お嬢様の胃袋掴んでしまいましたが!?

近藤蜜柑

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突然の不審者

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次の日、今日は土曜日。学校も無い。流石に今日は休みにした。
明日からまたバイト三昧なので今日はぐっすりと眠る。
昼近くに家のインターフォンが鳴った。もう少しで起きようとしていたところを起こされて不機嫌になる。
数秒事に鳴るインターフォンは鳴り止みそうにないので俺はゆっくり起き出した。
「ビトリーか?今日はゆっくり寝るっつったろ!」
俺の住んでるオンボロアパートにはモニターなんてもの存在しない。俺は悪態をつきながら玄関に向かい、覗き穴を確認した。
黒いスーツをきたサングラスのいかつい男が立っていた。それも数人。俺、捕まるのか!?見に覚えがない。
「シャズさん様のお宅ですよね?お願いしたい事がございます。開けていただいてよろしいでしょうか?」
何だかおかしな呼び方だが、名前まで知られているらしい。ヤベーな
「シャズ君、急ぎの用らしいんだ。開けるよ?」
大家さん!?
声が出そうになったのを慌てて止める。マズイ大家さんは合鍵を持っている。いったい何なんだよ!俺はベランダに向かい、外から屋根づたいに観察しようとした。
しかし、ベランダから見えたのは凄い人だかりだ。オンボロアパートの近くにスゲー車が止まっている。
「あーっシャズ兄ちゃん見つけた!」
ヤベ!近所のガキに見つかった。
俺は屋根に登って逃げようとしたが、黒服スーツのサングラスの1人が俺に向かって叫んだ
「家でコックとして働いて下さい!!」
コック!?捕まるってわけじゃなさそうだな?
ま、とりあえず話を聞いてみる事にし、ドアに向かった。
既に大家さんがカギを開けて入ってきていた。
さっき叫んでた黒服スーツのサングラスが冷や汗をかきながら俺に詰め寄ってきた。
「君がシャズさん様ですね?」
「・・・」
俺はそっぽを向いて答えない。わけわからんヤツに名乗りたくない
「はい。彼がシャズ君です」
大家さん!!俺は心の中でツッコミを入れる。
「単刀直入に申します。屋敷でコックとして働いて下さい!」
「やだ」
「く、詳しく説明させて頂きたいんで
「だから嫌だっつってんだろ」
「わかりました。では独り言だと思って聞いて下さい」
「人ん家に上がり込んで独り言かよ。不審人物決定だな」
「・・・私の名前はロジー。執事をしております」
俺の皮肉を無視し、そう言ってソイツはサングラスを取って眼鏡をかけた。意味わからん。何だかマンガとかでよく見る執事そのものだ。細めの眼鏡にスラっとした長身。ただ、何処となくイジりたくなる雰囲気がある。
「私どものお嬢様はとても小食でお身体が弱いです」
お嬢様ってのはみんな小食なのか?と思ったけど放っておく。俺はキッチンに行って水を飲みに行く。
ロジーとかいう執事は俺にピッタリくっついてくる。まるで金魚のフンだ。
「私どもの屋敷にも、もちろんコックはおりますが、お嬢様は美味しいと感じられておりません。このままでは近い将来、寝たきりになってしまいます」
俺は無視して顔を洗う。
「そんなお嬢様から昨日とても驚く話を伺いました。お嬢様はコックの作ったお弁当を隠して学園に向かってしまっておいででした」
服を着替える。何処かで聞いた話だ。
「そんなお嬢様が久しぶりに見る柔らかい春の日差しのような笑顔で、ある方からお弁当を貰った。とても美味しくて完食してしまったとおっしゃいました」
「ん?」
「今、反応しましたね。見に覚えがおありですか?」
「なぁ、そのお嬢様の名前って?」
「リーシュグリス様です。リーシュ様と呼ぶ事を願っておいでです」
やっぱりアイツかー!
俺は内心叫び頭を抱える。本気だったのかよ
「シャズさん様にはお屋敷で住み込みのコックとして働いていただきたいのです」
マジだったのかよー!
俺は内心でまた叫ぶ
「お給料は日給で、こちらでどうでしょうか?」
ロジーはポケットから契約書を出し、素早く書き込むと俺に見せた。
俺はロジーをジッと見た。
「マジで?」
「マ?マジ?」
「あー、ウソじゃねーよな?」
「私が嘘をつくのは旦那様とお嬢様の為に、お二人にのみにしかつきません」
「わかった。引き受ける!で、いつからだ?俺のバイト先にも話さねーと」
「シャズさん様の現在のアルバイト先は、駅前にある自営業のカラオケ喫茶店と、この近くのコンビニエンスストア。他にも新聞配達などの臨時ですよね?でしたら既にお話しました。皆さん寂しそうにしておりましたが、代わりの方を紹介すると快くご了承いただきました」
「マジかよ!つか辞めるって既に言ったのか!?」
「どちらにしてもご連絡いたします。と申し上げただけです」
「あっそ」
「頼りにされているのですね」
ロジーは顔に似合わずニッコリと微笑んだ。
「さ、今から支度なさって下さい。運べない荷物がありましたら丁度いいところに大家さんがいますし」
お前が呼んだんだろ。ってか即刻かよ。
「わかった」
俺は契約書にサインして、ロジーに渡す。
それから、旅行用に使うボストンバッグを引っ張り出してきた。
しばらくして、俺はボストンバッグを一つ抱えて準備ができたとロジーに告げた。
ロジーは目を丸くして俺を見つめた。
「それだけですか?」
「あぁ。他には何もない」
元々が物は持たない主義だ。家具とかは前にいた人のお古だし。執着心が無い
「かしこまりました。お荷物お持ち致します」
「いや、別に逃げたりしないって」
「いえ、そういう事では・・・」
「いーから、とっとと行こうぜ」
俺はロジー達が乗ってきた白い高級車に乗り込む。こういうは黒だと思って見ているとロジーが旦那様の好みだと答えた
「で、アイツはもう昼飯食ったの?」
「アイツ?」
「あぁ、リーシュ?は昼飯食ったのって聞いてんだよ」
「今後はお嬢様、もしくはリーシュ様とお呼び下さい!貴方様の雇い主ですよ!」
俺にとっては知り合いの後輩でしかなかったのになぁ~。ま、いっか。
「で、リーシュおじょーさまは昼飯食ったの?」
俺は投げやりに聞いた
「・・・お嬢様は誰が作った料理にも手をつけたがりません。元々小食なお方です。貴方のお弁当を口にしたのさえ、私も未だに信じられません」
そう言って睨んできた。
甘えてワガママ言ってるだけじゃないのか?
「俺にはアイツが小食だという事の方が信じられないけど」
「でしたらお腹の音が鳴ったらある程度は口にします!無理して食べると戻してしまう事もあるのです」
「それは拒食症ってヤツか?」
「はい。奥様がお亡くなりになられた頃からですので、おそらく、ストレスから来ていると思います。何を食べても美味しくない、と。お医者様に貴方の話をしてみると、是非その人にお願いしてはと」
「ふーん」
「それに、お嬢様は貴方をとても気に入っておいでです」
「あっそ」
昨日の今日で随分と話が進んでる。
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