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「なんか、このおじいさん、ヒロに興味津々だな? 気に入ったのかな?」
「ねぇ? でも、分かるけど。 ヒロくん、可愛いもんね」
「うんうん」

「なあなあ、このおじいさんがさぁ、すっごいお金持ちでさ、お礼にこのお金を自由に使ってくれ、とか持ってきちゃったりして?」
「まさかぁ?」
「でもほら、オレ達居るし。何かいいことにつながってるのかもしれないじゃん?」
「そうだねぇ。今度さぁ、あたしたちついてくから、宝くじを買うっていうのはどうかなあ?」

 姫ちゃんが言うと、あきくんは、オレらが欲出しちゃうと 良くないんだよねと、苦笑い。

「不便だよなぁ、オレらの運ってやつ」
「……ほんとだよねー」

 あきくんと姫ちゃんが苦笑しながら、頷き合っている。

 それからしばらくして、黒い、なんだかとても高そうな車が現れた。

 ほんとにお金持ちかもね、とあきくんが苦笑い。

 ヒロくんにお礼を言ってから、車から出てきたスーツ姿の男の人の肩を借りて、おじいさんは車に乗り込んだ。
 窓を開けたところに、ヒロくんが立つ。

「ありがとうね。……今度、お礼に来てもいいかな」
「お礼? いいよ、電話かけただけだし」
「じゃあ電話代を持ってくるね」
「……何十円とか? 分かんないけど。大丈夫だよ」

 クスクス笑って、ヒロくんは、おじいさんに、早く元気になってね、と告げた。

 バイバイで見送ってから、ヒロくんは、僕たちを振り返った。


「……てわけで、予定外でもう遅くなっちゃいそうだし、明日になっちゃいました」

 ヒロくんは、そう言って笑いながら歩き出した。


「帰ろう~」
「うん。おじいさんと何話してたの? 最後の方、聞いてなかった」

「えー? うーん……と……なんか、へんなこと言ってたよ?」
「へんなことって?」

「……ひどいことをしたって後悔してるんだって。ヒロくんならどうする?とか聞かれたから」
「うん」
「謝ればいいんじゃないのかな? って言っといた」
「めちゃくちゃシンプルだな」

 あきくんが可笑しそうに笑う。
 姫ちゃんも楽しそうにヒロくんに話しかけてて。

 すると、あきくんが僕の隣に並んだ。

「さっきの大金が、とかは、まあ冗談だけどさ。……なんかこの出会いとか、色んなのがいい方向に行けばいいよな?」
「そうだね。でもあきくんと姫ちゃんが居る時に出会った人だから悪い縁ってことは無いと思うんだよね。あとは小次郎と、うまくいけばいいね」

 僕の言葉に、あきくんが不意に、びっくりした顔で、僕を見た。

「ん? ……小次郎って言うの? ヒロの喧嘩相手?」
「え? うん。そだよ、小次郎。聞いてなかった?」
「名前は聞いてなかった。……オレんちの子供も小次郎だけど……」
「あれ、でも、子供一人でしょ? 小次郎って、二人めにつく名前じゃないの?」
「上の兄貴、去年から留学してて、居ないだけ。離れてんの年が」
「え……。あきくんのとこの、子なの? そっか、年も、同じだっけ……?」

 あきくんは、うーん、と考えてから。

「な、ヒロ」
「ん?」
「対決するとき、オレも行くから」
「? ん、分かった……ていうか、対決、とかじゃないんだけど……いいけど」

「えー、あたしも行くよー」
「もちろん僕も」

 ちょうどむこうから人が来ていたので、ヒロくんは、うん、わかったよ、と小さく笑いながら、頷いた。


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