11 / 28
11.
しおりを挟むあきくんに全部話したら、姫ちゃんにも話そうってことになって、姫ちゃんの家を一緒に訪ねた。赤ちゃんが本当に可愛くて、皆で可愛いねぇと見つめてから、姫ちゃんちのお部屋で、丸くなった。
さっきあきくんに話したことをもう一度、姫ちゃんにも話す。
あきくんもそうだったように、話してる途中から、とっても嬉しそうにニコニコしだして、話し終えたら、めちゃくちゃ笑顔になってくれた。
「すごい! 話せたの?」
「うん、そうなの」
「何で?? どうしてヒロくんは話せるの?」
「分かんないけど……退院してきた時から、僕のこと見えて」
「えー、良かったねー!!」
「うんうん!」
きゃっきゃっと、二人で喜んでいたら、あきくんが笑いながら言った。
「さっき聞いてから考えてたんだけどさ」
「うん?」
「その子、頭打ったって言ってたよな?」
「うん、そう言ってたよ」
「たまに居るらしいよ、頭打ってから幽霊が見えるようになったりって。それと一緒かな? きいちゃんが見えるスイッチが、頭の中で入ったのかも」
「そうなんだ。え、それって、ずっとなのかなあ……?」
「もう見えるようになったならずっとかもしれないし、打ったことによって一時的なのかもしれないし、それは分かんないよな」
「そっか。……じゃあ、また見えなくなっちゃうかもしれないんだ。そっか。……じゃあ、なるべく早く、大事なことは伝えといた方がいいかな」
いつ見えなくなっちゃうか分かんないもんね。
大事なことは、早めに伝えておこう。
「ん、そうだな。いつ見えなくなっても、後悔しないように」
「うん」
あきくんの言葉に、僕は頷いた。
「でもさ、それってさ」
姫ちゃんがなんだかしみじみとつぶやいた。
「ん?」
姫ちゃんの言葉を少し待っていると。
「今の話は、見えなくなるかどうかだけど……あたしたちには死がないから別だけどさ」
「うん?」
「人間には、あるでしょ」
「…………」
「誰にも必ず。しかも、すごく元気でも、数分後にとか。いつくるか分からない、お別れの時が」
「――――……」
「だから、ほんとに話せるなら、貴重な時間を大事にしないとだよね」
「……うん」
「でも、このままずっと、お話できたらいいね」
笑顔で言う姫ちゃんに、うん!と頷きながら、しみじみ、ほんと、大事にしようと誓う。
……今まで数えきれない長い時間、一度もこんなこと無かったから。
この先、もうずっと、無いかもしれないし。
そう思うと、とてもとても、特別で大事な時間な気がしてくる。
「なあ、きいちゃんが見えるってことはさ?」
「うん?」
「オレ達のことも、見えるのかな??」
「え。……どうなんだろう???」
そう言われてみると……でも考えても分からない。
「今日、会いに行ってみようか?」
「えー、賛成ー!!」
「十五時半くらいに帰ってくるよ、ヒロくん」
「じゃあ、会ってみよう、姫ちゃんも行くだろ?」
「行く行く、絶対行く!」
二人が盛り上がってるのを見て、僕はふと、考えた。
「あ、あのね……言っとかないといけないことがあるんだけど……」
「うん?」
「なに?」
あきくんと姫ちゃんが僕を見つめる。
「……あの……僕、神様とは言ってあるんだけど……貧乏神とは、言ってないんだ」
そう言うと、二人は、しばらく、じっとオレを見つめた。
「あー……そっか」
「そうなんだね……」
あきくんも姫ちゃんも、二人とも、僕の顔を見ながら、しばらく考えてた。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
薔薇と少年
白亜凛
キャラ文芸
路地裏のレストランバー『執事のシャルール』に、非日常の夜が訪れた。
夕べ、店の近くで男が刺されたという。
警察官が示すふたつのキーワードは、薔薇と少年。
常連客のなかにはその条件にマッチする少年も、夕べ薔薇を手にしていた女性もいる。
ふたりの常連客は事件と関係があるのだろうか。
アルバイトのアキラとバーのマスターの亮一のふたりは、心を揺らしながら店を開ける。
事件の全容が見えた時、日付が変わり、別の秘密が顔を出した。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
まほろば荘の大家さん
石田空
キャラ文芸
三葉はぎっくり腰で入院した祖母に替わって、祖母の経営するアパートまほろば荘の大家に臨時で就任した。しかしそこはのっぺらぼうに天狗、お菊さんに山神様が住む、ちょっと(かなり?)変わったアパートだった。同級生の雷神の先祖返りと一緒に、そこで巻き起こる騒動に右往左往する。「拝啓 おばあちゃん。アパート経営ってこんなに大変なものだったんですか?」今日も三葉は、賑やかなアパートの住民たちが巻き起こす騒動に四苦八苦する。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
伊賀忍者に転生して、親孝行する。
風猫(ふーにゃん)
キャラ文芸
俺、朝霧疾風(ハヤテ)は、事故で亡くなった両親の通夜の晩、旧家の実家にある古い祠の前で、曽祖父の声を聞いた。親孝行をしたかったという俺の願いを叶えるために、戦国時代へ転移させてくれるという。そこには、亡くなった両親が待っていると。果たして、親孝行をしたいという願いは叶うのだろうか。
戦国時代の風習と文化を紐解きながら、歴史上の人物との邂逅もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる