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第4章◇なんで?

「兄貴」

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「愁はオレの気持が荒れてるって事はすぐ気づいたよ。オレが、愁を好きなのか悩んでる時も、どうした?って心配してくるし――――……それが何でかっていうのは一切気づかないのに、 オレが出さないようにしてるイライラも、すぐバレて、すぐ聞かれてさ……」

「――――……そうだったっけ……?」

「愁はさ、なんか機嫌悪い?とか、疲れてる?とか、軽く聞いてるから、聞いたら忘れちゃったんだろうな」

 クスクス笑う、快斗。

「――――……誰も気づかないのにさ。 愁だけはいっつも、気づくの。オレがおかしいとき」

 そうだっけ……。
 ……オレ、そんな鋭い奴じゃない気がするんだけど……

「オレって、あんまり考えてる事、周りにバレないんだよね。良い意味でも悪い意味でも。分かるだろ?」
「うん。分かる」

「……でも愁にはよくバレんの」

 クスクス笑って、快斗はオレを見つめる。


 ……そんな鋭くもないオレが、本当にそういうのによく気づくとしたら。
 快斗の事が大好きで大事だったから、としか。思えない。


「そーいうのバレんのも、ほんとは嫌なのにさ。 愁にバレるのは嬉しくて。 あー、今回も気づいたなー、とか。 ……オレは、愁が好きなんだなーて、いろんなとこで確認しながら生きてきたから……」

「――――……快斗」

 なんか。
 ――――……こんな風に聞いてると。

 「ん?」と笑う快斗に、腕を伸ばして。
 むぎゅ、とその首に抱き付いた。

「――――……愁?」

「……なんか…………もっと……早く言ってくれれば、よかったのに……」
「――――……」

「……居なくなる時に言ってくとか、じゃなくて……そしたらオレ、もっと――――……今よりもっと、ちゃんと、考えられたのに」

 そう言ったら、快斗は、しばらく黙ったまま、オレの背中に、手を置いてたけど。 ゆっくり、ぎゅ、と抱き締めてくれて。

「……あんなに毎日密着して過ごしてて……ダメになった時の事は考えられなかったから。 無理だったなー……ごめんな、言うだけ言って、置いてって」

「――――……ほんとだよ……」

 そう言うと、快斗が、クスクス笑って、抱き締めたままでオレの後頭部を、ぽふぽふと撫でた。



 その時。突然。

「おい、愁ー? 快斗帰ってきてんだってー?」

 大きな声がして、どかどか階段を上ってくる音。
 ばっと離れて、慌てて立ち上がる。
 変にドキドキしながら、ドアを開けると、兄の宗司そうじ

「兄貴……」
「おう愁。 快斗居んの?」
「うん、居る」

 部屋に入って、快斗の姿を認めると、宗司は「よお」と 笑った。

「元気そうだな?」
宗兄そうにいも元気そう」
「お前またでかくなった?」
「うん。なったかも」

「昨日飲み会で、今朝はバイトだったし。今お前居るって聞いた」

 オレは、自分の机の椅子に腰かけて、快斗と、快斗の近くに座った宗司の姿を眺める。


 快斗は、兄貴にとって、「弟の親友」でもあるのだろうけど。
 よく知ってる、「年下の幼馴染」みたいな存在でもあるのだと思う。


 二人とも久しぶりに会えて、すごく楽しそうに見える。

 

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