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ゴールデンウィーク3
しおりを挟む「来月の体育祭のだ」
「6月に体育祭・・・梅雨の時期と被りますよね?」
「暑すぎると良くないし、それに、秋は文化祭もあるし、台風で中止になりやすいんだよ」
「いや、台風だって雨が降るのは同じ・・・」
「何言ってる!雨が降ると基本的に体育祭は延期する」
「そう、ですね」
「まぁね・・・」
ボタンは押され気味だ。ルピナスは当然だと頷く。
「どんどん雨が続くと、いい加減晴れろとみんなが思う。体育祭が嫌なヤツも思う!そうやって、ようやく開催された体育祭は熱くなるだろ?」
「なります!」
「は、はい・・・?」
ボタンはすっかり乗せられているが、ルピナスはよくわからない。焦らされるのが嫌だという事だろうか?
「・・・って事だ!ま、この学校は天気なんて関係無いけどな」
「どういう意味ですか?」
ルピナスは尋ねたが無視された。
「それはそれとして、タスキと玉入れの玉がいくつか破れてな。裁縫頼む」
「お、お裁縫?」
「わかりましたわ」
頼まないで!わからないで!
ルピナスは冷や汗が出てきた。
数分後
「ルピナス、お前不器用だな・・・」
「いちいちわかってる事を言わないで下さい!」
ボタンちゃんはとても器用なのに・・・私はさっきから糸通しに縫い目にと苦戦している。
「ん?なんだもう出来てるじゃないか」
本当だ!20個近くあったのに綺麗に全部出来てる!私は1個しか出来てないのに
「え?ボタンちゃん?」
「いえ、私じゃないです」
ボタンちゃんも数個だ。
「ありがとう。助かったよ」
「はぁ・・・?」
私達じゃないのに褒められた。
ボシュッ!
ん?何か音がした?お湯でも沸いたのかな?
職員室を出たところでボタンちゃんと別れた。
そういえば、誰か女の人が近くにいたように感じた。ボタンちゃんの話を聞いた後だからかな?こ、恐い!
廊下を歩いていると、理事長室から声が聞こえてきた。
おじちゃんとナズナお兄ちゃんみたい・・・
「ようやく君は脱走しなくなったね」
「はい。これで安心できます。ありがとうございます」
「おや、お客さんだよ?」
速攻でバレた!流石おじちゃ・・・理事長だ!
「あ、ごめんなさい!」
お辞儀してから部屋に入る。
「ルピナス!聞いてたの?」
ナズナお兄ちゃんは凄く驚いてる。でも、脱走してたって
「うん。お兄ちゃん、この学校嫌だったの?」
「それは・・・」
「さ、僕は仕事するから、部屋から出て出て!」
「は、はい!」
「・・・失礼しました」
追い出されちゃった・・・
お兄ちゃんは寮に戻るそうだ。
「本当に脱走してたの?」
「ん・・・。寮暮しが退屈で、コンビニとかに行ってただけだよ」
「そっか・・・」
頭をナデナテされる。ナズナお兄ちゃんは小学校くらいからよく私を撫でる。
「ルピナスは学校楽しい?」
「うん!」
「ね、ルピナス・・・」
「ん?」
どうしたのかな?
「うぅん。何でもないよ。よしよし」
「もう!また撫でる!」
「ルピナスは撫でたくなるんだよ」
「もう!子供扱いして!」
1つしか違わないのに・・・
なんだか喉渇いたな。購買で飲み物買おうっと空いてるかな?
「あら、ルピナスちゃん?」
「こ、こんにちはローズ先生」
購買の中にローズ先生がいた。入学式で司会してた先生だ。赤茶色のウェーブした髪は鎖骨ぐらいまであり、紅色の瞳だ。
「ウフフ、こんにちは。こんなところで何してるの?」
「あ、みんなの事をもっと知りたくて、探険してるんです」
「そう。ウフフ可愛い」
「あ、どうも・・・」
この先生色気が凄い!女の私でもドキドキしちゃう!
「あ、でも全員じゃないかも」
「あら、誰かしら?」
私は今日を振り返る。
「あれ、誰だろう?寮でモミジちゃんと着替えて、カエデ君のお菓子食べて、ヤマブキ君とゲームして・・・」
「それから?」
「学校に来てイベリスさんと花壇見て、ポトス君の包丁捌き見て、ボタンちゃんに好きな本教えてもらって、フクジュ先生のお手伝いして、ナズナお兄ちゃんと話して・・・」
「思ったより忙しかったのね」
「あ!アスター君がいない!ローズ先生知りませんか?」
「あらあら、彼ならそこで寝てるわよ」
「え?い、行ってきます!ありがとうございます。ローズ先生」
「ウフフ、じゃあね」
ローズ先生が指差した先。アスター君はグラウンドの木の近くですやすやと眠っていた。
まさかの灯台下暗しだ。表門からグラウンドは見えないしね
そっと近づいたつもりだけど、アスター君は直ぐ起きた。
「・・・ルピナス?」
「あ、アスター君?ごめんね、起こした?」
「・・・いや、今起きた」
アスターは目を擦り大きく伸びをした。
「こんなグラウンドの隅で何してるの?」
「日向ぼっこだ」
「あははっ!確かにあったかいね」
同じようにとなりに座る。
「でも、ニシシッ!」
「?」
「そりゃ!」
「え?何!?何っ!?」
「ほい、タッチ」
いきなり近づかれて肩をポンと叩かれた?
「へ?」
「じゃ、次はルピナスが鬼な!ほら、来いって!」
「鬼ごっこ!?んもう!いきなりすぎだってば!」
「ははっ!お前中々速いな!」
「もうっ!待ちなさい!」
本当に子供みたいなんだから!
「あはははっ!」
「待て待て~!」
「2人だけじゃ寂しいな。よし!」
「ちょっ、校舎に!?」
「まずは、こっちだ!」
ポトス君は迷いなく東側から入り、東側の階段を上がっていく。
「何処に行くの!?」
「調理室だ!まずは運動神経良いし、ポトス巻き込む!」
その頃の調理室
「よし、完成だ!」
「上手いもんだな」
「ふふん!味も上手いぞ」
「どれどれ?」
ぱく
「あ!鶴を勝手に食うな!」
「ほら、ルピナス!もう1個の鶴あーん」
「え?わっ!」
ぱく
「お、美味ひい!」
「はっ!だ・・・ろうな!」
ポトスは照れながらも嬉しそうに腕を組んだ。
「よし、今のうちにタッチだ!」
「えっと、うん!」
ルピナスはポトスの組んだ腕にタッチした。
「な、何なんだ!?何・・・してる!」
「お、鬼ごっこ・・・」
「次の鬼はポトスな~!」
「アスター!また貴様か!ルピナスまで巻き込んで!今日と言う今日は・・・許さん!」
ポトス君は速攻で身支度を整え、片付けてからアスター君を追いかけていった。こういうところ真面目だよね・・・。
そんなこんなで全員の場所を知っていたアスター君はみんなを巻き込み、学校全部で鬼ごっこしたんだ。
私はアスター君とグラウンドに戻ってきていた。
「はぁ!楽しかった!よくみんなの場所知ってたね」
「オレが一番この学校長いからな!幼稚園の年中から寮暮しだ!」
「え?今高校生だよね?そんなに長い間ここに?」
「あぁ。10年くらいになるのかな?」
「・・・家に帰ったりしてるの?」
寂しくないのかな・・・
「んー、ちょっと帰りずらいんだよな。親父はいるけど、長い間会ってない」
「そっか・・・」
「だから、何かわかんない事あったらオレに聞け!」
「う、うん!」
お父さんの話しかなかったけど、お母さんはどうなったのか気になった。でも、アスター君はあまりにも明るく、強く私を励ましてくれるから、今はまだ聞かないでおこう。
アスターは少し考えた後に口を開いた。
「・・・にしても、お前既にみんなと会ってたのか?」
「うん。アスター君が最後だね」
「・・・お前、何か・・・」
「・・・ん?」
「人に好かれやすいのかもな・・・」
「そうかな?」
「引きこもりのボタンやヤマブキとも仲良くなったんだろ?」
「・・・まぁ、そうだね」
「ボタンは凄い人見知りだし、ヤマブキはいまだに敵意剥き出しなのに・・・」
「そう?2人とも優しいよ?」
ルピナスは不思議そうに首を傾げた。
「ふーんそっか?ま、いいや!お前の特技かもな!」
アスター君はそう言って頭をポンポンしてきた。
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