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しおりを挟む「そうだよね。頭なんて、打ち所が悪かったら、怖いもんねぇ?」
姫ちゃんも頷きながらそう言ってくる。
「そうだよね、ほんとに」
僕も改めてそう思って、頷いた。
「……その子ね、ヒロくんて言うんだけどさ。なんていうか……すごく良い子なんだよ」
「そうなの?」
「うん。優しくてさ。笑顔、可愛いし。お母さんにも優しいしさ。お母さんが忙しくて寂しいだろうに、我儘も言わないし。……ほんと、良い子なんだ」
ヒロくんのことを思い浮かべながら、僕が言うと、あきくんは、そっかーと頷いた。
「そうなんだね。なんか、そう聞くと、うちの子と、チェンジしてやりたいな。良い子こそ、恵まれたとこで不自由なく暮らさせてあげたいなって思っちゃうけど」
あきくんの台詞に、そうだねぇ、と頷きながらも。
「あ、でも、お母さんとヒロくんって、すごく大好き同士だからね。だからいい子なんだと思うから、他の家にチェンジとかしたら可哀想かも」
「そっか」
「うん。そうなの」
僕は笑顔であきくんに頷いた後、思わず、ふう、とため息をついた。
「ヒロくんが、僕の話を聞いてくれたら良いのになあ……」
「ん? お母さんじゃなくて、ヒロくんの方?」
あきくんの疑問に、うん、と頷く。
「お母さんはお仕事が忙しすぎて、家のことしてる時間が無いんだよね。それでも頑張って、ヒロくんのご飯はなんとか作ってるけど……でも、片付けとか、そういうのが全部後回しになっててさ」
「そっか~大変だな……」
あきくんも、姫ちゃんも神妙な顔をしている。
二人の住みつく家は、そういうことはないので、多分僕の言うことは、実感としてはあまり分からないんだと思うけど。
「ヒロくんはさ、しっかりしてるから、教えてあげれば何でも出来そうなんだけど……今は、それをやることだっていう認識がないだけ、なんだよね」
「掃除とかってこと?」
「うん。掃除もさ、洗濯とか、お茶碗洗うとか。ヒロくんならできると思うんだけど……」
三人で、うーん、と考えこむ。
「でもまあ。……きいちゃんの言葉が聞ける奴、まだ居たこと無いもんな。ていうか、オレらのこと見える奴って、ほとんど居ないらしいし」
「でも稀には居るみたいだからさ……いつかって思うけど」
「うん、まあ……そうだな」
「そうだね」
あきくんと姫ちゃんは頷くけれど、今までずっと、そんな人に会ったことがないから、二人は半分は諦めモード。……僕もだけど。
三人でジャングルジムで遊んで、それからブランコに乗った。
僕たちの姿は人間には見えなくて、ブランコが揺れているのだけは見えるから、ここを通りかかった人は心霊現象と思うかもしれない。
だから、人気がない時間に遊ぶことにしている。
色々話をしながら、しばらく遊んで、それぞれの家に帰ることにした。
「またねー!」
「うん、赤ちゃん、見に来てね」
「分かった、今度行くね!」
二人と手を振って別れて、家までの道を歩く。
少し先を、野良猫が歩いてる。
……猫は割と勘が良くて、僕の存在に気づいたりすることがあるので。
ぽん、とジャンプをして、塀の上に飛び乗った。
軽く飛べることができる。
まあ実体あって、ないようなものだから。
触ろうと思えば触れるし、すり抜けようと思えばすり抜けられる。
便利なんだよね。
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