お嬢様の胃袋掴んでしまいましたが!?

近藤蜜柑

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仲良しさん

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見たくなかった。
独り占めしたかった。
側にいてほしかった。

いつものように登校しようとすると、朝からシャズさんを見かけない事に気づいた。
ロジーに聞いてみると、今日から登校を別にする。とシャズさんから申し出があったらしく、もう屋敷を出ていると言った。
とても寂しく思ったけど、今回が初めての事ではない。仲良くなったお友達、メイドさん、お隣さん、みんなそうだった。ある程度仲良くなれると釘を刺される。

お友達は選びなさい
この子と仲良くしなさい
この子はダメ
恐れ多いです
立ち場をお考え下さい
住む世界が違いすぎます

わかっている。ロジーは私を心配してくれているだけで、みんなが私を嫌いになった訳では無いと。
でも、どうして?私はみんなみたいに普通に友達を作れないの?
みんなが私から一歩離れたところで接してくる。
みんなは手を伸ばせば触れる距離で、言いたいこと言って、ケンカをして、と思ったら次の瞬間には笑い合っている。それが羨ましかった。
私は、いつも孤独だった。


そんな時だ。彼と出会ったのは。
薄ぼんやりした世界に強い光が刺した。私はこれがそうなんだと幸せを噛み締めていた。

でも思い知る。私には許されないのだと。期待した自分がいけないのだと。
そう理解しながら車から窓の外を見た。いつもはカーテンがかかっているそれを私が開けたのは本当に偶然だった。
「・・・・・・!」
でも、見てしまった。楽しそうに笑いながら登校するシャズさんと女の人を
間が悪すぎる。そう思ってカーテンをそっと閉めた。
視界が悪くなって眼を擦った。ロジーが私の変化に気づいたのか、そしていつものように言うの
リーシュ様、お気を確かに!って!
でも、
「リーシュ様、どうぞお使い下さい」
ロジーは今回はそう言って、ハンカチを渡してきた。
私は、もっともっと視界が悪くなった。
休んでもいいとロジーは言ってくれたけど、断った。
少しでも側にいたいと思ったから。

でも、こんな顔は見られたくない。誰にも。私は学校に着くなり校舎に駆け込んだ。急いで靴を履き替えて、そのまま階段をずっと上り続けた。このまま教室に入る事なんてできない。保健室に行って先生に心配をかけることも出来ない。とりあえず1人になりたくて、私は屋上を目指した。

屋上に続く少し前の階段から、立ち入り禁止の札と鎖があった。
大抵の学校が行けないように、この学校も屋上は立ち入り禁止だ。初めて知った時はがっくりと肩を落としたというのに、気が動転していて気づかなかった。
どうしようもなくなってペタンと、札の前にある階段の踊り場でしゃがみ込んでしまった。
息はとっくに切れている。視界はずっと悪いままだ。どうしたらいいのかわからない。どうしてこんな気持ちになるのかもかわからない。

その時だ
「ん?リーシュか?どうしたんだよそんなトコで。予鈴鳴ってんぞ?」
「ビトリーさん?」
鎖の奥にある屋上へのドアの前にビトリーがいたらしい。死角になっていたので気付かなかった。
「お前、なに泣いてんだ?」
「泣いてる?あ、ホントです」
「オイオイ大丈夫か?」
ビトリーに指摘されて頬を触ると濡れていた。そこまでしてようやく視界が悪いのは涙が出ているせいだと分かった。自覚したらもっと涙が溢れてきて、声を殺して、気の済むまで泣き続けた。

リーシュが落ち着いたところを見計らってビトリーは声をかけた。
「・・・で、一体どうしたんだよ?」
「・・・はい。シャズさんが、今朝は先に家を出たんです」
「んで?」
「それだけでも悲しいのに。私、登校中にシャズさんが綺麗な女の人と楽しそうに話しながら登校しているのを見てしまいました」
「・・・んで?」
「あ、えっと、それで終わりです」
「え?何かイチャイチャしてたとかでもないのか?」
「い、いちゃ、いちゃ?」
「・・・えーっと、ぎゅーっと抱きしめてたーとか、ぢゅーっとしてたとかは」
「ぎゅ?ぢゅ?別に?」
「それでそんなに泣いてんのか!?」
「だって、すっごく綺麗で、カッコ良かったんです!・・・シャズさんの好みはああいう人なんでしょうか?」
「・・・シャズと楽しく話せる綺麗でカッコ良い人なぁ、あの人かなって思い当たる人はいるけど」
「えっと、この学校の制服着てました」
「あー、セクシー系?」
「は、はい。スタイル凄かったです!」
「やっぱりか。それ、オレらの幼なじみの先輩だよ」
「オレも、ニトアも、勿論シャズもすげー世話になってる」
「あの人が、エンス先輩・・・」
「そ」
「あの人が、シャズさんの初恋の人・・・」
「はぁ!?何で知ってんだよ!」
「ロジーが教えてくれました」
「あ、そなの」
ここまで来ると、個人情報とか大丈夫なのか?と思ってしまう。何だかオレらの過去を全て調べあげられているようだが・・・。ビトリーはもう考えるのをやめた。
「あの、シャズさんはエンス先輩と、とっても仲良しさんなんですね」
リーシュもいい奴だとわかるけど、世間知らずというか、天然というか。ちょっとズレてる。
「仲良しさんて・・・。まぁ、先輩は一緒にバイトしてたしな~仲間、かな」
仲間。・・・あんまり仲良しさんだと、モヤモヤします」
「え?」
オレは1つの答えを見いだす。一緒にいるだけであそこまで泣き出すなんて、価値観の違いから来ている単なる独占欲だと思っていたけど、もしかして
「あんまり仲良ししてほしくないです・・・」
「あははっ!そっか!話してただけで泣くって、妬いてんのか?」
「焼く?どういう事ですか?」
「嫉妬ってヤツ」
「・・・嫉妬?」
リーシュの思考がストップしたようだ。まるで辞書で意味を調べる子供みたいに。しばらくすると、項目を見つけ、意味を理解したのか真っ青な顔で立ち上がった。
「何だか私、凄く嫌な子みたいです!忘れて下さい!!」
走り去ったリーシュの背中を見つめながら、ビトリーは
お嬢様の初恋か?と苦笑いした。
幼馴染は人嫌いで、誤解されやすい性格をしている。リーシュみたいなタイプとは正反対の性格だ。面白おかしく見守ろうとビトリーはその場を後にした。
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