お嬢様の胃袋掴んでしまいましたが!?

近藤蜜柑

文字の大きさ
上 下
32 / 42

マリッジブルー

しおりを挟む
次に目を覚ますと、おやっさんのドアップだった。
「うわあっ!ああっ!な、何してんだよおやっさん!ってかいつ帰って来た!!」
俺はおやっさんを驚きのあまり蹴飛ばしていた。
「痛ってぇな!今朝だよけ、さ!!全く!!たしかに迷惑かけろとは言ったが、心配かけろなんて言ってねーぞ!!!」
「うるさい!」
「ったく!お前は本当に最近無茶ばっかりして!して・・・う・・・」
「あーもう泣くなよおやっさん」
「料理長だ!・・・いや、おいらはおやっさんだ」
「え?」
珍しい。おやっさんが凹んでる。
「おいらはダメなおやっさんだ・・・。お前、2週間も眠りこけてるって聞くし、ちっとも目覚めねーし、見ろ!年度が変わっちまっただろうが!」
本当だ。聖夜の終業式は明日だったのに、いつの間にかカレンダーが捲られて年度が変わっている。
「あっそ」
「あっそって何だ!!ったくこれから忙しくなるってのに」
「忙しくなる?」
「あぁ、リーシュ様が結婚すんだ」
「は?誰と?」
「ユージュアル様に決まってんだろ?ま、お前も頑張ったよ。今日は飲むぞ!」
「嫌、俺、未成年だし」
「俺が飲む。お前は指咥えて見つめてろ」
「はああ?」
「あ、ツマミたの
ゴン!
「痛っー!何すんだよロジー!」
「全く。いじけて病人を働かせようとしないで下さい」
「うるせー!!コレが飲まずにいられるか!!」
「旦那様の説得はどうしたんですか?」
「・・・説得はした」
「一緒にお戻りじゃないんですか?」
「あぁ。先に帰れって言われちまってさー!知ってるだろ?旦那様は気まぐれなんだよ!きっとその内帰ってくるって、な!!ぁ?」
「一緒に来るのを見張るべきかと思われますよ?ユージュアル様がシャズさんを認めていなかったら今すぐにでも追い出しておりました」
「ひっ!」
ロジーがニッコリ笑いながら眼鏡を直す。お、怒ってる・・・

「し、シャズ?お前ついに認められたのか!いや~良かったよか
「良くありません。リーシュ様はここの所寝たきりです」
「え!?」
寝たきり!?そんなに体調崩しちまったのか!?

「ご本人はマリッジブルーなだけですと笑っておられますが、今回のような心境は奥様が亡くなられた直後によく似ています」
「でもよ。あん時はこんなに長くなかったろ?」
「はい。あの時は1週間程で気丈に振る舞っておいででした。しかし、今回はもう2週間近くになります」
「前だって今回だって強がっている事には変わりないんじゃねーの?」
ロジーは首を横に振る。
「いいえ。たしかにお寂しかったでしょうが、それでも屋敷中で皆一緒に泣きましたら、幾分か落ち着かれました」
「や、屋敷中・・・?」
凄い想像しか出来ない。
「いや~アレは凄かったぞ!」
「何熱くなってんだよおやっさん」
「料理長だ!」
「どっちだよ!?」

「・・・しかし、今回は事情が違います」
「じゃあ何か作るか!メシ食ってねーんだろ?」
「それが・・・」
ロジーは俯く。
「どした?」
「シャズさんの作ったものを受け付けないのです」
「どういう事だ?」
「触れただけで泣いてしまわれます」
「泣く?」
「はい。フォークやスプーンで触れただけで涙が止まらなくなってしまわれます。何故かは全く不明で、シャズさんが調理した物のみを拒み、他の者が作ったものは召し上がれます」
本能で理解しているのか、身体が拒否反応でもしてるのか?

「そっか。・・・で、俺クビ?」
「それはこれから検討します。しばらくはお屋敷の調理場に立たずに、執事やメイドのお手伝いをお願いします。リーシュ様とは極力距離をとってください」
「様子見?」
「はい。お辛いかもしれませんが、私共にとって一番大切なのは主人です。言うまでもなく旦那様とリーシュ様です」
「・・・だろうな」
「お辛くないんですか?こちらからしたら振り回しているようなものです」
「いつもだろ」
クスッ
「何?」
「いえ、怒ると口数が減ると聞いておりましてクスクス」
「・・・別に」
「では、リーシュ様のために私は、私の出来る事をさせていただきます。では、お知り合いのみなさんを招きましょうか」
「はぁ?」
「辛い事なら誰かに話した方がいいんです!しかし、私達使用人よりも仲良くされている方の方がよろしいでしょう。お友達をお呼びしましょう!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...