お嬢様の胃袋掴んでしまいましたが!?

近藤蜜柑

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死装束

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卒業式の準備が近づいている。
その前日はリーシュの誕生日で、結婚式の日だ。
1週間ほど前の今日は、婚約パーティーと言う名のお披露目会と誕生日会だ。
式の当日は親族のみの厳かなものになるので、実質たくさんの人に祝われるのは今日のみらしい。
ホント大変だな。俺たちもリーシュに招かれて礼装を借り、パーティーを楽しんでいる。


今はロジーに頼まれて、特別にリーシュが当日に着る衣装を見せてくれるらしい。
今日もその姿で衣装を着て人前に出るらしいが、ガチガチに緊張しており、ロジー曰くほぐしてあげてほしいと頼まれて、屋敷にある二階の通路で待っていた。
少し行った開けたこの階から登場し、階段を降り、後姿を見せてそのまま去って見送られて終わるのがこの会のしきたりらしい。

今いるココは側面になるので余り目立たないが、広間が見渡せて、たくさんの人が招かれているのがわかる。その中には政界や芸能関係者も集まっていた。
「あ!あの人阿部野正だ!うわーカッコいい!背ー高い~!そっちは光田歌!?テレビで観たことある人ばっかり!!ち、ちょっと行ってサイン貰ってきてもいいかな?」
「ニトアやめろって!折角キレイにしてもらったのにミーハー丸出しだ!」
「へーじゃあ兄貴はいいんだ~。あっちにいる古垣由美の大ファンでしょ?」
「由美ちゃんに向かって指を刺すな!はぁ~ホントかわいいなぁ。・・・ちょ、いいから!背中押すな!!」
「なーんだ。緊張してただけじゃん」
「でもホントに凄いわね。ちょっと場違いな空気で、困っちゃうわ」
「・・・いや、エンス姉はさっきから色んな人に声かけられてるよね?名刺貰ったの見てたよ」
「あぁ、モデル事務所の?全部断ったわ。私、撮られる側よりも書いて勧める編集者になりたいのよ。もう進路も決まってるわ。大学に行って学びながらバイトして、海外のファッション誌で働くのが夢なのよ」
「へー。しっかり夢があるっていいなぁ~。わたしまだ何も決まらないよ」
「ニトアちゃんはまだ中学生でしょ?・・・そうねー、まずはやりたい事を決めるのがいいわ。好きなものを書き出してみるのもいいわね」
「へー!・・・兄貴は何か考えてるの?」
「オレは整備士。車に飛行機、電車もいいなぁ~」
「好きだねぇ・・・リーシュの家の車にも興味津々だったし」
「それが原動力だ!」
「・・・ふーん。シャズ兄は?やっぱりコック?」
「調理師って言えよ」
ビトリーが呆れながら突っ込む。
「・・・別に。俺も何も考えてない」
「そう?お屋敷で働いてる時は随分と楽しそうに、あ・・・」
「・・・」
「・・・ごめん」
シャズ兄は、リーシュの所から戻ってきてから変だ。ちょっとした事で不機嫌になったり。リーシュの事を話題に出すのもタブーになってしまってる。
やっぱり、シャズ兄はリーシュの事・・・
「別に」
「あ、ちょっと!どこ行くの!?」
必死に止める。こんな悲しい話嫌だよ・・・
「帰る」
「何をワガママ言ってんだ!」
「困った人ね。リーシュちゃんに会えるのは限られているんだから、空気を読んでほしいわ」
ビトリーやエンスも止めるが、
「・・・空気は吸うものです」
「あらあら、逆戻りしたわね。いえ、前より酷いかしら」
気持ちはわからないでもないけど、わたし達にはもう何も出来ないわ。辛いのはシャズだけじゃないのに・・・

「待てってもうすぐだから!」
「もう!ごめんって言ってるじゃん!シャズ兄ひどい!」
「・・・っ!」
その時、死角になっている角から声が聞こえてきた。
ドレスに身を包むリーシュだ。
「みなさん!お待たせしてしまってすみません」
「リーシュ、花嫁さんだぁ!」
「純白だなあ!」
「凄く綺麗だわ」
「ありがとうございます」
「・・・あぁ、真っ白で死装束みたいだ」
「・・・!」
瞬間場が凍りつく。

「うわっ!おま、それは・・・!」
「シャズ兄さいてー。男の嫉妬は醜いって言うんだからねー!」
アトアはリーシュにくっついてアッカンベーをしている。
「リーシュ、気にしなくていいのよ?ただ拗ねてるだけだから」
「はぁ?」
まだ何かシャズは言いたそうにしていた。

「・・・大丈夫です。シャズさんは真っ白だって褒めているんですよ。ワガママ言ってごめんなさい。もう大丈夫です。私、そろそろ向かいますね」
「あっ!待ってよリーシュ!わたし裾持ってあげる!引きずっちゃうよ!」
「素直にやりたいって言えよ」
「うるさいバカ兄貴!行こっリーシュ!」
「はい。ありがとうございます」
ニトアはリーシュのドレスの裾を持ち、楽しそうに角を曲がっていった。
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