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妹ペットと盗賊
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自転車で登校中、前を歩く背中を見つけて声をかけた。
「先輩!はよっす!」
「あら、シャズ君おはよう。今日はあの大きな車じゃないのね」
「いやー俺にはムズムズします。似合わない!」
言いながら俺は自転車を降りて、歩きながら押して歩く。
「あらそう?お姫様を守る騎士の気分じゃなかつたの?」
「いや、血統書の付いたペットの散歩ですね」
「うふふ。そうね。シャズ君は騎士よりも王子様よりも義賊とか盗賊っぽいわね」
「あ、盗賊はしっくりきます!」
「うふふふふ。お姫様を拐ってきたはいいものの、結局ほだされて振り回されていそうだわ」
「そ、そんな訳!・・・・・・」
言葉に詰まる。想像したら否定出来ないと思ってしまう。
「ふふ。で、今日お姫様は?」
先輩は俺が言葉に詰まると話題を変えた。やっぱり大人だ。1つしか違わないのが嘘のように、子供扱いされる事は少なくない。
「・・・あんまり関わらないようにしたんすよ。やっぱり俺、ムズムズして落ち着かないんです」
「そう。いい子らしいわね。ビトリー君が言ってたわ、ニトアちゃんは力説していたし」
「ま、悪い奴じゃないっす」
「うふふ」
「どうしたんですか?」
「そうとう気に入ってるのね。ちょっと妬けちゃうわ」
「いや、だから、ペットとか妹みたいなもんですってば!」
「人間嫌いで人間不信のあなたが家族みたいなものだ~って存在を許すなんて大きな一歩よ。なるべく関わらないようにしていた昔とは大違いだわ」
「先輩・・・」
「で、今日は、一緒じゃないの?」
「ゔっ」
理由を話してみて。悩んでるんでしょう?とでも言いたげな瞳だ。
「はぐらかしてもムダよ」
白旗を挙げるしかない。先輩に隠し事は通じない。敵に回すのはとても厄介だ。
「・・・昨日、執事のおっさんに近すぎだって釘を刺されたんです。今は治療の時間にすぎない。学生時代の思い出にしろって・・・」
「そう」
「元々住む世界が違う奴だし!」
「そうね」
「それで、心配されるのも面倒だし、アイツも元気になってきたし、ちょっと距離を置くかって・・・」
「いつまでも一緒にはいられないって事ね」
「そうっすね」
「貴女はそれでいいのかしら?」
「確かに寂しくはなるかもですけど、娘の成長を見守る父親の気分ですよ」
「あらそう。・・・そういえば」
「え?」
「聞いた話だけど、子供が出来ると母親は息子にかかりきりになるから、父親はやきもち焼くそうよ」
「は、はぁ・・・?」
先輩が何故いきなりそんな話をし出したのかわからない。
「父親も娘をお嫁さんにしたくない。なんて、まるで恋しているみたいね」
「・・・。俺はロリコンじゃありませんよ」
呆れながら言う。先輩どうしたんだ?
「彼女もよ。確かに幼く見えるけど、とてもしっかりしてるわ。彼女をとりまく環境が幼くさせてるだけよ」
「・・・・・・」
「あら、困ったわ。ちょっとイジメすぎたかしらね」
先輩は楽しそうに微笑んでいる。
「別に、そんな事・・・」
「それじゃ、今のお仕事頑張って」
「は、ハイ!」
いつの間にか駐輪場近くまで着いていて、俺は先輩の背中を見送るしか出来なかった。全て見透かされているようで、流石としか言えない。
ため息をついて、そのまま自転車を押していった。
校舎に入る直前、見慣れた後姿を見つけた。
肩にかかりかける手入れの行き届いたセミロングのサラサラ髪、頭に添えたリボンのカチューシャ。育ちの良さがわかる姿勢の良さと、何処かいつもより危なっかしく儚い雰囲気を持つ少女が慌ただしく駆け抜けていく。
こんなに遠く離れていてもわかる。いや、わかるようになってしまった。でも、距離を置くと決めた以上、跡は追わない。後ろ髪を引かれているようで気持ちが悪い。
「はぁ~、何でこんなに心配してるんだろうなぁ」
「先輩!はよっす!」
「あら、シャズ君おはよう。今日はあの大きな車じゃないのね」
「いやー俺にはムズムズします。似合わない!」
言いながら俺は自転車を降りて、歩きながら押して歩く。
「あらそう?お姫様を守る騎士の気分じゃなかつたの?」
「いや、血統書の付いたペットの散歩ですね」
「うふふ。そうね。シャズ君は騎士よりも王子様よりも義賊とか盗賊っぽいわね」
「あ、盗賊はしっくりきます!」
「うふふふふ。お姫様を拐ってきたはいいものの、結局ほだされて振り回されていそうだわ」
「そ、そんな訳!・・・・・・」
言葉に詰まる。想像したら否定出来ないと思ってしまう。
「ふふ。で、今日お姫様は?」
先輩は俺が言葉に詰まると話題を変えた。やっぱり大人だ。1つしか違わないのが嘘のように、子供扱いされる事は少なくない。
「・・・あんまり関わらないようにしたんすよ。やっぱり俺、ムズムズして落ち着かないんです」
「そう。いい子らしいわね。ビトリー君が言ってたわ、ニトアちゃんは力説していたし」
「ま、悪い奴じゃないっす」
「うふふ」
「どうしたんですか?」
「そうとう気に入ってるのね。ちょっと妬けちゃうわ」
「いや、だから、ペットとか妹みたいなもんですってば!」
「人間嫌いで人間不信のあなたが家族みたいなものだ~って存在を許すなんて大きな一歩よ。なるべく関わらないようにしていた昔とは大違いだわ」
「先輩・・・」
「で、今日は、一緒じゃないの?」
「ゔっ」
理由を話してみて。悩んでるんでしょう?とでも言いたげな瞳だ。
「はぐらかしてもムダよ」
白旗を挙げるしかない。先輩に隠し事は通じない。敵に回すのはとても厄介だ。
「・・・昨日、執事のおっさんに近すぎだって釘を刺されたんです。今は治療の時間にすぎない。学生時代の思い出にしろって・・・」
「そう」
「元々住む世界が違う奴だし!」
「そうね」
「それで、心配されるのも面倒だし、アイツも元気になってきたし、ちょっと距離を置くかって・・・」
「いつまでも一緒にはいられないって事ね」
「そうっすね」
「貴女はそれでいいのかしら?」
「確かに寂しくはなるかもですけど、娘の成長を見守る父親の気分ですよ」
「あらそう。・・・そういえば」
「え?」
「聞いた話だけど、子供が出来ると母親は息子にかかりきりになるから、父親はやきもち焼くそうよ」
「は、はぁ・・・?」
先輩が何故いきなりそんな話をし出したのかわからない。
「父親も娘をお嫁さんにしたくない。なんて、まるで恋しているみたいね」
「・・・。俺はロリコンじゃありませんよ」
呆れながら言う。先輩どうしたんだ?
「彼女もよ。確かに幼く見えるけど、とてもしっかりしてるわ。彼女をとりまく環境が幼くさせてるだけよ」
「・・・・・・」
「あら、困ったわ。ちょっとイジメすぎたかしらね」
先輩は楽しそうに微笑んでいる。
「別に、そんな事・・・」
「それじゃ、今のお仕事頑張って」
「は、ハイ!」
いつの間にか駐輪場近くまで着いていて、俺は先輩の背中を見送るしか出来なかった。全て見透かされているようで、流石としか言えない。
ため息をついて、そのまま自転車を押していった。
校舎に入る直前、見慣れた後姿を見つけた。
肩にかかりかける手入れの行き届いたセミロングのサラサラ髪、頭に添えたリボンのカチューシャ。育ちの良さがわかる姿勢の良さと、何処かいつもより危なっかしく儚い雰囲気を持つ少女が慌ただしく駆け抜けていく。
こんなに遠く離れていてもわかる。いや、わかるようになってしまった。でも、距離を置くと決めた以上、跡は追わない。後ろ髪を引かれているようで気持ちが悪い。
「はぁ~、何でこんなに心配してるんだろうなぁ」
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