24 / 28
24.
しおりを挟むそして、翌日。
帰ってきたヒロくんは、小次郎と約束してきた!と意気込んでる。
ヒロくんが、待ち合わせ場所にしたのは、あまり人が来ない小さめの公園だった。
僕とあきくんと姫ちゃんが、皆でヒロくんを見守っていると。
小次郎は少し遅れてやってきた。
「……やっぱり、オレんちの子供だった……」
あきくんがちょっとむっとしてる。
「うちの子だけど、ヒロに嫌がらせするとか、ちょっとなぁ……」
「そうだよー。あきくんに、幸せにしてもらってるのにさ。ヒロくんみたいないい子に怪我させるとか」
二人は怒ってるけど。ヒロくんは怒ってるというのとは少し違う感じだった。
ヒロくんはその声が聞こえたのか、僕たちを振り返って、首を振った。
「……」
黙って見てて、と言ってるように見えた。
二人にも、そう見えたみたいだ。
「何の用だよ」
小次郎はすでに喧嘩腰。
「……言いたいことあるなら聞くって言った。来たってことは、あるんだよね?」
ヒロくんが聞いても。小次郎は「……別にないし」とそっぽをむく。
「何でずっと、そんな感じなのか知らないけど……」
「――――……」
「嘘つきって、何? オレ、何か嘘、ついた?」
「なんでもないって言った!」
「…………」
全然、話す気、無いのかな。
ヒロくんもちょっとムッとしてるけど。
「はっきり言うけど。……小次郎、今、皆に嫌がられてるからな。偉そうだし、乱暴だし。オレにやなことばっか言ってるし。……そんなんで、楽しい?」
ヒロくんは、まっすぐ、小次郎を見て言った。
小次郎は、ものすごい顔で、ヒロくんを睨んで。
詰め寄った。
あきくんと姫ちゃんが、止めに入ってしまいそうな雰囲気で。僕は慌てて、それを止めた。
「うるさい!」
「……違ってたら、もういいけど……! 友達が欲しいなら、そんなんじゃだめだからな!」
ヒロくんの言葉に、小次郎はただヒロくんを睨む。
「――――……って……」
「え?」
何かを小次郎が言ったけど、聞き取れず、ヒロくんが聞き返したら。
「……お前も、友達じゃないだろ……」
「…………」
そう言って、小次郎が、ヒロくんから少し、離れた。
「ずっと友達でいようって言ったのに……」
「え」
「クラス変わったら、全然……」
「……え?」
「お前、嘘つきじゃんか!」
ヒロくんは、めちゃくちゃぱちくりしてる。
僕たちも、思いがけない言葉に、顔を見合わせた。
「……あー……え。それで、怒ってた、の?」
「――――……別に……! ……つかもう帰る!」
「え、ちょっと待ってよ」
ヒロくんが、小次郎の腕を掴んで止める。
「……確かにクラス変わったら遊ばなくなってたけど……だったら今年、遊べばいいじゃん。何であんな態度でずっと……」
「もうお前、去年から友達じゃないし」
「――――……はー……??? 意味分かんない……」
ヒロくんは、めちゃくちゃため息をついた。
「……小次郎、やってること、ばかみたいだなー」
「…………もう帰るし!!」
「……あんなことしてたら、友達、出来ないし。良いの?」
「別にいいし」
ヒロくんは、はー、とため息。
「……ずっと友達とか、言ってたけど……確かに去年は、離れてたけど…… 嘘、ついてた訳じゃない、し……」
「――――……」
ヒロくんは、まっすぐ小次郎を見て、ぷ、と笑った。
急に笑顔になったヒロくんに、小次郎も、あきくんも、姫ちゃんも、僕も。
ヒロくんに見惚れた。
「……オレ今、お前、全然好きじゃないけど」
「――――……」
「もいっかい、友達に、なってもいいけど。どーする?」
「――――……」
すると、小次郎は、すごく、複雑な顔をした。
……多分、嬉しいけど、それを出せない、て顔なんだと思う。
「……オレだって、お前なんか、嫌いだし」
小次郎が、そう言う。
「あ、そう?」
それでも、ヒロくんが、笑う。
「……貧乏なくせに、なんで、皆、お前の側にいんの? もう、ほんと、嫌い」
「――――……貧乏、関係ないし。何それ、口癖になってんの? はー、オレ、ほんと、お前、嫌い」
「………じゃあ友達なんて無理だろ……」
「……別に。嫌いでも、友達にはなれるし。そっから好きになるかもしんないし」
「――――……」
僕たち三人には、小次郎の気持ちが、変わっていくのが、見えた。
ヒロくんの言葉を、小次郎は、喜んでて。
素直じゃない顔には出てないけど。
ふわ、と、小次郎のまわりに、明るい光が、見えるみたいで。
なんかもう大丈夫そう。
僕が思ったところで、あきくんと姫ちゃんも、そう思ったみたい。
「先帰ってるー」
僕が言うと、ヒロくんは、振り返って、笑った。
ヒロくんには、あの光は見えないのに。
小次郎の、素直じゃない、仏頂面しか、見えてないはずなのに。
でもヒロくんには、分かってる気がした。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
薔薇と少年
白亜凛
キャラ文芸
路地裏のレストランバー『執事のシャルール』に、非日常の夜が訪れた。
夕べ、店の近くで男が刺されたという。
警察官が示すふたつのキーワードは、薔薇と少年。
常連客のなかにはその条件にマッチする少年も、夕べ薔薇を手にしていた女性もいる。
ふたりの常連客は事件と関係があるのだろうか。
アルバイトのアキラとバーのマスターの亮一のふたりは、心を揺らしながら店を開ける。
事件の全容が見えた時、日付が変わり、別の秘密が顔を出した。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」
GOM
キャラ文芸
ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。
そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。
GOMがお送りします地元ファンタジー物語。
アルファポリス初登場です。
イラスト:鷲羽さん
いわくつきの骨董売ります。※あやかし憑きのため、取り扱いご注意!
穂波晴野
キャラ文芸
いわくつきの骨董をあつかう商店『九遠堂』におとずれる人々の想いを追う、現代伝奇譚!
高校生二年の少年・伏見千幸(ふしみちゆき)は夏祭りの夜に、風変わりな青年と出会う。
彼が落とした財布を届けるため千幸は九遠堂(くおんどう)という骨董品店にいきつくが、そこはいわくありげな古道具をあつかう不思議な店だった。
店主の椎堂(しどう)によると、店の品々には、ヒトとは異なることわりで生きる存在「怪奇なるもの」が棲みついているようで……。
多少の縁で結ばれた彼らの、一夏の物語。
◆エブリスタ掲載「九遠堂怪奇幻想録」と同一内容になります
◆表紙イラスト:あめの らしん
https://twitter.com/shinra009
紫銀国後宮伝 〜心理士翠花、桜の宮廷で輝く〜
成井露丸
キャラ文芸
大陸の中央を治める紫銀国。その都である洛央に住む酒場の娘である翠花(ツイファ)は人間観察が好きな少女。幼馴染の男子である飛龍(フェイロン)と共に年の離れた父親代わりのお爺と一緒に暮らしている。
ある春の昼下り、酒場に訪れていた偉そうな美男にちょっとしたお説教をしてしまう。
「天の理と同じく、人の心には理があるのだ」と。
後日、王宮から使いがやってきて、後宮に呼び出される。
後宮で待っていたのはあの日の偉そうな美男だった。
男は星澪(シンリン)と名乗る。後宮の運営を任されているのだと。
そこで言われる「心の理がわかるというのなら、後宮にある問題をその知識と知恵でなんとかしてみろ」と。
報奨に目がくらんだ翠花(ツイファ)はその依頼を引き受けることにする。
問題解決のために彼女が提案したのは思いがけない遊戯だった。
これは人の「心」の「理」で捉え、後宮の問題を解決していく少女の物語。
翠花は、美しい上級妃たちの心の奥深くに触れ、皇帝や皇子たちとの恋愛模様が展開される中で、自らの運命を切り開いていく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる