上 下
283 / 296
第3章

「ちっぽけな」

しおりを挟む


「……う……」

 ……頭。痛い。
 なんかここ、寒い……。どこだっけ……。
 ――――……。
 さっきのことを思い出した瞬間、がば、と起き上がる。
 目の前には、見慣れない、異様な部屋。

「どこ、だよ……」

 とりあえずオレは今、デカいベッドの上。手に触れているのは、シルクみたいな手触りの黒いシーツ。……黒いシーツ、初めてかも……。わーんなんか安らげない……。

 石で作られた城、かな。でも、ルカの城と決定的に違うのは、なんだかすごく暗い、ということ。
 ルカの城は、光が入るように作られていたのか、明るい光が部屋の中まで差し込んでいた。今思うと、のびのびした雰囲気で、空気が綺麗に感じた気がする。
 ここは、息すら、し辛い。部屋は、天井も高くて、すごく広いのに。

 あ。……あそこに、似てる。一番最初、この世界に来た時の、洞窟みたいな場所。あそことは違って、ここは城だけど、なんだか暗くて、息のつまる感じは同じ気がする……。

「――――……」

 そうだ。……ユイカ、は?
 オレは、ユイカに、連れて来られた? でも、今、人の気配はしない。多分一人だ。
 窓はない。というか、本来窓なのかなと思う形のところは閉ざされてて真っ暗。唯一、黒いドアっぽいものが、目に映るけど。なんだかすごく不気味な模様の彫刻が彫られていて……うぅ、怖い。あれ開くのかな。……もし普通に開いても、逆に怖い。あの扉の外に、何があるんだろう。……何が、居る、んだろう。

 一応、部屋の中は今の時点では、静か。ここはとにかく今は、大丈夫、な気がする。
 床の石には、奇妙な模様の絨毯が敷かれている。ベッドの他にあるのは、隅の方にテーブルとイス。それだけ。


 考えたくない。
 考えたくないけど。

 ……この世界がゲームの世界なら。
 この雰囲気を醸し出す場所に居る奴はもう、一人しか……。
 ルカが勇者で光なら、その正反対の、闇の魔王。

 ユイカは、紫色の魔法を使ってた。
 ……あれは、闇の魔法? まだユイカの正体も分からないけど。

 落ち着け。とりあえず、ちゃんと考えよう。ただ殺す気なら、さっき殺したよね。理由は分かんないけど、オレを生きたまま、ここに連れてきたんだから、でもって、とりあえず、今は生きてるんだから。

 最後、リアがオレを呼んでた。オレが、何かの魔法で連れ去られたことを、リアは知ってる。ルカたちにも、言ってくれるはず。
 探して、くれる、はずだけど……ここに連れてこられたことまでは分かんないかな……。

 正直、泣きたい気分だけど、泣いてもしょうがないし、なんかもう、さっきの出来事も、今この場所も、さらわれたらしいってことも全部、色々現実感がなくて、もうなんか、RPGでゲームしてる気分にまでなってくる。

 ……もういっそ、ゲームしてるって考えてみようかな……。どうするか。

 あーでも、普通ゲームする時って、主人公は大体何かしらの魔法とか力を持ってるキャラなんだよね。
 オレ、なんもできない、普通の人間のままじゃんかー!
 魔法習っとけばよかったー!!

 って思ったけど、マッチに火をつけるみたいな魔法が使えたって、今役に立つと思えないし。
 うーんうーんうーん……。


 デカい、黒いベッドの上で、あぐらをかいて、ため息をついてしまう。

 なんかこのデカすぎる城の部屋のど真ん中で、オレってばとってもちっぽけすぎるんだけどー。
 ……わーん、ルカ―!

 こうなると、ルカの腕の中って、どんなに安心していられたか、ほんとに余計に思い知る。
 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

処理中です...