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第3章
「ちっぽけな」
しおりを挟む「……う……」
……頭。痛い。
なんかここ、寒い……。どこだっけ……。
――――……。
さっきのことを思い出した瞬間、がば、と起き上がる。
目の前には、見慣れない、異様な部屋。
「どこ、だよ……」
とりあえずオレは今、デカいベッドの上。手に触れているのは、シルクみたいな手触りの黒いシーツ。……黒いシーツ、初めてかも……。わーんなんか安らげない……。
石で作られた城、かな。でも、ルカの城と決定的に違うのは、なんだかすごく暗い、ということ。
ルカの城は、光が入るように作られていたのか、明るい光が部屋の中まで差し込んでいた。今思うと、のびのびした雰囲気で、空気が綺麗に感じた気がする。
ここは、息すら、し辛い。部屋は、天井も高くて、すごく広いのに。
あ。……あそこに、似てる。一番最初、この世界に来た時の、洞窟みたいな場所。あそことは違って、ここは城だけど、なんだか暗くて、息のつまる感じは同じ気がする……。
「――――……」
そうだ。……ユイカ、は?
オレは、ユイカに、連れて来られた? でも、今、人の気配はしない。多分一人だ。
窓はない。というか、本来窓なのかなと思う形のところは閉ざされてて真っ暗。唯一、黒いドアっぽいものが、目に映るけど。なんだかすごく不気味な模様の彫刻が彫られていて……うぅ、怖い。あれ開くのかな。……もし普通に開いても、逆に怖い。あの扉の外に、何があるんだろう。……何が、居る、んだろう。
一応、部屋の中は今の時点では、静か。ここはとにかく今は、大丈夫、な気がする。
床の石には、奇妙な模様の絨毯が敷かれている。ベッドの他にあるのは、隅の方にテーブルとイス。それだけ。
考えたくない。
考えたくないけど。
……この世界がゲームの世界なら。
この雰囲気を醸し出す場所に居る奴はもう、一人しか……。
ルカが勇者で光なら、その正反対の、闇の魔王。
ユイカは、紫色の魔法を使ってた。
……あれは、闇の魔法? まだユイカの正体も分からないけど。
落ち着け。とりあえず、ちゃんと考えよう。ただ殺す気なら、さっき殺したよね。理由は分かんないけど、オレを生きたまま、ここに連れてきたんだから、でもって、とりあえず、今は生きてるんだから。
最後、リアがオレを呼んでた。オレが、何かの魔法で連れ去られたことを、リアは知ってる。ルカたちにも、言ってくれるはず。
探して、くれる、はずだけど……ここに連れてこられたことまでは分かんないかな……。
正直、泣きたい気分だけど、泣いてもしょうがないし、なんかもう、さっきの出来事も、今この場所も、さらわれたらしいってことも全部、色々現実感がなくて、もうなんか、RPGでゲームしてる気分にまでなってくる。
……もういっそ、ゲームしてるって考えてみようかな……。どうするか。
あーでも、普通ゲームする時って、主人公は大体何かしらの魔法とか力を持ってるキャラなんだよね。
オレ、なんもできない、普通の人間のままじゃんかー!
魔法習っとけばよかったー!!
って思ったけど、マッチに火をつけるみたいな魔法が使えたって、今役に立つと思えないし。
うーんうーんうーん……。
デカい、黒いベッドの上で、あぐらをかいて、ため息をついてしまう。
なんかこのデカすぎる城の部屋のど真ん中で、オレってばとってもちっぽけすぎるんだけどー。
……わーん、ルカ―!
こうなると、ルカの腕の中って、どんなに安心していられたか、ほんとに余計に思い知る。
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