能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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7月海 5

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「海だぁ~!」
「キャー!行くわよ!」
先頭にカスミが膨らませた浮き輪を抱えて駆け出し、モミジがビーチボールを手に後を追う。
「待て」
「ストップ!!」
「あぅっ」
「ちょっと!」
フクジュとカエデが止める。フクジュはカスミの浮き輪を引っ張り、カエデはモミジのビーチボールを取りあげる。
「準備運動が先だ!」
「それに、まだ着替えてもいないでしょ?ビショビショになって水着着て帰るつもり?」
『あ・・・』
2人は顔を見合わせた。
「先に着替えようか・・・」
ルピナスは苦笑いしながら更衣室を指差した。

「着替えて来たよ!」
「赤、入ってる・・・な」
アスター君の顔が赤い?
「ん?うん。小物と合わせていったら一番良くて」
「そ、だよな・・・。よく、似合ってる・・・」
なんだろう?こっちまで恥ずかしいんだけど?
「あ、ありが
「ルピナス!!ビーチボールやりましょ!」
「うわぁっ!モミジちゃん!?」
「ほらほら、あっち行くよ」
「カエデ君まで!?手を引っ張らないで!行くから!」

モミジちゃんの手は、ネイルアートやってて爪が長い。指輪もブレスレットもたくさんあってオシャレさんだ
カエデ君の手は調理師の手。火傷が多いのに、すべすべしている器用な人の手だ。皮膚も厚い
2人とも、夢の中のあの手じゃない・・・。な、何を考えてるの?夢の人は会ったこともないのに!!

「行くわよ!そーれ!」
「・・・え?落ちてこない?」
モミジちゃんの打ち上げたようなサーブのビーチボールは宇宙にでもいるように、見上げた空でふわふわと浮いている
「うふふっ!ここ人がいないもの!能力使い放題よ!」
モミジちゃんの指が青く光ってる!と、消えたと思ったら急降下してきた!
「え?・・・うわぁっ!」
「・・・やりすぎ」
「き、消えた!?」
驚いたルピナスを気にせずポーンとカエデはビーチボールを一回上げてからキャッチした。
「重力が元に戻ってる・・・」
ルピナスは驚いた。普通のビーチボールだ。
モミジはカエデを怒る。
「カエデ!何するのよ!」
「これが消える魔球・・・!」
「消したビーチボールよ!」
「モミジは結構慌てん坊だからね。驚く事をすればすぐに能力切っちゃうよ」
カエデは気にせず、水色に光らせていた指を戻す。
「・・・わかったわ!本気でいく!!」
「うん、その方が楽しそうだ」
「カエデ君煽らないでよ!」
モミジはまた青い光を放ち、自身も空に浮かぶ。カエデは頷いた。
ルピナスは止めるべきか迷い焦った。

「行くわよカエデ!」
「ビーチボールは下に落とさないように競うゲームだよ?」
「だから能力フル活用するのよ!」
「了解。せいぜいびっくりしない事だね」
カエデもまた指を水色に光らせる。

カエデの透明化と、モミジの重力操作でただのビーチボールにしては難易度が高い。
ルピナスはそっと距離をとった。巻き込まれたくはないし、自力で能力を発動するのはまだ難しい。
ビーチボールって何だったかな?なんて思いながら心配だったので見守った。

「アタシが勝ったら巨大キャラメルパフェね!」
「じゃ、俺が勝ったら部屋片付けて」
「また!?」
「モミジ得意でしょ?」
「甘えすぎよ!」
「そっちこそ太るよ?」
「馬鹿馬鹿、カバカバ、馬鹿馬鹿、カバカバ!」
「それに、片付けは運動にもなるね」
「バカエデ!!」
モミジは空からアタックしてきた。
「っ!・・・・・・しまっ!」
ボールが来たカエデの手元が狂い、ルピナスの顔面めがけてボールが飛んでいく。モミジの重力操作でドッチボールみたいな衝撃がある!
「きゃあ!」
ルピナスは思わず叩くようにアタックした!今度はモミジに豪速球が飛んできた!
「いやあっ!」
モミジは驚いてビンタをするようにボールを振り払う。
能力が暴走し、重力がマイナスになったビーチボールは空に舞い上がって飛んでいく。
カエデが気づいて
「モミジ!能力切れ!さすがにマズイ!!」
「うん!」
「くそっ!俺のは遠すぎて能力が使えない!」
「遠隔は難しいものね。ヤマブキなら得意なんだけど・・・」
風船のように飛び上がったビーチボールは、海の方へ落ちていった。
「どうしよう・・・」
「拾いに行かないとダメね」
カエデとモミジはため息をついた。
『でも・・・』
「はぁ・・・疲れたわ・・・」
「俺も、冷や汗かいた・・・」
双子は背中合わせになって砂浜に座り込んだ。
「私、拾ってくるね!」
「ありがと・・・」
「ごめんね・・・」
モミジとカエデはルピナスの背中を見送った。



ピザ柄の浮き輪を着けてルピナスはビーチボールをとりに行った。
「はぁ・・・何とか乗れた」
その頃、ヤマブキはイルカちゃんに何度かトライしていたがバランスが難しい。ようやく乗れた。このままゆっくり揺られていよ・・・
ポスッ!
「うわっ!わっ!わっ!わあっ!!」
バシャン!
ヤマブキの頭にビーチボールが落ちてきて、バランスを崩したヤマブキは海に落ちる。
ルピナスが直前に到着し、バッチリ見てしまった。
「ヤマブキ君!?ゴメンね大丈夫!?捕まって!」
「ぶはっ!ありがと・・・。何か落ちてきた?」
「大丈夫!?ビーチボール飛ばしすぎちゃって!」
「一体どこまで飛ばしてんの・・・」

ヤマブキ君の手は、普段機械を触っているからか、すべすべで器用で綺麗だけど、虚弱で骨っぽい手だ。
やっぱり違う・・・
「・・・って、いつまで触ってんにょさ!!へ、平気だから!手をぱなして!!」
しまった!なんとか誤魔化さないと!
「あ、うん!イルカちゃん、乗ってみたいなって」
「・・・じゃ、浮き輪ちょうだい」
「ん、いいよ!はい!」
「ありがと・・・。難しいけど、いける?」
「あ、こう・・・かな?」
「結構器用だね・・・」
「エヘヘ、そう?」

ザバザバザバザバ!
「・・・って危ない!!!」
ドンッ!
ヤマブキが手を伸ばすが届かずにルピナスが海に落ちる
「きゃあっ!」
ばっしゃん!
「ぶつかったか?スマン!」
「猪突猛進バカ・・・!」
ヤマブキは遠泳していたポトスに悪態をついた。
「ぷはっ!平気・・・。あ!忘れてた!ビーチボール取りにきたんだった!」
ルピナスは顔を出し、思い出す。
「ビーチボール・・・それか?」
「あ、そうそれモミジちゃんに!」
「貸してみろ!ふんっ!」
ビーチボールを浜辺にいる双子に向かって投げるポトス。
浜辺まで余裕で届き、モミジがキャッチした。

「流石ポトス君!!」
「ふ、普段の能力の応用だ!今日は風が弱いしな!」
「にしても、ちゃんと前方確認くらいしてよ!危ないでしょ!?」
「スマンスマン!つい夢中になってな!」
「確かに、海だとみんなの意外な1面見れるよね・・・ボタンちゃんとか!」
「あの引っ込み思案のボタンがサーフィン・・・。陽キャの嗜みのサーフィンだよ?」
「ま、イメージ無いよね」
「うん。ま、コレだろうね」
ヤマブキは右手をグッドにしてから親指の先をピコピコと動かした。
「止めてよ!想像しちゃう!!」
「ん?どういう意味だ?」
ポトスは両手をグッドにしてピコピコする
「マネしなくていいから!!」

「ってかそろそろ浮き輪返してよ!」
「足がつかないか?」
不満のルピナスにポトスは不思議そうだ。
「ちょっと足りない!」
「ほら、手を貸せ」
「ありがとう」
ルピナスがワタワタしてると手をとるポトス。
ポトス君の手は、大きくて太い。腕には筋肉の盛り上がりがあり、ムキムキなポトスはあったかくて大きく、力強い手だ。
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