【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里

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第4章◇なんで?

「優しかった」

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 ぼーっと考えながら、もくもくと食べていると。

「……愁?」
「……ん??」

「すげえぼーっとしてるけど」

 クスクス笑う快斗。

「……んなことないよ」

 言いながら、もぐもぐ食べ続けていると。

「快斗くんが帰ってきてくれて浮かれてるんでしょ」

 可笑しそうに、母さんが笑う。

 またそういう、余計な事を……。
 オレが、快斗の事、大好きみたいじゃんか。

 …… って、大好きだけどさ…。
 
 こちらに背を向けて、流しを片付け始めた母さんの背中を見ているとまた考える。

 オレが、快斗とさ。
 ……恋人同士になったら……ほんと、母さん、どうするかな。
 もしそうなったら、母さんに伝える日が、くるのかなあ……。

 パンを頬張りながら考えていると、隣の快斗の視線に気づいて、ふ、と視線を流す。何を思ってるんだか分からないけど、優しく笑ってる快斗に、思わず、にっこり笑い返してしまう。


 ――――…快斗は、ずーと、優しかった。

 うちの方が先にここに住んでいた。家の前に建っていた大きな家が取り壊されて、しばらくして新しく建った家に、快斗の一家が入ってきた。小学校にあがる直前の春休みに出会って、入学式から一緒に登校する事になった。

 引っ越してきた日、挨拶にきた快斗と、初めて遊んだ。
 すぐ近くの小さい公園で、2人で。すごく、楽しかった記憶が、ある。

 ――――…それから、ほんとに、いつもいつも、一緒だった。

 母同士が意気投合した事もあって、余計に。
 遠出して一緒に出掛けることもよくあった。
 

 小さい頃のオレは、自分でも覚えてるけど、ほんとにすぐ泣いた。
 泣こうとしてた訳じゃないんだけど、我慢できなくて、すぐ泣いた。

 転べば泣き、宿題が出来ないと泣き、誰かと喧嘩しては泣き。
 ――――…快斗がいつも、慰めて、くれた。

 全部覚えてる訳じゃないとは思うんだけど、覚えてるだけだって、数えきれない。……あんなに泣き虫だったオレ、相当うざかっただろうに。
 ほかの友達には、「また泣いたー」「泣き虫愁ー」とからかわれてたけど、そっちのほうが意味が分かる。それくらい、よく泣いてた。

 なのに。快斗はほんとにいつも、優しくて。
 ――――……ほんとに、大好きだった。



 目の前にあるブラックのコーヒーのマグカップを見て。
 
「愁、コーヒー、牛乳入れる?」

 快斗が言ってくれるので、うん、と頷く。
 テーブルに出ていた牛乳をマグカップに注いで、スプーンでかきまぜてから、オレの目の前に置いてくれる。

「ありがと」

 快斗を見て言うと、快斗は、また、優しくにっこり笑う。

 いつでもこんな風に、快斗が笑っていてくれたから、大げさじゃなくて、オレの人生って、すごく、楽しかった気がする。



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