上 下
281 / 299
第3章

「あれ?」

しおりを挟む


「ソラは、酔うとどうなっちゃうんですか?」
 ユイカはクスクス笑いながら言った。

「んー……寝ちゃう? 気持ち悪くなったりはしないんだけど」
「そうなんですね」
「ルカに、飲みすぎんなって言われるからさ」
 
 ルカのしかめっ面を思い浮かべて、ふふ、と笑いながらそう言うと、ユイカがオレをじっと見つめた。

「ソラは、王子の恋人なんですか?」
「えっ」
 いきなり聞かれた質問に、オレも、ユイカをじっと見つめ返した。

「恋人……」
 ……恋人になろうとか、付き合おうとかは、言ってないような?

 でも、会ってからずっと一緒に居て、これからも、ずっと一緒にって言って、オレはお城に帰ったら、ルカのために花嫁修行……。ううんー??

「んーちょっとよく分かんないや」
「――――」

「でも、一緒に居たいなって思ってるけど」

 ユイカは、何だかすごく、じっと見つめてくる。

「……どうしたの?」
「あ、いえ……あの」
「うん?」

「私、すごく大切な方が居るんです、けど」
「そうなんだー」

「……すごく慕われている方なので」
「へー、そうなんだ……アランのこと??」
「誰ですか?」
「あ、アラン、知らない?」

 アラン、この町では、有名なのかと思ってた。特に女の子には。
 知らない女の子も居るのか、とクスクス笑ってしまう。
 あ、それに、「慕われて」ってことは、偉い人ってこと、かな? 

「あ、いえ……アラン、じゃない、別の方、なんですけど」
「うん。そうなんだ。いいね、大切な人」

 そう言うと、ユイカは、ふっと止まって、オレをじっと見つめた。

「……ん?」
 ゆうに何秒か、見つめ合ってしまう。とそこへ、なんだか騒がしく近づいてくる人達。

「こーら、ソラ!」

 踊ってたリアが、何人かの女の子たちとともに戻ってきて、オレの隣に座った。ちょうどユイカの反対側。

「あ、リア、お帰り。すっごい踊ってたね」

 リアは、気持ちよかった、と笑ってから、オレの耳に口を寄せた。

「ルカ、見てたよ」
「え?」
 ちょっと離れて、リアの顔を見つめると、リアはクスクス笑いだした。

「女の子といい雰囲気で二人だから」
「え」

 ユイカのこと?
 ……ていうか、あんなに囲まれてる人に、見られてたって。
 と、少し離れて人に囲まれてるルカを見ながら、ちょっとむー、と口が尖ってしまう。

「あれ? ソラ、ミウは居ないの?」
「あ、ミウはさっきからずっと町の女の子たちに餌付けされてるよ」
「……可愛いもんね」
「うん。食べてるとこ、天使だよね」

 顔を見合わせて、ふふ、と笑い合ってると、その視線の端に、オレのグラスに、ユイカが果実酒を注いでいるのが映った。

「あ」
「え?」
「んと……これで終わりでいいよ?」

 ユイカを見てそう言うと、「あ、ごめんなさい」とかしこまるので、何だかちょっと申し訳なくなって、「まあ、これくらいは平気なんだけど」と付け足して言って、一口飲む。

「――――……」

 ふわっとした感覚と。続いて、くらくら、と変な感覚。

 ――――……あれ?

 ん……そこまで飲んでないよね、オレ。
 これ、ものすごく強いお酒だったりするのかな。それとも、踊っちゃったりしたから回ってる……?
 

「あたし、ミウ、お迎えしてこようか?」

 リアの言葉に、ふっとリアに視線を向ける。なんか、少しぼやける。

「あ、うん……」
「じゃあ連れてくるね」
「うん……」

 ……どうしよう、なんか、気分悪いって、言おうかな。
 どうしよ。

 思ってる間に、リアが立ち上がって、離れていく。

 すぐ、戻ってくるかな。戻ってきたら……ルカに……。
 そう思った瞬間、手からグラスが滑った。




しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...