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◆第一章
12.
しおりを挟むふ、と意識が戻った。
かなり、明るい。
……結構な、良い時間な気がする……。
起きないと、と思うけど。
とりあえず、大学も夏休みだし。今日は、時間の制約は、ない。
……それより。
――――……昨日のこと……。
オレ。
昨日。
…………あんなの、初めて、だったのに。
――――……どんだけ、抱かれて。
どんだけ、声、出して。
…………はっ!!
……オレ……口で、琥珀の……とか。
ずー-----んと、ドデカイ岩が、オレの頭に乗ってるような、そんな感覚が、マジで襲ってくる。
……何、あれ?
唾液が媚薬だとか、恐ろしいこと、言ってたけど……。
……あれ、全部、それのせいだよね……。
だって、あんなふうになるの、絶対、おかしいもんね。
そうだそうだ、媚薬のせいだ。うん。それ以外ないな。
それにしたって――――……。
キス、して。抱き付いて。色んなことして、されて。
「――――…………」
うつ伏せに寝ていたオレは、そのままの状態で頭を抱え込んだ。
全部忘れたい……。
初体験があれって。オレ、どうすんの、あれしかだめになっちゃったら、どうしてくれんの。
あ!そうだ。
なんか、色んな変な力が、ありそうだった、琥珀。
忘れさせる能力とか、持ってるんじゃ……。
そうだ、聞いてみよう!
がぱっと、起き上がると。
寝ているんだと思っていた琥珀は、オレの方を向いて肘をついててそこに頭を乗せたまま。オレを、じー、と見つめていた。
「……っ……おき、てたの?」
「結構前からな。……お前が、頭抱えてんのも、見てたけど」
「――――……声、掛ければいいじゃん……」
「いやなんか……変わったことするんだなー、人間て、と思ってた」
「……っ」
……生まれて初めて、うつ伏せのまま頭を抱えて悶えてオレは、人間が皆するわけじゃない、と言ってやりたかったけど。
……なんか疲れて、それもやめた。
「あのさ、琥珀」
むく、と起き上がって、琥珀に呼びかけると、琥珀も、起き上がった。
「――――……つか、何で、耳、生えてんの? 尻尾も」
精気、とったんじゃないの?
「ああ、これは――――……別にしまえるけど、無駄に使う必要もないし。外に出る時は、ちゃんと人型になる」
なるほど、と思いながら、耳と、尻尾を眺める。
――――……てか、ほんとに、生えてる……。
昨日だけの夢にしたかったけど。
もう、朝の眩しい日差しの中で、ばっちり見える耳と尻尾に、なんだか、すごく、諦めた。もう、これが現実だと。
「……その話で行くと、犬型とかのが楽なんじゃないの?」
「犬の形だと、念でしか話せないから、不便」
「……ああ、なるほど」
……昨日の、頭の中に聞こえた声か。
「あれ、気持ち悪いから、今の方がいいや」
そう言うと、琥珀は、ふ、と苦笑い。
「気持ち悪い?」
「うん。何か頭の中に、直接、もわーって……」
「気持ち悪いのか?」
「うん」
クッと笑ってから。琥珀は、オレの顎を掴んで、自分の方に向けた。
「オレとヤんのは、気持ち良かったろ?」
「――――……ッ……!!」
一瞬で昨日の諸々を思い出して、かあっと顔に熱がのぼった。
「……っっそれ、忘れる技ないの?」
「技?」
「なんか変な能力いっぱいありそうじゃん。オレ、そこらへんの記憶忘れたいんだけど」
言うと、琥珀はオレから手を離し、クッと笑い出した。
「はは。面白いなーお前……」
「面白くないし、本気だし!」
「何、忘れたい位、嫌だった?」
面白そうな顔で、オレを覗き込んでくる。
「…………っっ」
…………っっっ逆の意味で、ヤバすぎたから、忘れたいんだよ!!
とは言えず、どうしようか悩む……。
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