291 / 296
第3章
「もう意味不明」
しおりを挟む魔王が出て行って、シンと静まり返った部屋。
――――ユイカは、俯いている。
何を思ってるのか分かんないけど。
「……あの」
オレが声をかけた瞬間。ユイカは、びくっと震えた。
こっちを見ない。
……てか、見ないか。オレ今、ひどいカッコしてるし。
服の中央から裂かれたんだからもう。布かけてるだけみたいな。
しかも下腹のこのマーク!! 淫紋!!?
馬鹿魔王ーーー変態魔王ーーー!! 消せーー!!
……と、心の中では叫びながら、聞こえたらまずいので、とりあえず口には出さず、黒いシーツを引っぺがして、自分の体にかけて、体を隠した。
そのまま胡坐をかくみたいに、ベッドに座って、ユイカの方を向いた。
「あのさ、ユイカ」
「――――」
覚悟を決めたみたいな顔で、ユイカが顔を上げて、オレを見る。
「よく分かんないけど……ごめんね」
「――――……え?」
オレが、とりあえずこれは伝えておこうと思った言葉に、ユイカは怪訝そうな顔をした。
「……だって、ユイカは、魔王が好き、なんだよね」
「――――」
「あんな場面、見せてごめん……」
……オレが悪いわけではないんだけど。
でも好きな人のあんな場面、絶対、女の子に見せちゃだめだよね。いくら黒魔法を使う魔物? 魔女?? 良く分かんないけど、そういうのだったとしても。
そう思ったから、まずそれを最初に言ったんだけど。少し黙ったままだったユイカは、オレから、ぷい、と顔を逸らした。
「……連れてきたの私、だし……」
「――――まあそうなんだけど……」
でもね。なんかね。あれは無いよね……。魔王はユイカの気持ち知らないのか? ……魔王だからなぁ。恋愛とか、ないか……。
ていうか、魔王、性欲はあるんだな。マジ、サイアク……。
とりあえずオレが考えるのは、あいつが夜来るというその時までに、魔王の結界を、出ること、かな。
綺麗にしておけと言われた時は、はあ? 失礼な、オレ汚くないし!!って思ったけど、さっき、シーツにくるまる前に、自分の様子が目に入ったけど、ここまで連れて来られてる間なのか、何回か膝ついたりなんだりしてるからか、怪我してるし、土とかついてるし、服とかもボロボロだし。って服は魔王がやったんだけど。
お世辞にも綺麗な感じではなかった。
よかった、汚くて! おかげで、ユイカの割った音と一緒に、興ざめされて、一時離してもらえたし。
ってか、綺麗にする魔法は、魔王は使えないのかな??
……使えたらびっくりか。はー良かった!
「あのさぁ、ユイカ……魔王がああいうことするって知ってた?」
オレがそう聞くと、ユイカは少し唇を噛んでいたけれど、オレを見て、首を振った。
「――――人間相手には、しないと思ってた。話がしたいって、言ってた、し」
「……そうなんだ……」
……人間相手じゃ無ければ、するのか。
魔王の仲間にも女がいるってことだよね。って、ユイカも魔族の女か。
「さっきユイカがそれを割ったのって……わざと?」
「……」
嫌そうだったけど、ユイカは、こく、と小さく頷いた。
「……その紋章。効果が発動したら、抵抗なんて、出来ないから」
「――――効果が発動って? どういうこと?」
「今はまだ、魔法が配置されただけって思って。魔王さまがその気になったら……ソラも、一気にその気になるし。絶対逃げられないから。その前に止めないとって思って……」
「――――ありがと。マジで」
とりあえず、ここに魔王がいないことに、感謝。
あと、ユイカの前で、そんなことにならなかったことにも。
「……ユイカも使われたこと、あるから、知ってるの……?」
オレが、恐る恐るそう聞いたら、ユイカは、ぷるぷると首を振った。
「魔王さまは、人間は相手にしないから」
「……ふうん? そうなん…………え?」
――――人間は、相手にしないから??
どういうこと???
「え。ん??? ……ユイカって……魔物……じゃないの?」
「――――」
オレの質問に、ユイカは、ぷるぷると首を振った。
「普通の、人間……。あ、魔力は、分けてもらったけど」
何で普通の人間の女の子が、こんなところで、魔王と一緒に居るんだろうか。全然意味が分からない。
……ていうか、魔力って分けれるの?? ルカたちは出来なそうだったけど。くそー悪者の方が、妙な力持ってたりするよなぁ。ああ、やだやだ。もう全然、意味不明だ。
486
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる