能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

文字の大きさ
上 下
1 / 86

本編 夢の中の手と香り 4月 入学式1

しおりを挟む

4月 入学式

新学期。 桜の咲くこの季節。 私は、高校生になった。でも・・・

私は今、何処にいるんだろう・・・?
イヤ、道に迷ったわけじゃない。 目的地にはきちんと着いた。
ここは私立フルール学園。全寮制の幼稚園から大学までの一貫校で、学園のパンフレットも私の手元にある。でも、偏差値が高いとか、スポーツ推薦とか、お金持ち学校・・・って訳でもない。 入学試験なんて不明だし、存在するのかさえ幻と言われている。
ウワサだけの学校だ。

でも、その理由がわかった・・・
前にいる男の子は炎出してるし、あっちの女の子は何故か浮いてるし、そこにいる男の子はいろんな武器を振り回して・・・!!
「この学校なんなの!?もう帰りたい!!!」

大声で叫んだせいか、この状況に混乱してるせいか
頭痛がする。ミルクチョコレートのような濃い茶色のセミロングの髪を振り回す。 濃いショッキングピンクの瞳を持つが、今は閉じずにいられない・・・。
私の周りにいる生徒が何人が振り返ったけど、 何事もなかったかのように向き直る。

「あ~。 いるんだよね~あーいう子」
とか、
「アタシはあんなんじゃなかったよね!?」
とか・・・!なんだか見慣れているみたい・・・
「はぁ・・・」
私はため息をつき、どうしてこんな目に合っているのか、原因を探る。 それは、数ヶ月前にまでさかのぼらなきゃいけない気がする・・・





時は受験シーズン。 道行く人がマフラーや手袋をし、吐く息がまだ白かった冬の事。
成績はいたって平均だった私は、 志望校にも高望みせず普通に入試を受けた。 しかし、合格した次の日、 私は放課後に先生に呼び出された。
先生は、 A4サイズ程の白い封筒を差し出してきた。
私の名前と、私立フルール学園・・・しか書いてない。
先生は、いつの間にか職員室の自分の机にあった。と言って、中を確認してみたけど何もない。噂では家に帰って1人で確認しなくてはいけないという事。そして、合格した学校からはお断りの封筒が届いていた・・・と。

フルール学園は長い間、先生の間だけで噂されてい る学校で、入試などは行わず、学校や家にスカウトの様に封筒が届く。学校側はフルール学園からは身を引くのが暗黙のルールで、逃げた生徒はいない。

って何だそりゃ!誘拐か!?魔法学園からのお手紙ですか!?
・・・とりあえず、帰ってパンフレットを見てみよう。家族にも相談しないと

「・・・はぁ・・・」
思わず大きなため息がでる。
「おや、ルピナスちゃんどうしたんだい?」
「あ、用務員のおじちゃん。私にフルール学園からスカウトだってさ」
用務員のおじちゃんはたまに見かけるおじちゃんだ。いつも花壇の近くにいる。
どこかの博士みたいにてっぺんはツルツルなのに周りの髪はふわふわしてる。おじちゃんは銀色の瞳を細めた。
「そうかい。あの学校は外観や庭が綺麗だよ。ルピナスちゃん、この学校みたいにお手入れしてあげてね」
「うぅ、おじちゃん!頑張るね!」
「あぁ、ありがとう。ルピナスちゃんが来るの、楽しみにしているからね」
「うん、おじちゃんありがとう。しばらく遊びに来れないと思うと寂しいな」
「大丈夫。ルピナスちゃんはすぐに来てくれるよ」 
つい、ぎゅっと抱きつくと、おじちゃんはヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「うん?寮生活らしいから、大きな休みには行けるようにするね」
「またね~!!!」
おじちゃん、ピョコピョコジャンプしながら手を振ってる。寂しがってくれてるのかな?嬉しい!

用務員のおじちゃん、本当に可愛いな。私、ガーデニングが趣味で長い間美化委員をしている内に仲良くなったんだよね。たまにしかいないし、ちょっと不思議なおじちゃんだけど、私は大好きな人だ。

「ふふふっ。ちょっと元気出たな。さ、帰ろう!」





帰ってから、玄関で封筒を開けて覗いてみた。うっ すらと見えてる?本当に何なの!?

自分の部屋に行ってカバンとか置いたら、封筒に厚みが出てきた気がする。

えいっ!と思い、封筒を逆さまにしてみると、出てきた!学校のパンフレットや、書類、入学案内や、 学校の説明。書類には制服は学校側で用意すると か、必要な物とかが書いてあった。

「はぁ・・・受験頑張ったのに・・・」

そういえば、受験の日の朝に変な夢を見たな・・・。
いつも夢なんてすぐに忘れちゃうのに、あの日の夢は、はっきりと覚えている。
目を覚ますと、白いのと黒いのがすぐ側にいて、しばらくして、それが白いヒツジと、黒いうさぎみたいだったけど、バクだと私は理解出来た。

ヒツジとバクは、私の手を引き背を押した。 抵抗出来るように優しく、でも強く・・・ 
しばらく歩いて行くと、白い柵のような塀に囲まれた畑みたいな場所が見えてきた。
入り口はないけど、柵が大きいのですり抜けて入った。なんだか、小人になって花壇にいるみたいだ。

ヒツジとバクは、そこでモヤになって消えていった。私は立ちくらみがして、倒れそうになるのを不思議な力で支えられた。 覚えているのはそこまでだ。 ちょっとドキドキしたのは本当だけど・・・



制服も学校の売店で買えるらしいし、とりあえず両親に相談しないと!

両親に相談すると、学園は結構有名で、お父さんは知り合いに卒業生がいる。お母さんは、お婆ちゃんが幼稚園から通っていたらしい。 あっさり寮暮らしもOKが出て、なんだか拍子抜けした。

そして、現在に至る・・・。確かに、学校の説明に もあったけど、私にはそんな超人的な能力はない!
「はぁ・・・」
またしても深いため息をついてしまう。
「あれ?ルピナス?」
「ナズナお兄ちゃん!?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

悪役令嬢は毒を食べた。

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ
恋愛
婚約者が本当に好きだった 悪役令嬢のその後

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

処理中です...