龍神祭のうた

近藤蜜柑

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♩太陽と月が出会う時
龍、眠りから覚め村へ
高き頂きより願い歌う
夢の空へ♩

「うるせーぞラット、ダクト!」
レビンの怒り声が響く
「ラットもう疲れちゃった~」
「俺も、景色全然変わらないんだもんー」
雷が鳴るような怒りだったが、兄弟である男女の双子は慣れきっているようだ。恐らくこれが日常だ。そう思うとレビンは苦労人なのだろう。叱られた年少双子が揃って口を尖らせる
「だからってずっとその唄ばっかりじゃ頭おかしくなるっつーの!」
「ってか、エウロスも便乗するなよ」
「え、そうだったのか?」
レビンも他のみんなも驚いている
「え、アース、僕?歌ってないよ?」
「嘘つけ!どんなに小さくてもお前も歌ってた!」
「あーあ、やっぱりアースにはバレちゃったか」
「やっぱり親友の声はわかるのか?」
ウィローが微笑ましそうに笑う。
「エウロスだけじゃねーよ。村のみんなが全員風邪ひいたって聞き分けられる自信ある」
「流石最年少審査員だな~兄さんは鼻が高いぞ~」
「兄貴!頭撫でるな!」
ウィローはオレの兄貴で、この中では最年長だ。
「でも、何でその歌なんだよ!」
レビンは終始イライラしている
「だってこの曲しか知らないもーん」
「みんなで歌えるでしょ~?」
双子はニヤニヤ笑った。
「私、あの伝説大好き」
フェンディは優しく微笑む。
その言葉に便乗し、双子は目を輝かせる。
「龍の歌ってカッケーよなー」
「何言ってんだ。そう言っておばばを喜ばせて屋台のお菓子を強請る気だろ」
オレは見抜いてる。
「やっぱりバレたかー」
「内緒にしてね~」
双子は舌を出して笑う。
「でも、もう少しで着くぞ」
ウィローは柔かにみんなを促す。
「話してたら疲れが紛れました」
フェンディの妹フロストは、幼いのにしっかりしている。一番体力が無いのでオレが引っ張ってやってる。
「お前、汗凄いぞ~。休憩した方がいいんじゃないのか?」
アースは心配半分。からかい少しで声をかけた。
「うるせー。俺はまだ大丈夫だ。お前こそ息上がってないか?」
レビンは頭脳担当なのか体力は今一つなのだ。汗が凄い。
「いや、全然」
「ぐっ!この体力バカ」
「バカって言う方がバカだ!」
「ほらケンカするなよ」
ウィローが間に入った。
「レビン。怒鳴ると余計に体力使うぞ」
「ぐうっ!」
「アース、お前も怒らせるような言い方するな」
「ケっ!」
レビンは何故か俺に突っかかってくる
「ったく!なんだってこんな高いとこまで花持っていかなきゃいけないんだっつーの」
体力が減るとしてもレビンは悪態をつかずにはいられないらしい
「明日のお祭りの為よ。噂じゃ、何年も前に何処かの国の王子様がグランプリとった女の人に求婚したって話あるじゃない!」
フレイアは夢みがちに熱弁した。
「ケッ。本の読みすぎだな」
レビンが、つつく
「何よ!アタシが本読んだら3分もしない内に夢の中よ」
「威張って言うことですか?」
フロストが冷静にツッコミを入れる
「だから、夢だろ」
「ホント!」
「まぁまぁ」
2人の言い合いをエウロスが止めようとするもムダっぽい
「ほらほら、また疲れるぞ。早く行って終わらせよう」
ウィローが止めてようやく収まる。流石年長者。みんなの兄的存在だ。

「にしても龍なんて、居るわけないだろ」
「アースはまたそんな事言って!」
あ、ヤバっ!声に出てた!
「いいかい?この村では龍を神様として崇めているんだ!村の中心に龍の噴水があるのもその為で、そもそもあの噴水には神話があってー」
しまった!歴史オタクのエウロスの前でこの話は禁句だった!普段ぼーっとしてるクセに歴史の話になると嵐のように語り出して止まらないんだよなぁ~
「きゃっ!」
「オレ、先に行く!」
オレはフロストを小脇に抱えて走り出した!
「なっ!アース!話はまだ始まってもいないよ!」
エウロスはオレを追いかけて走り出した
「クソ!俺が一番だ!」
「やめろってレビン!お前体力ないだろ!」
「うるせ~!」
「危ないって!」
ウィローが止めるも聞かない
「ラストスパートね!」
フレイアまで走り出した。
「かけっこなら負けるかー!」
「じゃあわたしも~!」
「ラット!ダクト!」
「はぁ、俺達はのんびり行こうか。フェンディ」
「そうですね、、、」


そう。明日は村の龍神祭
昔、龍がこの村に舞い降りて歌い、
眠りについたと言われている。

だが、村人は大抵、伝説と思ってバカにしている。内容意味わかんねーし
祭だけが残り、歌うまコンテストみたいになっている。
屋台や他の催し物もあり、春の中頃のこの時だけは、静かな田舎が賑やかになる。
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