お嬢様の胃袋掴んでしまいましたが!?

近藤蜜柑

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若葉風

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女生徒が1人でプリントを運んでいる。保険委員の初仕事を昼休み前に先生に頼まれたのだ。クラス分の1人1枚なので、対して量は無い。が、何故か男子生徒が手伝うと言ってきたが、他の女子生徒たちに怒られていた。
彼女は丁寧にお断りした。
普通は用事を言いつけられたら嫌がるものだが、プリントを運ぶ彼女の心は明るい日差しを浴び、風に舞う今日の若葉のように軽い。それもそのはず
「エヘヘ、私でも誰かの役に立つんですね!用事を言われたのって初めてです!!えっと、この下が保健室の階で、きゃっっ!!」
階段の踊り場の開いていた窓から来た若葉風によってプリントが散らばって、近くの廊下に落ちていく。
「いっけない!」
彼女はプリントの後を追った。
幸い風はそこまで強くなく、数枚が飛んだだけだった。
「えっとえっと!」
彼女がプリントを拾っていると、近くにいた男子生徒が手伝ってくれた。どうやら上級生らしい。つり目で、くるくるしているヘアスタイルがとても印象に残る。
「大丈夫か?はい」
「あ、ありがとうございます!」
「えっと、数足りてる?」
「えっと・・・あれ?一枚無いです!」
「えぇ!?・・・ん?オイオイシャズ!!お前の足元にあるじゃねーかよ!拾ってやれって」
「あぁ、コレな。んっ」
呼ばれた彼は足元にあった最後の一枚を拾って動かずに手だけを此方に向けた。腕さえ伸ばしていない。こちらに来いという意味らしい。眠そうで愛想がなく、一匹狼のひねくれ者の雰囲気がしている。
「お前なぁ、ちょっとは動こうと
「あっ!ありがとうございます!!」
彼女は素直にシャズと呼ばれた彼の元へ向かってプリントを受け取った。
「本当にありがとうございました。これで全部です」
「行くぞビトリー」
丁寧にお礼を言う彼女を無視し、シャズと呼ばれた彼は素っ気なくスタスタ歩いて行ってしまった。
「・・・悪りぃな。アイツは誰にでもあぁだから、気にしないで」
「大丈夫です。ありがとうございました」
ビトリーと呼ばれた彼は、彼女を励ましたが、それでも彼女の心は落ち込んでいた。
嫌われてしまったんでしょうか?

「お前ホント愛想ねーなー。あんな可愛いくていい子の後輩に」
「別に、困る事無いし。ってか眠すぎて顔もぼんやりしてた」
「お前また深夜バイト行ったな?」
「ああ、夜のが時給いーし」
「見つかったらまた怒られるだろ?」
「親戚の姉さんの手伝いって程で先輩と合わせてるから。全くの嘘でもないし、成績さえ赤点とらなければ?イヤしかし・・・ってセンセは迷ってるけど」
「あっそ。程々にな」
「でも、6連勤は流石に堪えるわー」
「お前、夕方もバイトしてるだろ?」
「ああ。あと今日は朝に新聞配った」
「苦学生だなぁ、お前。それこそ住み込みで働けたらいいのにな。今年の1年で入ったお嬢様のとことか」
「お嬢様?あり得ない。金持ちの子供はみんな働くのは社会勉強。人に迷惑かけてる自覚無いし、悪びれる事も無いってヤツが多い」
「多いだけだろ?否定はしないけど」
そう言ってビトリーは頭をかいた。彼にも思うところがある。
「保健室で昼飯食って、寝てから帰るわ~」
「カバン持って行くとサボリって一発でバレないか?」
「取りにくるヤツを苦労させない為の配慮だよ」
「ほどほどにしろよ~」
「じゃーな」
俺はビトリーに後ろ向きに手を振りながらカバンを持ち保健室に向かった。
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