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入学式5
しおりを挟む「みんな入学、進級おめでとう。頑張ってね。以上!」
「はい!それでは・・・」
司会の女の先生は慣れた様子で司会を続ける。 随分とセクシーな先生だなぁ。明るいお色気タイプだ。たしか、ローズ先生。 となりにいる白衣の先生はため息をつきながら眼鏡を直してる。 にしても挨拶それだけ?・・・って・・・ん?あの人・・・!!
「あ!ルピナスちゃん発見!」
「お、おじちゃん!?」
思わず席から立ち上がる。前の中学で用務員やってたおじちゃんだ!
「はーい!おじちゃんで~す!」
おじちゃんは私の眼の前まで走ってきた。 私の両手を握ってブンブンしてる。
「ほらね、ルピナスちゃんはすぐに来てくれてまた逢えた!」
「あ、うん・・・」
「もう理事長!」
「え?あ、はーい!ごめんローズちゃん。戻りまーす!!」
「・・・ゴホン。新入生は着席して下さい・・・」
白衣の先生は頭を抱えて言った。
「え?あ、はい・・・」
ルピナスは慌てて座った。
「何、知り合いなの?」
女の子に聞かれたが、びっくりしたルピナスは少し放心している。
「中学の時に仲良かったおじちゃんなの・・・」
「そう。それはきっと偵察だと思うよ」
「偵察?」
繰り返すルピナスに男の子が説明してくれた。
「そう。どんな生徒をスカウトするか理事長本人が見に行くんだ。能力の破片を辿ってね」
「能力の破片・・・?」
何だそれ?
女の子は呆れながらも説明してくれた。
「アンタ、ホントに何にも知らないのね!いい?能力は、 私たち人間に稀に見られる力なの。元々は個人の差で、この学校では植物への影響力があるかよ」
男の子がわかりやすく説明する。
「雨男とか、晴れ女とか言うでしょ?アレがもっと強く見られる人間が能力持ち」
「そして、理事長は能力の使われた後。気配とかが わかるらしいの。それが破片。それを辿ってスカウ トするらしいわよ」
「へ~」
おじちゃんもそれを私に感じたからなのかな?
式も終わり、教室に向かう
「改めて自己紹介するわ!アタシはモミジ。そっちはカエデ」
「よろしく」
「あ、はい。私はルピナスです」
「ぷぷっ!もう知ってるわ」
モミジは含み笑いする。先ほどの理事長の件があるからだ。
「ふふっ!お互い様だよ」
先ほどまで散々双子は呼びあっていたのだ。
「あ!じゃあアタシの能力教えてあげるわね!」
モミジは思い出したように言った。
「え?ちょっと待ったモミジ!お前今スカートだろ!?」
カエデが焦り、モミジは嫌味っぽく口を尖らせる。
「わっかりました~!じゃ、ちょっとだけね」
モミジはふわりと浮いていく。
足元が青に光り、床から離れて、ゆっくりと上昇していく。1メートルほど上がった・・・。
「ストップ!それ以上は見える」
「別に履いてるから気にしないわよ」
「パンツ?」
「見せパン!もっと高くまで上がれるけど、こんな感じ。空を飛べるの」
「・・・・・・」
「何?どうかしたの?」
ルピナスは口を開けたまま放心しているようだった。
「・・・天使みたいだな・・・って」
ルピナスはひとりごとのように言った。
「はぁ!?テンシ!?ナニソレ!アンタの脳内お花畑なの!?」
「いや、綺麗だなって思って・・・」
「はぁ!?ナ、ナンナノアンタ!き、綺 麗・・・!?」
「うん、とっても!」
「・・・・・・!」
「良かったな、モミジ」
「・・・・・・っ!」
おぉ! また睨まれた。けど、何か・・・
「バッ!馬鹿馬鹿カバカバ馬鹿馬鹿カバカバ馬鹿!!」
そう言って飛びながら走り去ってしまった。
「怒らせちゃったかな?」
「いや、顔真っ赤だったし、照れ隠しでしょ」
「そっか」
「・・・ありがとね」
「何が?」
カエデ君に何故かわからないがお礼を言われた。
「いや、何でもない。・・・って、モミジ飛ぶな!消すから!」
カエデ君とモミジちゃん。 2人とも素直じゃなくて、でも、明るくて優しい。 仲良くなれそう!あの距離感には入れないけど・・・
教室に行くと、さっきの眼鏡の先生が担任だった。名前はフクジュ先生。保健室の先生でもある。 先生は学校の説明をしてくれた。
「フルール学園は幼稚園から大学までの寮制の一貫 校だ。能力の高さでクラスが分けられ、S、C、Zクラ スがある。入りたくて入れる学校じゃないし、出た くて出れる学校じゃない。ま、卒業生の俺が言えるのは【業に入っては郷に従っとけ】って事だ」
校章も鉢植えがモチーフになっていて、校内にも大 きな花壇やビニールハウスがある。 その他にも色々な決まり事がある。 学校の周りは緑の多い森。ちょっと歩くとショッピングセンターの駐車場に出る。最寄り駅もそこ中心だ。
「では、ルピナス。お前を寮に案内する。クラス全員と早めに顔を合わせた方がいいからな」
「え?入学式なのに休んでるとか?」
「まぁそんなとこだ。優秀な奴ほど抱え込みやすいのかもな」
どういう意味だろ?
寮に行くと、イチョウが黄金色に輝いていて本当に綺麗だ!
「じゃ、まずはクセの少ない方からにするか」
「・・・・・・?あの、どういう意味ですか?」
さっきから変な言い方してる。
「この寮には引きこもりが2人いるんだよ」
「寮に引きこもりが2人!?」
驚愕してる私を無視して先生は階段を上がり2階の奥の部屋の前に移動した。慌てて着いてきた私を気にしないで先生はドアをドンドンと強めに叩く。
「おい、ボタン!ドア越しでいいから挨拶しろ!年上の後輩が出来たぞ!」
「せ、先生もっと優しく!・・・って、え?年上の後輩?」
私は慌てて止めるけど、それ以上に驚いた。
「引きこもり組は飛び級しててな。ボタンは14歳の高校2年だ」
「え!?凄い!」
「す、凄くなんかないです・・・」
あ、小さいけど声が聞こえる。かわいい女の子だ。
「いや、凄いよ!頭良いんだね!」
「・・・別に、褒められるような事してないです・・・。 わたくし、それ以上の事してしまったから・・・!」
あ、泣いてる?
「そっか・・・。じゃ、これからよろしくね」
今は聞かないでおこう。
「あの、あんまりわたくしに関わらない方がいいです」
「どうして?」
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