上 下
31 / 70

7月 海8

しおりを挟む
「ふふふっ!砂ついてる」
確かにあったかい。触っていた砂も合わせてざらざらしていて乾燥気味の手だ。みんな・・・あの夢の手とは違う。ルピナスは安心したような、残念なような気持ちになった。

「あー砂ずっと触ってたからな」
「え?ずっと?」
「おぅ!城作った」
アスターは合わせたままの手に指先を入れて掴むように繋ぐ。
「わぁ!見たい!」
「なら行くぞ!」
「うん!」
アスターに引っ張られるようにルピナスは立ちあがり、手を引かれていった。




アスターに連れられてルピナスは砂浜を歩くと・・・
「コレだ!!」
「なんだろ?なにかに似てる?」
ルピナスは首を傾げる。
「当ててみろヒント1これ、城じゃない」
アスターは得意気にクイズを出す。
「見たことある・・・それも、実物を・・・」
「ひひひっ!ヒント2とっても身近だ」
「あ・・・ひょっとして、学校?」
「正解!1日かけたからな」
「凄い!力作じゃんか!!」
海で見かけないと思っていたらこんなサンドアートを作っていたとは驚いた。フルール学園の校舎だ。
「カスミや先生、ヒイラギとか、いろんなヤツが手伝ってくれたからな!」
「不思議な造りだよね・・・特に購買」
「あー、さすがに屋上までは作れなかったな・・・」
「ふふっ!せめて寮や体育館ならね」
「あ!そっち作れば良かったな!」
「ふふふっ!」
アスターはフルールでの生活がクラス1長いので、学校はもはや家のようなものだ。
「学校でどっかお気に入りの場所あるか?」
「ん~やっぱり今は購買かな。前は理科室だった」
「あ~女子は好きかもな。あーいうの」
「うん!とっても可愛いよね、あのぬいぐるみ!!何で理科室にあるのか不思議だけど」
「え?理科室には全部あーいうのがあると思ってた」
「無いよ!誰か先生が好きなのかな?」
「ローズ先生とかか?」
「あ、好きかもね!あははっ!」






「ルピナスさん、大丈夫ですか!?」
「ボタンちゃん。うん、心配かけてごめんね」
「良かったです!本当に良かったです!!」
「うん。ありがとう」
「さ、そろそろ時間だ!皆着替えて帰るぞ!」
フクジュ先生がみんなを集めてパンパンと手をたたく。
「ルピナス、行こう!」
「あ、うん。じゃあね」
「おぅ!」
「アスター」
「ん?何だモミ
「調子に乗って変な事してないわよね?」
「へ、変なっ!?」
「変な事?どんな事だ?」
赤くなるルピナスに対してアスターは首を傾げる。
「モミジさん、アスターさんに遠回しな表現は通じませんわ」
「・・・・・・!ほんっとうに常識無いわね!もういい!ルピナス行こう!」
「2人ともどうしたの?」
「別に何でもないわ!着替えましょうよ!」
「そうです!とりあえず着替えましょう!」
「あ、うん・・・」
モミジちゃんどころかボタンちゃんまで?
あれ?それにしても、夕方になって風が出てきた?



着替えてバスに向かう途中・・・
「ヤバい!雨降ってきた!」
ヒイラギが気づきみんなは走り、海の家の屋根の下へ避難した。
「アスター外出てよ!」
ヤマブキが八つ当たりのように怒る。
「オレだって濡れたくねーよ!」
「全く泳がなかったしな」
ポトスも珍しく加勢する。
「お前らだってちょっと手伝ってくれたろ!?」
「それはそれよね」
「コレはコレだね」
モミジとカエデも頷く。
「なんとかしてよ!ぬれちゃう!」
カスミは泣きそうだが、アスターだって無理な物は無理だ。
「オレだって神様じゃね~わ!」
「これは普通の雨じゃない。風もあるし、おそらく台風だな・・・」
「バスのある駐車場まで行くと絶対ビショビショになっちゃいますよ!」
フクジュが分析し、ルピナスも困った。しかし、ボタンがにっこり笑った。
「皆さん落ち着いて、此方で少々お待ち下さい」
「ボタンちゃん?」
ボタンは落ち着いた様子でケータイをとりだして何処かに連絡している。

少し待つと、スミレさんや海の家の人が傘を貸してくれた。
ボタンはどうぞコチラにと、予知していたかのように誘導し、2、3分ほど歩き、後を付いていくと、古い旅館に案内された。
でもやっぱりみんなビショビショだ。
女将さんと思わしき人が出てきた。
「ボタン様、お久しゅうございます」
「お久しぶりです。お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「はい、勿論です。オーナーには台風が何をしても必ず泊まってもらえと言われておりますので」
「ありがとうございます」
女将さんはにこりと笑う。
「さ、まずは皆さん温泉で暖まって下さいな」
「え、いいの?」
ルピナスが聞いた。
「うちの系列で、オーナーは父なので大丈夫ですよ」
「Zクラスが優勝して旦那様は大喜びしておりました。もともと日帰りで帰すつもりはありませんでしたよ」
「前日に日付を変えたのはわざとか?」
スミレさんは説明してくれたが、フクジュ先生の質問にはニコリと笑って答えない。
「なんか、踊らされてるね。助かるし嬉しいけど」
ヤマブキは複雑な心境を言ってくれた。
「カスミちゃん!お風呂行こう!」
「はい!」
「あぁ、よろしく頼む」
「よろしくおねがいいたします」
カスミもペコリと頭を下げた。


こちらは男湯・・・
「はぁ~いい湯だ」
「あったけ~な~」
「ごくらくだね~」
「・・・癒される」
「生き返る・・・」
ポトス、アスター、ヒイラギ、ヤマブキ、カエデが順に感想を述べる。
フクジュも口を開くが、ドアの先を見る。
「ボタンに感謝だ。・・・にしても外は露天風呂・・・。台風じゃなければ・・・
『行きたかった!』
みんなして口を揃えて悔しがっていた。流石に台風の影響で露天風呂は禁止だ。


一方女湯・・・
「うわぁ!広い」
「おぉお~!」
「本当に凄いわね」
ルピナス、カスミ、ボタンが広さに驚く。
「男湯には滝行のできる箇所、女湯にはこちらが」
ボタンは入れ物を差し出してきた。
「泥パック!?」
「嬉しいわ!」
ルピナスもモミジも驚く。しかし、ルピナスは更に驚くべき事があった。
「・・・にしても、う、浮いてる・・・!」
「ちょっと!どこ見てるんですか!?」
「いいなぁ・・・」
隠すボタンにルピナスは将来に落ち込む。
「ルピナスはつるぺただもんね」
「つるぺ・・・!酷い!」
「そんなに気になるなら、未来の旦那に大きくしてもらいなさい」
「だ、だん・・・!」
モミジはルピナスに詰め寄る。
「ね、カエデと結婚したらアタシと親戚になれるわよ!」
「へ!?」
「あら、イヤ?」
「そんなの、まだ先の
「女の子も18さいになったらケッコンできるよ?」
「かっカスミちゃんまで!」
「そろそろできた?いっしょうなかよししたい人」
『一生仲良し!?』
モミジとボタンが驚く。
「うん、入学してからずっと言われてるの。でも・・・」
「でも?」
カスミが不思議そうに聞いた。
「私が好きなのは夢の中の人なんだ。不思議な夢に出てくる人でね、倒れかけた私を支えてくれた、あったかくて、優しい人なの。でも、覚えているのは、手の感触だけなんだけど・・・」
「へ~ルピナスも乙女ね」
「いえ、素敵です」
モミジはニヤニヤし、ボタンはウットリしている。
「は、恥ずかしいからナイショだよ?」
「ふふっ!じつはね、もうあってるよ?その人がいっしょうなかよしな人だよ」
「え?」
「ええ?」
「まぁ!」
カスミの爆弾発言によりルピナスもモミジもボタンも驚いた。しかし、それだけでは無かった。
『えええええ!』
「ん?どうかしたの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる? 「年下上司なんてありえない!」 「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」 思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった! 人材業界へと転職した高井綾香。 そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。 綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。 ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……? 「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」 「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」 「はあ!?誘惑!?」 「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フツメンのくせに生意気だ!

スズキアカネ
恋愛
小5からの付き合いの腐れ縁の彼女は誰もが振り向く美人さん。そして私は目立たないその他大勢。私が好きになった人はみんな彼女に惹かれていく。 ──君もそうなの? フツメンの逸見君。 【全8話】 ◆◇◆ 無断転載転用禁止。Do not repost.

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...