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第3章
「あれ?」
しおりを挟む「ソラは、酔うとどうなっちゃうんですか?」
ユイカはクスクス笑いながら言った。
「んー……寝ちゃう? 気持ち悪くなったりはしないんだけど」
「そうなんですね」
「ルカに、飲みすぎんなって言われるからさ」
ルカのしかめっ面を思い浮かべて、ふふ、と笑いながらそう言うと、ユイカがオレをじっと見つめた。
「ソラは、王子の恋人なんですか?」
「えっ」
いきなり聞かれた質問に、オレも、ユイカをじっと見つめ返した。
「恋人……」
……恋人になろうとか、付き合おうとかは、言ってないような?
でも、会ってからずっと一緒に居て、これからも、ずっと一緒にって言って、オレはお城に帰ったら、ルカのために花嫁修行……。ううんー??
「んーちょっとよく分かんないや」
「――――」
「でも、一緒に居たいなって思ってるけど」
ユイカは、何だかすごく、じっと見つめてくる。
「……どうしたの?」
「あ、いえ……あの」
「うん?」
「私、すごく大切な方が居るんです、けど」
「そうなんだー」
「……すごく慕われている方なので」
「へー、そうなんだ……アランのこと??」
「誰ですか?」
「あ、アラン、知らない?」
アラン、この町では、有名なのかと思ってた。特に女の子には。
知らない女の子も居るのか、とクスクス笑ってしまう。
あ、それに、「慕われて」ってことは、偉い人ってこと、かな?
「あ、いえ……アラン、じゃない、別の方、なんですけど」
「うん。そうなんだ。いいね、大切な人」
そう言うと、ユイカは、ふっと止まって、オレをじっと見つめた。
「……ん?」
ゆうに何秒か、見つめ合ってしまう。とそこへ、なんだか騒がしく近づいてくる人達。
「こーら、ソラ!」
踊ってたリアが、何人かの女の子たちとともに戻ってきて、オレの隣に座った。ちょうどユイカの反対側。
「あ、リア、お帰り。すっごい踊ってたね」
リアは、気持ちよかった、と笑ってから、オレの耳に口を寄せた。
「ルカ、見てたよ」
「え?」
ちょっと離れて、リアの顔を見つめると、リアはクスクス笑いだした。
「女の子といい雰囲気で二人だから」
「え」
ユイカのこと?
……ていうか、あんなに囲まれてる人に、見られてたって。
と、少し離れて人に囲まれてるルカを見ながら、ちょっとむー、と口が尖ってしまう。
「あれ? ソラ、ミウは居ないの?」
「あ、ミウはさっきからずっと町の女の子たちに餌付けされてるよ」
「……可愛いもんね」
「うん。食べてるとこ、天使だよね」
顔を見合わせて、ふふ、と笑い合ってると、その視線の端に、オレのグラスに、ユイカが果実酒を注いでいるのが映った。
「あ」
「え?」
「んと……これで終わりでいいよ?」
ユイカを見てそう言うと、「あ、ごめんなさい」とかしこまるので、何だかちょっと申し訳なくなって、「まあ、これくらいは平気なんだけど」と付け足して言って、一口飲む。
「――――……」
ふわっとした感覚と。続いて、くらくら、と変な感覚。
――――……あれ?
ん……そこまで飲んでないよね、オレ。
これ、ものすごく強いお酒だったりするのかな。それとも、踊っちゃったりしたから回ってる……?
「あたし、ミウ、お迎えしてこようか?」
リアの言葉に、ふっとリアに視線を向ける。なんか、少しぼやける。
「あ、うん……」
「じゃあ連れてくるね」
「うん……」
……どうしよう、なんか、気分悪いって、言おうかな。
どうしよ。
思ってる間に、リアが立ち上がって、離れていく。
すぐ、戻ってくるかな。戻ってきたら……ルカに……。
そう思った瞬間、手からグラスが滑った。
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