能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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入学式6

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「あの、あんまりわたくしに関わらない方がいいです」
「どうして?」
「わたくしの能力は毒なんです。植物はもちろん。 動物にも、人にも毒なんです」
ボタンは先ほど以上に泣いてるようだ。

「でも、植物には元々毒を持ってるのもあるよね?」
ルピナスは考えながらドア越しにひとりごとのように伝える。
「あ、はい。そうですね・・・?」
真面目なボタンは答える。元々お人好しな性格だ。
「それって、身を守るためとか、食べられないためだよね?」
「はい。それが・・・?」
ボタンにはルピナスの言っている意味がわからない
毒・・・。毒は薬にもなる・・・もしかして、病気?
「ね、毒を操るって、病気を吸い取ったりも出来るんじゃないかな?」
「え?そんな事、考えた事も
「ね、やってみない?昔苦労したんだよ!持ってくるね!」
「え?あ、あの!」 
「俺は一階の食堂にいるな」 
「は、はい・・・先生」
どうやら長くなりそうだし、悪い結果にもならなさそうだとフクジュは階段を降りていった。



「これ、この花なんだけど・・・」
「胡蝶蘭ですか・・・」
ルピナスが持ってきたのは白い胡蝶蘭。胡蝶蘭は元々デリケートな花だ。 水に濡れたような斑点が葉にあり、きつい匂いを放っている。軟腐病(なんぷびょう)だ。黒い斑点のある炭疽病(たんそびょう)もある。

「でも、もっと酷くなったら・・・!」
ボタンは責任を感じて不安そうだ。元々やった事は無いし、考えた事さえない。ボタン自身が自分に自信が無く、自尊心も低いタイプなのだ。

「これ以上酷くなったら・・・?あははっ!これ、一番酷いやつだから、気にしなくて良いよ!」
そんなボタンにルピナスはカラカラと笑う。まるで、これからたくさんお世話になる気のようだ。
「ですが・・・!」
ボタンにそんな冗談みたいな話は通じない。
「じゃ、ちょっと待ってて!」
「あ、あの・・・待ってください!」
ボタンはバタバタ駆け出すルピナスの後を追った。





ルピナスはハサミを用意していたようだ。
「追いかけてきてくれたの?ありがとう。じゃ、ここだけ切っちゃうね」
チョキチョキと葉の一部をハサミで切り取った。
「これならいい?」
「は、はい・・・。吸い取る、吸い取る・・・」
ボタンは断る事も苦手だ。ここまでお膳立てしてくれているルピナスを有難いとさえ思う。 
ボタンはそのまま座ってゆっくりと右手の手袋を片方だけとって、 右手を翳す。手が紫に光って、少しずつ、蜘蛛の糸のように切り取られた葉からボタンの手に伸びていく。
「頑張れ!」
「吸い取る・・・吸い取る・・・」


しばらくすると・・・


「出来ました!」
切られた葉からは斑点が全くなく、匂いも残り香としてしか存在しない。綺麗な緑の葉だ。

「ね、あなたは大丈夫?」
ルピナスはボタンをじっと見た。
「え?はい。何ともないです」
「良かった!」
ルピナスはホッとしたように笑った。ボタンは救われた気分だ。
「あ、ありがとうございます」
「能力って影響力だって言うし、あなた優しいんだね」
「え?あ、貴方も!優しい・・・です」
「あのさ、まだあるんだ病気になった 子・・・また持って来ていい?」
「は、はい!わたくしも、もっと練習します!」
「うん、頑張ろう!頼りにしてるね!ボタンちゃん」
「は、はい!・・・あ、まだ貴方のお名前聞いてませんでした」 
「あ、あははっ!そうだったね。私、ルピナス。よろしく」
「は、はい!よろしくお願いします。ルピナスさん」

手を差し出すと、ボタンちゃんはちょっと迷いながら、黒レースの手袋を嵌めて、細い手できゅっと握手してくれた。
ボタンちゃんは黒髪のストレートロングヘア。毛先がたっぷりしていてまた可愛い。前髪が長くて瞳が見づらいけど、薄いラベンダーのような紫が綺麗だ。
喋り方もそうだし、良いとこのお嬢様だったりするのかな?



「あのさ、廊下の真ん中でキャッキャウフフしないでくれる?部屋に戻りたいんだけど」
「・・・!!」
「あっ!ボタンちゃん!」 
走って部屋に戻っちゃった。いつの間にか1階の廊下にいたな。

「・・・あなたは?」
声をかけてきたのはボタンちゃんよりちょっと幼い男の子だ。12歳くらいかな?パーカーのフードをガッツリかぶって前髪も長い。首にヘッドホン着けて、手にはコーラのペットボトルを持ってる。古い黒板のような緑っぽい紺の髪は内巻きっぽくて量が多そう。前髪がかなり長くて目が見えないや。
「・・・人に先に名前を言わせるなんて、きみ、結構自分勝手だね。ま、能力できみの名前なんかぼくはもう知ってるけどさ」
「あ、はぁ・・・。る、ルピナスです」 とりあえず自己紹介しとこう・・・・・
「いや、もう知ってる。ぼくはヤマブキ。きみが新入生なんでしょ?ね、きみってタラシなの?キングやあの双子が赤面したのなんてはじめてだよ。ボタンまで部屋から連れだしちゃうし。あ、ぼくの事までタラシ込むつもり?何?きみは学校の人間男女含めて全員をハーレムにしたい訳?生憎ぼくはそんな戦いになる事なんて望んでないからね」
「あ、私も戦いなんて望んでない・・・よ?」
よく喋るなぁ・・・。何だか全部知ってるみたいな・・・?
「本当に・・・?」 
「うん!みんなと仲良くなりたいもん。よろしくねヤマブキ君」
「べ、別に!!きみとよろしくなんかしないから!」
「え、そうなの?あ、じゃあ能力教えてよ!」
「話聞いてた!?・・・もうわかるでしょ?透視、 盗聴、ハッキング」
「ん?あ、あのさ・・・」 
ちょっと考えて思った。
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