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ピンクの夢
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儀式当日、桜の開花を今か今かと待ち侘びていたが、今日はとても寒い。春への移り変わりは三寒四温だというけど、慌てて防寒着を着ける。ただ、天気はいい。冬の残りは、張り付いて離れないばんそうこうみたいだ。
今日は不思議な夢を見ました。ピンク色の夢なんです。岸の向こう側にお母様が見えて、でも、声は出せなくて。
こちらに気づいて、何か叫んでいるみたいでした。多分こっちに来ちゃだめって言ってました。でも、足は勝手に動き、ゆっくりと向こうに近づこうとすると、後ろから私を引っ張る手が空を切って倒れそうになったので、助けようと振り返ると、抱きつかれて、温かくなって瞳を閉じました。
そこで目が覚めたんです。
目覚めてからベッドの中であまりにもボーッとしすぎてしまい、ロジーに本気で心配されたので、思いつく限り話してみました。
「り、リーシュ様、これは私の友人の話なのですが、その友人にはご兄弟がおり、小さい頃に病気にかかり、手術の際、夢を見たそうです」
「夢を・・・?」
「川の向こうには亡くなったお爺さまがいらっしゃり、ご両親の声がして、振り替えったと。その後、ご兄弟は助かりました。お医者様が言うには振り替えらなかったら危なかったかもしれないと」
「三途の川の様な物でしょうか?」
「えぇ。その方、目覚めた時に、その夢をピンクの夢だと仰ったそうです」
「私も、危なかったんでしょうか・・・」
リーシュは怖くなってきた。一番心配なのは自分の身体の事だ。
「念のため、お医者に診てもらいましょう。ご安心下さい。リーシュ様はしっかり私が御守り致します」
「ありがとうございます。ロジー」
「でも、助けようとしてくれた方がいらっしゃるなんて、まるで予知夢の様ですね」
「予知夢?」
「未来に起きる事を夢で見るんです」
「・・・そうですね。ユージュアルなら助けてくれますね」
「・・・リーシュ様」
「はい?」
「先に言わせて頂きます。16歳のお誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。ロジー」
体調は問題ないと判断されたが、何日も前から準備をしてきた事だ。結局リーシュが皆に悪いと折れなかったので、午前から午後に時間をずらして短縮して行う事にした。
衣装に着替えたリーシュは鏡の前でジッと見直してみる。純白の衣装は確かにフリルやレース、リボンなど、通常のドレスに使われているような装飾がない。
小さい頃はとても憧れていたが、こうして見ると、どこか味気なく感じてしまう。
いつだったか彼に言われた。お前の方がこういうカラフルなの似合うと思うけど?と、その時は色違いで作ってみようと提案したが、ロジーに却下された。エプロンを着る機会は存在しません。と、
首を振って心の中にあるアルバムにしまう。
ネックレスや花飾り、冠などの装飾もなく、帽子を被る。この帽子もシスターのように、顔だけしか出ないタイプの物だ。
そういえば学校で、髪を梳かしてもらった事もあった。
何時何処でだったかも覚えていない程に緊張していた事と、時折触れる指先が暖かくて、熱くて、早く終わってほしいと思った反面、時間が止まればいいと初めて思った。
と、彼の事しか浮かんでいない事実に気付いて涙が滲む。
いけないメイクさんに今から来てもらうのに、こんな気持ちは持っていても誰も幸せにならない。ユージュアルに失礼だし、彼にも迷惑なだけだ。
第一、自分から言ったんだ。他の、他の事を考えてみよう!
そういえば、久しぶりに食事したお父様が動物を飼いたがっていた。なんでも、ネコの毛並みを触ってみたいって、私は犬の方が好きだったので、犬を推薦したが、やっぱり毛並みの話になった。フワフワの毛を触る機会があり、あんな子欲しいな~ってゆるゆるの顔で机に顎を乗せて、ロジーに注意されていたっけ。
クスリと笑った時、メイクさんがやってきた。
今日は不思議な夢を見ました。ピンク色の夢なんです。岸の向こう側にお母様が見えて、でも、声は出せなくて。
こちらに気づいて、何か叫んでいるみたいでした。多分こっちに来ちゃだめって言ってました。でも、足は勝手に動き、ゆっくりと向こうに近づこうとすると、後ろから私を引っ張る手が空を切って倒れそうになったので、助けようと振り返ると、抱きつかれて、温かくなって瞳を閉じました。
そこで目が覚めたんです。
目覚めてからベッドの中であまりにもボーッとしすぎてしまい、ロジーに本気で心配されたので、思いつく限り話してみました。
「り、リーシュ様、これは私の友人の話なのですが、その友人にはご兄弟がおり、小さい頃に病気にかかり、手術の際、夢を見たそうです」
「夢を・・・?」
「川の向こうには亡くなったお爺さまがいらっしゃり、ご両親の声がして、振り替えったと。その後、ご兄弟は助かりました。お医者様が言うには振り替えらなかったら危なかったかもしれないと」
「三途の川の様な物でしょうか?」
「えぇ。その方、目覚めた時に、その夢をピンクの夢だと仰ったそうです」
「私も、危なかったんでしょうか・・・」
リーシュは怖くなってきた。一番心配なのは自分の身体の事だ。
「念のため、お医者に診てもらいましょう。ご安心下さい。リーシュ様はしっかり私が御守り致します」
「ありがとうございます。ロジー」
「でも、助けようとしてくれた方がいらっしゃるなんて、まるで予知夢の様ですね」
「予知夢?」
「未来に起きる事を夢で見るんです」
「・・・そうですね。ユージュアルなら助けてくれますね」
「・・・リーシュ様」
「はい?」
「先に言わせて頂きます。16歳のお誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。ロジー」
体調は問題ないと判断されたが、何日も前から準備をしてきた事だ。結局リーシュが皆に悪いと折れなかったので、午前から午後に時間をずらして短縮して行う事にした。
衣装に着替えたリーシュは鏡の前でジッと見直してみる。純白の衣装は確かにフリルやレース、リボンなど、通常のドレスに使われているような装飾がない。
小さい頃はとても憧れていたが、こうして見ると、どこか味気なく感じてしまう。
いつだったか彼に言われた。お前の方がこういうカラフルなの似合うと思うけど?と、その時は色違いで作ってみようと提案したが、ロジーに却下された。エプロンを着る機会は存在しません。と、
首を振って心の中にあるアルバムにしまう。
ネックレスや花飾り、冠などの装飾もなく、帽子を被る。この帽子もシスターのように、顔だけしか出ないタイプの物だ。
そういえば学校で、髪を梳かしてもらった事もあった。
何時何処でだったかも覚えていない程に緊張していた事と、時折触れる指先が暖かくて、熱くて、早く終わってほしいと思った反面、時間が止まればいいと初めて思った。
と、彼の事しか浮かんでいない事実に気付いて涙が滲む。
いけないメイクさんに今から来てもらうのに、こんな気持ちは持っていても誰も幸せにならない。ユージュアルに失礼だし、彼にも迷惑なだけだ。
第一、自分から言ったんだ。他の、他の事を考えてみよう!
そういえば、久しぶりに食事したお父様が動物を飼いたがっていた。なんでも、ネコの毛並みを触ってみたいって、私は犬の方が好きだったので、犬を推薦したが、やっぱり毛並みの話になった。フワフワの毛を触る機会があり、あんな子欲しいな~ってゆるゆるの顔で机に顎を乗せて、ロジーに注意されていたっけ。
クスリと笑った時、メイクさんがやってきた。
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