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6月体育祭9

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「はい!100回越えました!」
オリーブ先生の爽やかで優しい声が響く。
何で効いてないの!? まさか、この子の能力!?
一緒に回しているフクジュは反対側でニヤリと笑う。
ルピナスの髪が縄跳びで跳んでいると、頭のてっぺんでハート型になる。その発動は見たものが、かかる。そこまで背が低くないルピナスが先頭に並んでいるのはこの為だ。豪華賞品はクラスの担任も貰える。フクジュ先生もやる気になって作戦をたてているのだ。
「チッ!じゃ、次はコッチね!」
勿論ローズ先生も豪華賞品でやる気になっている。
舌打ちした後、ローズ先生はまた紅色に光らせた指先を鼻に集中させる。今度は先ほどと変わって生ゴミのような匂いだ。
「うっ!」
「臭い!」
「鼻がもげる!」
みんなあまりの臭さに鼻を摘まむ。
「うふふっ!鼻を摘まむと身体能力が落ちるわよ?」
「うわっ!」
「ひっかかったぁ!」
「臭い!」
「これじゃ跳べないよ」
「くっ!一か八かだ!」
フクジュ先生は指先を光らせる。白くなったり黒くなったりしている。大気中に白と黒の光はぐるぐると円を描く。やがて早くなり、白い光を纏った風が強くなり、ゴミのような匂いを吹き飛ばした!
「あぁ!!酷いわ!」
「これが俺の能力だからな!あ~臭かった!!」
「そんなに臭いって言わないで!!」
「さ、みんないくぞ、負けたらお仕置きだからな?」
フクジュ先生は楽しそうに笑った。
「ひっ!」
出たドS!
また50を越えた!
「は~い!時間終了です。ひっかかったところで終了ね~」
「まだ跳んでる!100を越えたわ!」
ローズ先生は悔しそうに回している。先生の能力は終了の時間が過ぎると使えない!
その時、黒い風が戻ってきた!
「うわっ!」
「臭い!」
みんな驚きの余りひっかかってしまう。
「あらあら、フクジュの能力の不運ね!使っていたのは制限時間の前だから、これは有効!」
「あぁ、そうだな・・・」
「はい。Zクラスは124回が最高です」
数えていたオリーブ先生が答える。
「やったぁ!Cクラスは86回だから、大縄跳びはSクラスの勝利ね!」
「チッ!宿題出すから覚悟しとけお前ら・・・」
『ひゃあああ!!』
クラスの面々は震え上がるが、可愛い声が不満を呟く。
「パパのせいな
「カスミちゃんシ~っ!」
ルピナスは慌てて口を塞いだ。

大縄跳びが終わり、ZクラスとSクラスは接戦だ。
Zクラス2位2点合計12点
Sクラス1位3点合計11点
Cクラス3位1点合計7点


「さ、長い事やってきました。フルール学園の大大体育祭も最後の競技です!」
大大体育祭になってる・・・。普通の、いや、普通じゃない、フルール学園の体育祭です。
「最後の競技はコチラ!選抜リレーです!」
「行ってこいアスター」
フクジュ先生が腕組みしながらアゴを向ける。
「任せろ!出番ず~っと待ってたからな!」
「アスター最後2つだからな・・・」
ヒイラギは苦笑いする。
「ヒーローは忘れた頃にやって来る!」
「遅れてじゃなく、忘れられていいのか?」
カエデが呆れて突っ込むが
「行くぜ!勝てば1位。豪華賞品は目の前だ!!」
「無視かよ」
「ダメ、聞こえてないわ」
モミジが気にしていないように頬杖をついている。
「ようやく僕にも見せ場が来たね」
「な、ナズナお兄ちゃん出るの!?」
「うん。出るよ」
ナズナお兄ちゃんはにっこり笑った。そういえば今まで出ていなかった
「は~い選手は集まって~!」
「ルピナス、僕を応援してくれると嬉しいな」
「え?」
「はあ!?別のクラスの奴を応援するのか?」
アスターは敵対心を抱いたようだ。
「えっと・・・2人とも頑張ってね!」
ルピナスは困りながらも応援した。
「ふふっ、わかった。頑張る」
「へへっ!ちゃんと見てろ!」
「うん!!」
ルピナスはにっこりと笑って頷いた。

「はじめるよ~!位置についてよーい!!」
ブァー!
リレーといってもクラスから3人ずつしか出ないリレーは瞬発力が大事だ。最初のスタートが物を言う。特にこのリレー、同じ人がバトンを渡さずに3周走っても全く問題がないフルールのオリジナルルールで、リレーとは名ばかり。グラウンドを3周走るだけの、只の長距離走となってしまっている。今回も出場者は各クラス1人しかいない。

スタートと同時に駆け出したのはCクラスのアネモネ1人だ。アネモネは走りながら指先を光らせて足に当てる。クリスマスツリーのようなビリジアンのような瞳と同じ緑の光だ。スタートの合図と共に能力の発動が許可されるからだ。アネモネは走りながら足に光を当てる事が出来る。アネモネはどんどん速度を上げていく。
彼女の能力は風。足の速さだけなら学園最速だ。長い薩摩芋のような紫のポニーテールが文字通り馬の尻尾のように風に靡く。

一方のナズナはまだスタートせずに指先を白く光らせる。そのまま地面に触れるとグラウンドを氷が覆った。
ナズナは氷の上をスケートのように滑っていく。スピードスケートよりもフィギュアスケートのように軽やか滑っているがスピードは早い!

アスターもスタートせずに指先を赤く光らせた後、背中に触れると、背中から炎が燃え出す。走ってはいるが、ロケットのエンジンに似ている。

先を走っていたアネモネは後ろから来る凍りそうな冷気と焼けそうな熱風に驚き、転びそうになるが、風の能力を応用し、少しだけ足を浮かせて走る。
背中を押す力は減るが、この地面とはとても呼べない足元は足を着けたが最後、火傷と凍傷で自慢の脚が使い物にならなくなってしまう!

アネモネはなんとかリードを守りながら2周目に入る。
「な・・・・・・!」
先ほどよりも更に足場が悪い!氷が傾斜している事に気づいた。焼けた箇所と氷の柱が出来かけている場所まであり、不思議に思って何とか走るが、更に気づいた。氷の冷気と炎の熱気。自分の風の能力を受けて此処まで凸凹とも呼べない。間欠泉のようになってしまっている。

アネモネは能力を前方と足下に集中するしかなくなってしまう!火傷と凍傷に気をつけながら、学園の体育祭で、此処まで陸上アスリートとしての選手生命を賭けないといけないのか疑問に感じてくる。一瞬の油断が命取りになりそうだ・・・が、アネモネは一匹狼でプライドが高い。普段から動じないタイプで良かったと安堵し、それでも心を落ち着かせながら気をつけて走る。

何とか最終ラウンドに入ると、アネモネは命の危険を感じた。
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