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第3章
「もう意味不明」
しおりを挟む魔王が出て行って、シンと静まり返った部屋。
――――ユイカは、俯いている。
何を思ってるのか分かんないけど。
「……あの」
オレが声をかけた瞬間。ユイカは、びくっと震えた。
こっちを見ない。
……てか、見ないか。オレ今、ひどいカッコしてるし。
服の中央から裂かれたんだからもう。布かけてるだけみたいな。
しかも下腹のこのマーク!! 淫紋!!?
馬鹿魔王ーーー変態魔王ーーー!! 消せーー!!
……と、心の中では叫びながら、聞こえたらまずいので、とりあえず口には出さず、黒いシーツを引っぺがして、自分の体にかけて、体を隠した。
そのまま胡坐をかくみたいに、ベッドに座って、ユイカの方を向いた。
「あのさ、ユイカ」
「――――」
覚悟を決めたみたいな顔で、ユイカが顔を上げて、オレを見る。
「よく分かんないけど……ごめんね」
「――――……え?」
オレが、とりあえずこれは伝えておこうと思った言葉に、ユイカは怪訝そうな顔をした。
「……だって、ユイカは、魔王が好き、なんだよね」
「――――」
「あんな場面、見せてごめん……」
……オレが悪いわけではないんだけど。
でも好きな人のあんな場面、絶対、女の子に見せちゃだめだよね。いくら黒魔法を使う魔物? 魔女?? 良く分かんないけど、そういうのだったとしても。
そう思ったから、まずそれを最初に言ったんだけど。少し黙ったままだったユイカは、オレから、ぷい、と顔を逸らした。
「……連れてきたの私、だし……」
「――――まあそうなんだけど……」
でもね。なんかね。あれは無いよね……。魔王はユイカの気持ち知らないのか? ……魔王だからなぁ。恋愛とか、ないか……。
ていうか、魔王、性欲はあるんだな。マジ、サイアク……。
とりあえずオレが考えるのは、あいつが夜来るというその時までに、魔王の結界を、出ること、かな。
綺麗にしておけと言われた時は、はあ? 失礼な、オレ汚くないし!!って思ったけど、さっき、シーツにくるまる前に、自分の様子が目に入ったけど、ここまで連れて来られてる間なのか、何回か膝ついたりなんだりしてるからか、怪我してるし、土とかついてるし、服とかもボロボロだし。って服は魔王がやったんだけど。
お世辞にも綺麗な感じではなかった。
よかった、汚くて! おかげで、ユイカの割った音と一緒に、興ざめされて、一時離してもらえたし。
ってか、綺麗にする魔法は、魔王は使えないのかな??
……使えたらびっくりか。はー良かった!
「あのさぁ、ユイカ……魔王がああいうことするって知ってた?」
オレがそう聞くと、ユイカは少し唇を噛んでいたけれど、オレを見て、首を振った。
「――――人間相手には、しないと思ってた。話がしたいって、言ってた、し」
「……そうなんだ……」
……人間相手じゃ無ければ、するのか。
魔王の仲間にも女がいるってことだよね。って、ユイカも魔族の女か。
「さっきユイカがそれを割ったのって……わざと?」
「……」
嫌そうだったけど、ユイカは、こく、と小さく頷いた。
「……その紋章。効果が発動したら、抵抗なんて、出来ないから」
「――――効果が発動って? どういうこと?」
「今はまだ、魔法が配置されただけって思って。魔王さまがその気になったら……ソラも、一気にその気になるし。絶対逃げられないから。その前に止めないとって思って……」
「――――ありがと。マジで」
とりあえず、ここに魔王がいないことに、感謝。
あと、ユイカの前で、そんなことにならなかったことにも。
「……ユイカも使われたこと、あるから、知ってるの……?」
オレが、恐る恐るそう聞いたら、ユイカは、ぷるぷると首を振った。
「魔王さまは、人間は相手にしないから」
「……ふうん? そうなん…………え?」
――――人間は、相手にしないから??
どういうこと???
「え。ん??? ……ユイカって……魔物……じゃないの?」
「――――」
オレの質問に、ユイカは、ぷるぷると首を振った。
「普通の、人間……。あ、魔力は、分けてもらったけど」
何で普通の人間の女の子が、こんなところで、魔王と一緒に居るんだろうか。全然意味が分からない。
……ていうか、魔力って分けれるの?? ルカたちは出来なそうだったけど。くそー悪者の方が、妙な力持ってたりするよなぁ。ああ、やだやだ。もう全然、意味不明だ。
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