1 / 42
若葉風
しおりを挟む
女生徒が1人でプリントを運んでいる。保険委員の初仕事を昼休み前に先生に頼まれたのだ。クラス分の1人1枚なので、対して量は無い。が、何故か男子生徒が手伝うと言ってきたが、他の女子生徒たちに怒られていた。
彼女は丁寧にお断りした。
普通は用事を言いつけられたら嫌がるものだが、プリントを運ぶ彼女の心は明るい日差しを浴び、風に舞う今日の若葉のように軽い。それもそのはず
「エヘヘ、私でも誰かの役に立つんですね!用事を言われたのって初めてです!!えっと、この下が保健室の階で、きゃっっ!!」
階段の踊り場の開いていた窓から来た若葉風によってプリントが散らばって、近くの廊下に落ちていく。
「いっけない!」
彼女はプリントの後を追った。
幸い風はそこまで強くなく、数枚が飛んだだけだった。
「えっとえっと!」
彼女がプリントを拾っていると、近くにいた男子生徒が手伝ってくれた。どうやら上級生らしい。つり目で、くるくるしているヘアスタイルがとても印象に残る。
「大丈夫か?はい」
「あ、ありがとうございます!」
「えっと、数足りてる?」
「えっと・・・あれ?一枚無いです!」
「えぇ!?・・・ん?オイオイシャズ!!お前の足元にあるじゃねーかよ!拾ってやれって」
「あぁ、コレな。んっ」
呼ばれた彼は足元にあった最後の一枚を拾って動かずに手だけを此方に向けた。腕さえ伸ばしていない。こちらに来いという意味らしい。眠そうで愛想がなく、一匹狼のひねくれ者の雰囲気がしている。
「お前なぁ、ちょっとは動こうと
「あっ!ありがとうございます!!」
彼女は素直にシャズと呼ばれた彼の元へ向かってプリントを受け取った。
「本当にありがとうございました。これで全部です」
「行くぞビトリー」
丁寧にお礼を言う彼女を無視し、シャズと呼ばれた彼は素っ気なくスタスタ歩いて行ってしまった。
「・・・悪りぃな。アイツは誰にでもあぁだから、気にしないで」
「大丈夫です。ありがとうございました」
ビトリーと呼ばれた彼は、彼女を励ましたが、それでも彼女の心は落ち込んでいた。
嫌われてしまったんでしょうか?
「お前ホント愛想ねーなー。あんな可愛いくていい子の後輩に」
「別に、困る事無いし。ってか眠すぎて顔もぼんやりしてた」
「お前また深夜バイト行ったな?」
「ああ、夜のが時給いーし」
「見つかったらまた怒られるだろ?」
「親戚の姉さんの手伝いって程で先輩と合わせてるから。全くの嘘でもないし、成績さえ赤点とらなければ?イヤしかし・・・ってセンセは迷ってるけど」
「あっそ。程々にな」
「でも、6連勤は流石に堪えるわー」
「お前、夕方もバイトしてるだろ?」
「ああ。あと今日は朝に新聞配った」
「苦学生だなぁ、お前。それこそ住み込みで働けたらいいのにな。今年の1年で入ったお嬢様のとことか」
「お嬢様?あり得ない。金持ちの子供はみんな働くのは社会勉強。人に迷惑かけてる自覚無いし、悪びれる事も無いってヤツが多い」
「多いだけだろ?否定はしないけど」
そう言ってビトリーは頭をかいた。彼にも思うところがある。
「保健室で昼飯食って、寝てから帰るわ~」
「カバン持って行くとサボリって一発でバレないか?」
「取りにくるヤツを苦労させない為の配慮だよ」
「ほどほどにしろよ~」
「じゃーな」
俺はビトリーに後ろ向きに手を振りながらカバンを持ち保健室に向かった。
彼女は丁寧にお断りした。
普通は用事を言いつけられたら嫌がるものだが、プリントを運ぶ彼女の心は明るい日差しを浴び、風に舞う今日の若葉のように軽い。それもそのはず
「エヘヘ、私でも誰かの役に立つんですね!用事を言われたのって初めてです!!えっと、この下が保健室の階で、きゃっっ!!」
階段の踊り場の開いていた窓から来た若葉風によってプリントが散らばって、近くの廊下に落ちていく。
「いっけない!」
彼女はプリントの後を追った。
幸い風はそこまで強くなく、数枚が飛んだだけだった。
「えっとえっと!」
彼女がプリントを拾っていると、近くにいた男子生徒が手伝ってくれた。どうやら上級生らしい。つり目で、くるくるしているヘアスタイルがとても印象に残る。
「大丈夫か?はい」
「あ、ありがとうございます!」
「えっと、数足りてる?」
「えっと・・・あれ?一枚無いです!」
「えぇ!?・・・ん?オイオイシャズ!!お前の足元にあるじゃねーかよ!拾ってやれって」
「あぁ、コレな。んっ」
呼ばれた彼は足元にあった最後の一枚を拾って動かずに手だけを此方に向けた。腕さえ伸ばしていない。こちらに来いという意味らしい。眠そうで愛想がなく、一匹狼のひねくれ者の雰囲気がしている。
「お前なぁ、ちょっとは動こうと
「あっ!ありがとうございます!!」
彼女は素直にシャズと呼ばれた彼の元へ向かってプリントを受け取った。
「本当にありがとうございました。これで全部です」
「行くぞビトリー」
丁寧にお礼を言う彼女を無視し、シャズと呼ばれた彼は素っ気なくスタスタ歩いて行ってしまった。
「・・・悪りぃな。アイツは誰にでもあぁだから、気にしないで」
「大丈夫です。ありがとうございました」
ビトリーと呼ばれた彼は、彼女を励ましたが、それでも彼女の心は落ち込んでいた。
嫌われてしまったんでしょうか?
「お前ホント愛想ねーなー。あんな可愛いくていい子の後輩に」
「別に、困る事無いし。ってか眠すぎて顔もぼんやりしてた」
「お前また深夜バイト行ったな?」
「ああ、夜のが時給いーし」
「見つかったらまた怒られるだろ?」
「親戚の姉さんの手伝いって程で先輩と合わせてるから。全くの嘘でもないし、成績さえ赤点とらなければ?イヤしかし・・・ってセンセは迷ってるけど」
「あっそ。程々にな」
「でも、6連勤は流石に堪えるわー」
「お前、夕方もバイトしてるだろ?」
「ああ。あと今日は朝に新聞配った」
「苦学生だなぁ、お前。それこそ住み込みで働けたらいいのにな。今年の1年で入ったお嬢様のとことか」
「お嬢様?あり得ない。金持ちの子供はみんな働くのは社会勉強。人に迷惑かけてる自覚無いし、悪びれる事も無いってヤツが多い」
「多いだけだろ?否定はしないけど」
そう言ってビトリーは頭をかいた。彼にも思うところがある。
「保健室で昼飯食って、寝てから帰るわ~」
「カバン持って行くとサボリって一発でバレないか?」
「取りにくるヤツを苦労させない為の配慮だよ」
「ほどほどにしろよ~」
「じゃーな」
俺はビトリーに後ろ向きに手を振りながらカバンを持ち保健室に向かった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる