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憧れの人

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ふと気がつくと、真っ白な世界だ。
俺はベッドに寝かされているようでふわふわしている。この空間には生気を感じない。

きっと夢だろうと、再度眠りにつこうとしたら、誰かの気配を感じた。

頭をそっと触ったかと思えば、ワシャワシャ犬のように撫でられ、手を振り払おうと頭を振るいながらいやいや目を開けると、いきなり顔のドアップだった。
「うわあ!!?何してんだよおっさん!」
「あ、起きた?おっさんはヒドイなー!はじめて言われた~」
カラカラと笑っているおっさんはたしかにおっさんと言えるのだろうが、柔らかい物腰に屈託の無い笑み。スタイルや体格も良く、肩までの手入れの行き届いたサラサラヘアー。所謂イケメンと呼べる端正な顔立ち。
若い頃も今もモテる雰囲気だ。カリスマ性の高い雰囲気がして年齢がわかりにくい
「なぁ、もう一回触らせろ!」
イケメンなおっさんはまた手を伸ばしてきた。逃げられなくてワシャワシャされる。
「うわっ!やめろって!」
「スゲ~なぁ。ボサボサに見えてふわふわだー。いいなぁ~犬っぽい!飼いた~い!」
「何なんだよアンタ!!」
子供かよ!!

「んー、でもキミは猫っぽいね。一匹で行動したがるけど、いろんな事ほっとけない野良猫のトップみたい」
纏う空気はゆるゆるなのに、見透かされている。

悔し紛れに言い返す。
「・・・。おっさんは犬だな。大型犬!」
「あはは!奥さんに昔、同じ事言われたよ!」
奥さん?・・・誰かに似ている気がする。雰囲気と笑顔が・・・
「でも、キミも思い切ったことしたね~?危ないからもうあんな事しちゃダメだよ。キミが傷つくことで悲しむ人もいるんだからね」

探そうとして、やめた。本気で心配してくれている事がわかって嬉しくなり、涙が滲み、見られたくなくて下を向いた。

「・・・ごめんなさい・・・」
頭にポンと手を置かれ、あまりの暖かさに縋りつき、子供みたいに泣きじゃくりたくなって素直に謝ってしまった。

この人の側は孤児院の園長みたいに安心できる。信頼できる人だと素直に言う事が聞ける。おもわず尊敬の眼差しで見ていると、
「うわわっ!いてーって!」
「うわーふわふわ!ふわっふわっ!」
また頭を捏ねくり回される。
前言撤回する。尊敬できるけど、誰よりも子供っぽい。
親に舐め回される動物の気分だ。でも、振り払いたくない。心地よくて、あったかい。段々優しくなっていく手つきに妙に安心して眠くなってきた。
こんな父親が欲しかった。俺もこの人みたいになりたいと頭の片隅で思いながら目を閉じた。

でも、ありがとう。守ってくれて

優しく紡がれていく言ノ葉を子守唄に視界は揺らいでいった。
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