・・・あら、フクジュ先生は?」
「・・・まだいらっしゃってませんわ」
ボタンがおずおずと答えた。
「また保健室ね!全くアイツは!!行くわよ!」
「は、はい!」
慌ててルピナスは答え、ローズ先生の後を着いて行った。ローズ先生はオリーブ先生に声をかけて保健室に向かった。
ローズ先生は保健室の扉をガラリと勢いよく開ける!
「フクジュ!今日は登校日でしょ!?何してるの!?」
床で寝ていたフクジュは目を軽く開き、ぼさぼさ髪の頭を掻いた。
「・・・・・・ん、姉さん?」
「姉さん!?」
ルピナスのみ驚きの声をあげる。
「あら、知らなかった?コイツあたしの弟よ
他のみんなは周知のようで、頷いている。
「知らなかった・・・・・・・・・・・・・・・」
ルピナスはローズ先生の目をジッと見てしまう。
「な、何・・・?」
「いや、姉弟なら、目って同じなのかなと思って・・・」
「ら、裸眼よわたしは!!」
イヤがるローズにアスターとボタンが賛同する。
「ローズ先生はよく目薬してるよな」
「しかもコンタクトを着けていても使えるものですわね」
クラス一同気持ちは同じだ。
『見たい!!』
「イヤ!」
『え~っ!!』
あっさりと一括された。
「それより!フクジュ、しっかりしなさい!またこんなのばっかり食べて!」
ローズ先生は、保健室に散らばったたくさんのカップ麺のゴミを手早く片付けていく。
「あら?野菜ジュースなんて買ってるじゃない」
「え?姉さんが買って来たんじゃないの?」
「アタシはそんなマメな事しないわよ」
「・・・そっか。あったからたまに飲んでる。俺の好みの味・・・へへっ」
ブシュ~!
フクジュは夏バテなのかぼ~っとしている。普段の鬼畜さが嘘のように可愛い。
「パパ!パパ!だいじょうぶ!?おねつ?」
カスミが小さい手をフクジュの額に当てた。
「・・・カスミ・・・?どした?」
「パパ、きょうはとうこうびだよ?しんぱいしてみんなときたの」
「あ・・・そうか・・・。すまん・・・忘れてた・・・」
何か体調が悪いのか?そう心配していたその時・・・
グ~
「腹へった・・・」
フクジュのお腹で虫が鳴き、はぁ・・・とため息を吐いた。
「そんな生活してたらカスミが1人ぼっちになるわよ!」
「パパ、たいせつなひと・・・りょうでくらそう?」
ローズが叱り、カスミも心配している。しかし、フクジュは浮かない顔だ。
「俺と生活しても、不幸になる。カスミ、お前のママみたいに・・・」
「あの娘がそんな事望んでると思うの!?」
「怖いんだよ!寮に帰って電話が鳴るのが!アイツの時みたいに今度はカスミが・・・!」
カスミはフクジュと亡くなった奥さんの子供だからだ。
「じゃ、カスミのれんしゅうだいになってパパ!」
「・・・れんしゅうだい?」
「カスミね、カエデにおしえてもらいながらごはんつくってる!パパはれんしゅうだい!ここにごはんもってくる!カスミは、はいたついんカスミになる!」
「・・・ははっ。なら、筑前煮を頼む」
「うん!パパのこうぶつね!こんにゃくいっぱい入れていい?」
「あぁ」
「やった!貝もいれよ!」
「それはやめろ!」
私達は、先生とカスミちゃんの微笑ましいやりとりを見守っていた。
先生の説得が終わりカスミを残して廊下に出る面々、女性とすれ違い、そこでルピナスが気づく。
「あれ?ヤマブキ君は?」
1
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる