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しおりを挟むヒロくんの下校前に、僕たちは、ヒロくんの家に入って待っていた。
「散らかってるってこういうことか~」
あきくんが、ふむふむ、と見回す。
確かに二人の家は、そういう意味ではとても綺麗だったっけ。
「これでも、玄関とかテーブルとか綺麗になったんだよ~」
「じゃあもっと散らかってたのか……うーん、オレは、住めないかも」
「あたしも……」
「……そこは僕とは違うんだよね。僕は、こういうのが気になっちゃって。ついつい、見たくて、住みたくなっちゃうんだよね……」
「気になるって、嫌な感じで気になるってこと?」
「……うん、まあ。そうかも。心配になっちゃうというか……ついつい……」
「なるほど……ていうか、きいちゃんて世話焼きだよなあ?」
あきくんに、クスクス笑われる。
世話焼きなのか、僕。初めて言われた。
その時。鍵が開く音がして、「ただいまー」とヒロくんの声。
「きいちゃん、ただいまー」
言いながら中に入ってきたヒロくんは、少し離れたところで、ぴたっと足を止めた。
「誰?」
ヒロくんのその言葉に、僕たちは大喜び。
ヒロくん、あきくんと姫ちゃんの顔も、見れるんだ。
「きいちゃんのお友達??」
「そう」
「二人も、神様なの?」
ヒロくんの質問に、うん、と嬉しそうに笑う二人。
「あきくんと、姫ちゃんだよ」
「ヒロです。よろしく」
名前の自己紹介だけすませると、ヒロくんが僕を見つめた。
「そういえば皆、オレと同じ位なんだね? 年も一緒くらいなの?」
「ううん。同じくらいに見えるかもだけど、違うんだ」
「違うの?」
「僕らは大きくなるのがゆっくりなんだ。んーと……動物って、大人になる速さが人間より速いって、知ってる?」
「うん、知ってる」
「それとおんなじ感じかな……。犬よりは人間の方がゆっくり大人になるのと一緒で、人間よりは僕たちの方がゆっくり大人になる。そんな感じだと思ってくれていいよ」
「そうなんだ。じゃあすごく年上だったりするの?」
「うーん、まあ……そうなような。でも同じくらいなような……」
そう言うと、ヒロくんはにっこり笑って、僕たちを順番に見つめた。
「神様だけど……きいちゃんみたいに、名前で呼んで、普通に話してもいいの?」
「いいよ」
「もちろん」
あきくんと、姫ちゃんが嬉しそうに笑う。
「すごい。うちに三人も神様が居るとか。びっくり」
ふふ、とヒロくんが笑う。
「そういえば、皆、何の神様なの? 同じ、神様なの??」
不思議そうに、ヒロくんが言った言葉に、僕たち三人、ぴしっと止まった。
「えっと……オレらは、家につく神なんだ。その家を、幸せにするためにつく」
「あぁ、そうなんだー。じゃあ姫ちゃんとあきくんは、どこかの家で幸せにしてるんだね。一緒に掃除とか、してるの?」
またちょっと固まる二人と、僕。
……そうだよね、僕はヒロくんに、僕が居るだけじゃダメで掃除をしないとって言ってる訳だから……えっと…………。
なんて答えようと思っていると、あきくんが笑いながら。
「そ、掃除はまだしてないけど、まあ、オレが一緒にしなくても、色々掃除とかも頑張ってて、そこそこ幸せにしてるかな」
「あ、あたしも、そんな感じ。うち、もともと綺麗好きな人達だったから」
二人がちょっと焦りながらだったけど、そんな風に言って、うふふ、とにっこり笑うと、そうなんだ~、とヒロくんは頷く。
「そっかー。やっぱり綺麗にしとかないといけないんだね。うち、お母さんが忙しかったから……僕がこれから頑張ればいいんだね」
うんうん、とにこにこ笑ってるヒロくんを見て、あきくんと姫ちゃんが、ふ、と瞳を和らげた。
「ヒロ、応援してやる」
「あたしも。ヒロくん応援する」
「え。そうなの?」
ヒロくんが二人を見ると、二人はうんうん頷いている。
「やった、オレ、三人の神様に応援されちゃうんだ。なんかすごくいいことありそうだね」
ヒロくんが嬉しそうに笑うので、僕たち三人は、顔を見合わせて、そうだね、とクスクス笑った。
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