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第4章◇なんで?

「散歩好き?」

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 投げつけた枕を、快斗が優しく投げ返してくれる。

「オレ、そんなに緊張してた?」
「うん。してた。オレが笑ったら、ホッとした顔してた」

 クスクス笑ってる快斗。
 ……そう言われてみれば、してたかも……。

「快斗は……何でも分かっちゃうんだもんな……」
「ん?」
「考えてる事さ、昔から、何でも分かっちゃうんだよなー……」

「ああ……そう思ってたのか?」
「うん。昔から、快斗は人の気持ちが分かってすげーなーって思ってた」

「人の気持ち……」

 快斗はちょっと苦笑い。

「つーか――――……オレが何でも分かるのは、愁の事だけだよ」
「……ん?」
「そんだけお前のことばっか見て、考えてたって事。他の奴の事はそこまでは分かんねーよ?」
「あ ……そう、なんだ……」

 ……また恥ずかしいこと、平気で言う。
 いや、でも、快斗は他の人の事も鋭い、と思うけど…。

「それにさ、分かんない事もあるよ。特に、今の愁が何考えてるかは、今日話して分かった事も、いっぱいある」
「――――……そっか……」

 ……そりゃそうだよな。
 ……オレだって、自分の気持ち、話しながら、色々考えてる感じだもんな。

 ここ数カ月は快斗、側に居なかった訳だし。


「また明日色々話そうな?」
「……うん」

 オレが頷くと、快斗も、ふ、と微笑む。

「……今日はそろそろ、寝よっか。早く寝て、明日早く起きて散歩しよ」
「―――…うん」

 快斗が電気を暗くしたので、布団にあおむけに転がる。

 ……散歩。 昔からよく、快斗に連れだされたっけ。
 よく一緒に歩いたなあ……。

「……散歩好きだよね、快斗」
「――――……ん?」
「―――……散歩いこって、しょっちゅう誘われて、河原とか駅の方とかよく行ったなーって。オレ、裏道、超詳しくなったもん」
「ああ……」

 少しの沈黙の後。快斗が、ぷ、と笑った。


「……何で笑うの??」
「んー。愁って、ほんと、何も分かってないなーと思って」
「……?? 何が?」

 ちょっとむっとして。むく、と起き上がって、快斗の方を見る。

 暗いけど、カーテンの隙間からの光で、表情位は見える。
 快斗はうつぶせに寝ころんだまま、顎に手をついて、斜めに見上げてくる。

「オレ、別に散歩好きじゃないよ?」
「……散歩、好きじゃないの? え、じゃあなんであんなに……」

「散歩が好きなんじゃなくて、愁と話しながら歩くのが好きなんだよ」
「――――……っっ……」

 ――――……もう。無理。絶対、勝てないし。 絶対、無理だし。
 なんかもう、今日あちこちでドキドキしすぎて、もう、無理。

 オレは何も答えず、ずるずるとうつぶせに布団に沈んだ。





◇ ◇ ◇ ◇




 ――――……んん……。
 ………ん?

 あれ?

「――――……愁……」

 快斗の裸、カッコイイ。
 筋肉がキレイについてて、男っぽい。

 ……え。なんで、快斗、裸?

 裸の快斗に、抱き締められて。
 ゆっくりキス、されて。

 ほわほわ浮かんでるみたいな気持ちになって。


 ああ、オレ、快斗、大好きだなーなんて、思って。
 ぎゅ、と抱き付いて。 優しいキスを、受けてると。

 舌がまた、入ってきて。
 ――――……それも気持ちよくて、
 何も、抵抗もできずに、抱き付いて――――…。

「かいと……」

 大好き。そう言おうとした瞬間。

「あ、起きた? 愁」
「………………え」

 その声に、はっと現実に引き戻された。

 快斗のかわりに抱き締めていたのは、枕だった。

 あ、そうか……ゆうべ、あのまま寝ちゃったのか……。
 ゆ……夢か。

 ごろん、と転がって、枕をさらに抱きしめる。
 恥ずかしすぎて、快斗の顔を見られない。







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