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第3章◇ふたりきり
「緊張」
しおりを挟む「すげー久しぶり。オレんち」
快斗が笑いながら、自分の家を見上げてる。
「なー、快斗? 先にうちに、お泊りグッズ取りに行くけど」
「あ。オレもおばさんに挨拶いく」
そう言う快斗と一緒に、オレの家に入った。
「母さん、快斗来たよー」
声をかけると、母さんが玄関に迎えにきた。
「快斗くん 久しぶり。元気そうね!」
「はい。おばさんも元気そうで良かったです」
快斗がにっこり笑って、母さんと話してるのを横目に、オレは自分の部屋に用意してたお泊りグッズを取りに行く。
その間も、母さんの楽しそうな笑い声。
母さん、快斗、好きだからなあ……。
苦笑いしつつ、準備をして、1階に降りる。
「快斗、荷物取ってきた。行こ?」
「ん」
「あ、待って。食べ物と飲み物、適当に買っといたから、これ持ってきなさい。バスタオルとかタオルはリビングに置いといたし、シャンプーとかも置いてきたし。 冷蔵庫もさっき電気いれてきたから、使えるはずだけど… とりあえず、明日2人で朝ごはん、食べにきてね」
「ありがとうございます」
「母さんありがと。じゃーねー、おやすみー」
買い物袋2袋を持たされ、お泊りグッズと共に家を出た。
快斗の家について、快斗が玄関の鍵を開ける。
「おばさん、布団干しといてくれたって。ずっと換気とかもしてくれてたみたいだな」
「うん、よく窓開けてたよ。でもオレは、快斗が居なくなってから初めて入る」
「そっか。 な、愁、少し休む? それとも今シャワー浴びる?」
「んー…… 先シャワー浴びていい?」
「いいよ。ちょっとオレ、色々部屋準備しとく」
「うん」
快斗の家の家具や、クーラーなどの大きい家電は、ほとんどがそのまま残ってる。数年で戻る予定ということで、転勤先では家具家電付きの家を借りたらしい。
だからこそ、快斗はこのままこの家で一人暮らしすると、ずっと訴えていたみたいだけれど。 それでも、家具の中身は大部分持っていってるので、すごく変な感じ。
ベッドとマットレスはあるけど寝具はない。冷蔵庫はあるけど、当然中身は入ってない、食器棚も中身がない。電話などを置く棚はあるけど、何も置いてない。
バスルームの脱衣所には、母さんが置いたと思われる新品のシャンプーやボディソープなどがちょこん、と置いてあった。
シャワーを頭から浴びて、はあ、と息をついた。
快斗がこっちに来る事になった時、
一緒に、この家に泊ってくれる?と聞かれて、すぐ、良いよと、頷いた。
「――――……」
よく考えたら。
……好きって言われてから、初めて2人きりで夜過ごす訳で……。
何も考えず、すぐに頷いてしまったけれど。
さっきこの家に入って、2人きりの静かな空間に入って、あらためて、その事に、気づいた。
……貞操の危機?
「――――……」
……は。
何考えてんだ、オレ。……んな訳ないか。
思わずブンブンと頭を振ってしまう。
「……はー……」
何だかどっと疲れてため息。
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