龍神祭のうた

近藤蜜柑

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龍神祭 開催

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早朝。
花火が上がる
祭りの始まりだ。

会場には人が集まり始めてきた。
既に屋台には行列ができているところもある。
メインの歌うまコンテストはお昼からだというのに。大した活気だ。
今は受付中である。
早速受付を済ませた者は胸元に番号のふられた名札を付けている。
風邪を免れたアースの前に番号の名札を付けた者が飛び出してきた。
「アース!見て見て!早起きしたおかげよ!」
そう言ってフレイアは番号の名札を見せてきた。
そこには①とあった。
アースは呆れと尊敬が入り混じった目で聞いた。
「いったい何時から並んだんだ?」
「朝の5時!誰もいなくて気持ち良かったわ」
アースは一瞬昨日の歌声を思い出したが、違う。
確かにフレイアは歌が上手い。去年のグランプリを取ったぐらいだ。
でも、昨日の歌はもっと儚げだった。それでいて癒される心地よさがあった。
それにフレイアが得意とするのは目の覚めるようなボリュームを武器にした元気な歌だ。フレイアの持ち味を180°変えたような昨夜の歌とはまるで正反対だ。
「な、何よ。じっと見て。惚れた眼差し⁈」
「いーや、感心と呆れの眼差しだ。去年グランプリとったやつが①にするなよ。最後が盛り上がらねーだろ」
「何か言ってんの!①が一番良い!なんて最高の褒め言葉じゃない!」
「って事だから、コンテスト始まるまで一緒に回らなきゃーアース!」
「意味わかんねーよ!あーもーひっつくなって!あついっ!」
「照れなくってもいいじゃなーい!」
「照れてね~!」
オレは力を入れすぎないようにフレイアを振り解いた。もしも力任せに振り解いてみろ。ケガでもさせようものならみんなから白い目で見られるのはオレだけだ。
「あーん意地悪!でも、アースがそんなに私の歌を気に入ってくれてたなんて嬉しいなぁ~」
「まぁ、お前の歌は歌唱力あるからな。元気出るんだ」
「アース・・・」
「私も、フレイアちゃんの歌大好き。フレイアちゃんの歌は勇気もらえるの」
「フェンディ!私はアンタに癒されるわ~!」
「うわっ!えへへありがとう。一緒に回ろ」
「うん!」
2人の女子が抱き合っている。どうして女子って抱き合うんだろうなぁ。なんか空気がホワホワしてるぞ。
居づらくなってそっとオレは逃げた。フェンディは人の気持ちに敏感だ。多分、今回は天然だろうけどな。
サンキュ。お前の好きなわたあめお土産にするからな。

わたあめを買う前に少しブラブラしようと噴水の近くまで来た時に空を見上げて気づいた。
「なんだか空が暗くないか?朝は普通だったと思うけど」
「日食だね」
「エウロス!いつからここに!」
「最初から。日食は太陽と月が重なる現象なんだ」
「日食は知ってる。ってかなんだよ。コンテスト見ないのか?」
「音は聞こえるよ」
「日食なんて何が楽しいんだ?わかんねー」
「そう?とても神秘的だよ!お祭りの日に日食だなんて。ひょっとしたら伝説の通りになるかもしれないんだ!!伝説には日食のある日に龍が!」
「エウロス・・・」
また始まった。この長い話は勘弁だ。付き合ってらんねー。オレはまたこっそり抜け出した。
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