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第3章

「わかんない……?」

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 とにかく、ここは、日本ではないだろうなということは分かる。
 でもって、ルカの近くでも無い気がする。空気が違いすぎる。でもユイカはルカの世界で会ったんだから、ルカの居る世界にはいるんだよね? オレ。 うん、多分そうだと思う。

 手首のミサンガは、無い。
 ……てことは、ルカの結界とやらの中にも今オレは居ない。
 えーと……リアの魔法は、一度行った場所じゃないと移動できないから、オレのところには、来れない。ルカは、移動の魔法は使えない。

 ミウは、どうだろ。
 ……もし、ミウが、オレの気配を見つけてくれるならここに来れる? 
 場所、じゃなくて、オレ、を探せるなら? 
 ミウがここに来てくれたら、ここにルカを呼んでもらえて、オレと一緒に、皆のところに連れて帰ってもらえる……かな?

 でも、出来るのかな、そんなこと。
 オレが特別何かのオーラ出してるってこともないだろうし。確かにいつも遠くに居ても呼べば来てくれたけど。
 しかもこんな、異次元空間みたいな、ルカ達の居た場所とは、まったく違う場所に居るオレを、ミウは見つけてくれるかな。

 うーん……。
 とりあえず、この部屋の外を見てみたい。外が見えたらミウ、呼んでみようかな……。

 つか、ここ、どんな場所にある建物なんだろう。
 崖の上にぽつんと建ってるとか、無いよね、と怖い絵が頭に浮かぶ。
 それだと、この部屋を頑張って出ても、意味ない気がするし。

 そんなことを考えながら、オレはベッドから降りて石の床に立ってみた。靴は脱がされていたから、石の床、冷たい……。靴は見当たらないので諦めて、そのまま恐る恐る、部屋の中を少し歩き回る。でもやっぱり、窓はないし、外は何も見えない。
 あと、今気づいたけど、なんか膝ケガしてて痛い……。そういえば転んだっけ……。

 オレは、部屋を一周して、大きくて怖いドアの前に立った。
 はー。開けたくない。開けたら向こう側、魔物だらけとかないよね?

 ……じっとしてようかな、ルカなら何かしらで助けに来てくれるんじゃないかな。……いやでも、魔王の位置特定するの大変って言ってたし。やっぱり動くべき? でもオレがここで動いてもいいことないって感じになりそうな気もするし。でもなぁ……。

 しばらく色々考えた末、じっとしていられるわけがないという結論が出た。
 こんな怖い部屋で、真っ黒なベッドで、じっとしてたらおかしくなるー!
 と、いうことで、とりあえず、一目だけでも、外を見てみることにした。
 ……鍵、かかってそうだけど。
 とりあえず、開ける努力は、してみよう。

 うん。

 ルカの姿を思い浮かべる。少しだけ力が沸くようなそんな気分。
 ドキドキしながら、怖い模様のドアの取っ手に触れたか触れてないかの一瞬。

「――――……ッ!!」

 バチバチッという大きな音がして、弾き飛ばされて、しりもちをついた。

「……い…………」

 手を見ると、怪我とかはしてない。でも、ビリビリしびれて、とてつもなく痛い。


「い……ったーーーーーー!!!」

 ぎゅうっと手を握って抱きかかえるようにして、痛みに耐える。
 電気かな。電気だよね、多分。
 下手したら死ぬやつ? これ。
 マジで痛い……!!

 時間が経つにつれて少し良くなってきた手を振り振りして、痛みをごまかしていたら。
 変な音がして、ドアが軋んで、ゆっくりと、開いた。
 ドアの前にしりもちついたままのオレを見下ろしたのは。

「ユイカ……」

 町で見た時とは服装が違う。全身、黒。
 してる化粧も、全然違う。さっきは清楚で可愛い感じだったのに、いまは、赤い唇がやけに目立つ。

「もしかして、ドアに触った?」

 そう聞かれてオレが辛うじて、小さく頷くと、ユイカは苦笑した。

「結界が張ってあるの。絶対にあかないから、触らない方がいいよ」

 そう言いながら、手を差し出してきた。
 その手を取るのはためらう。……って当たり前じゃん。ここに連れてきたのは、この子だ。と思うし。


「何で……?」
 そう聞くと、ユイカは少し考えた後。


「わかんない」

 と言って首を傾げた。

 はい? わかんない、とは?
 オレは、数秒、ぽかんとして、見上げてしまった。


 
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