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第4章◇なんで?
「今の場所」
しおりを挟む「愁、ホラー映画の方は見る?」
「快斗、見たい?」
「……愁が見たいなら」
「……オレが見たくなかったら?」
「……何か堂々めぐりだな」
快斗がクスクス笑う。
「愁がやりたい事ないなら、オレは愁と話したいかな」
「じゃ、話そう?」
快斗にくっついたまま。見上げる。
「快斗、何、話したいの?」
「……んー……愁は? オレと話したい事ある?」
「……話したいって言ったの、快斗じゃん」
クスクス笑って言うと、快斗も、そうだけど、と笑う。
「……じゃあさ、快斗が今一番仲の良い友達、どんな奴?」
「んー……祐樹っていう名前」
「うん」
「背はオレと同じ位。横にでかいかな」
「うん」
「声でかい」
「うん」
「……連絡のメッセージは、大体いつも一言とか。短い」
「うん」
「……彼女欲しいっていっつも言ってる」
「うん」
「柔道部だった。引退したけど」
「うん」
ずっとうんうん頷いて聞いていたら、快斗が遂に笑い出した。
「愁、うんばっかり。ああ、写真見る?」
「うん」
笑いながら、快斗がスマホを操作して、男女6人で教室でご飯を食べてるらしい写真を見せてくれる。
「右端のデカい奴が祐樹だよ」
「うん……」
その隣で、違う制服の、快斗も笑ってる。
「――――……快斗の今の制服、初めて見たかも」
「あ、そうだな。送ってなかったっけ」
「……カッコいいね」
「――――……そう?」
「うん」
周りにいる、笑ってる友達たちも、当たり前だけど全然知らないし。
……なんか、快斗が、知らない奴みたいで。
――――……なんとなく、ただ、じっと、写真を見てしまう。
「写真、めくってってみて。 もう一人仲良い奴がさ」
「ん」
「……あ、そいつ」
何枚か、色んな子と快斗が写ってる写真があって、ある写真で止められた。
「康太っていうんだけど。愁と同じくらいかなー、背は」
「うん」
「……普段そんな写真撮らないんだけど、たまたまこの日は、体育祭の準備の日で――――……オレのスマホで写真撮ってたら、友達がオレも入れて撮ってくれてさ。 貴重な写真……たぶんこの日以外の写真ってオレ撮ってないから」
「そうなんだ。 ――――……快斗、楽しそう」
「――――……」
良かった。やっぱり、快斗はどこ行っても人気あるだろうし。 仲良くやってそうで。 楽しそうな快斗は、好き。
……なのに。なんで、少し落ち込むのかな。オレ。
快斗が楽しい方が良いし。
笑っててくれて、嬉しいし。
友達もできたんだなーって、良かった、と思うのに。
――――……今は、こんなに、くっついて、居られるけど……
……来週には、快斗はまた、居なくなって。
この場所に、戻っていくんだなあと。
思ってしまう。
「――――……愁?」
ずっと、ずっと、オレが、一番、快斗の側に居たのに。
今は。もう、快斗の一番そばに居るのは、オレじゃないんだよな。
「ありがと、写真」
スマホを快斗の手に返す。
「愁?」
快斗は、受け取ったスマホをすぐに床に置いて。オレをのぞき込んできた。
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