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第3章
「独占欲って」
しおりを挟む「ソラ、なんか甘いもの食べたいか?」
ジェイがそう言ってくれたので、わー、と見上げる。
「作ってくれるの?」
「ああ、どんなのがいい?」
「んーー。甘くておいしいなら何でもいい」
「分かった。つかオレが作るんだからおいしいに決まってるし。待ってろよな?」
「うん!」
頷くと、ふっと笑って立ち上がり、ジェイが離れていく。
「ジェイも、なんか可愛がってんなぁ」
アランがクスクス笑いながらオレを見る。
「ソラも、あんまり懐いてると、独占欲王子に妬かれるぞ」
「独占欲王子は今、めちゃくちゃ囲まれてるけどねぇ」
「お。ソラにも、独占欲出てきた?」
そんな風に聞かれて、え、と固まる。
「いや。別に……独占欲っていうか」
「いうか?」
「……ルカはさ、仲間以外の人と居る時は、大体、大人気でオレの側には居ないから。分かってるし、別にそれはいいと思ってるんだけど」
「ふーん」
「……そりゃ、人気あるよね」
「まあそうだな。ああいうオレ様感、モテるしな」
「ねー。つか、何でオレとずっと居るとか言うのかも、正直良く分かんないし」
アランは、オレの言葉を聞いて、んー、としばし考えてから。
「ルカは、お前にいっつも手ぇ、出すんだろ?」
「……っっ何その聞き方」
「それ以外聞きようがないし」
うぅ。ほんとやだ、デリカシーのない人って。思いながらも。
「……そうだけど、それが何?」
「もうそれがすべてじゃん。他の奴のところに行かず、ソラだけにしてんなら、もう、何でとか無い」
「――――……」
「ソラに対して一番その気になって、可愛がってるってことが、すべてじゃん」
「……それがすべてなの?」
「それ以外何があんの?」
うわーうわーうわー。言い切った、アラン。もうすごいなぁ。この人。
何というか。それがすべてでいいの?
なんだか納得させられそうになりながらも若干引いてるオレに、アランは苦笑いしながらオレの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「ていうか、愛されてんの、見りゃ分かる。これもな?」
言いながら、オレの左手首のミサンガに触れる。
「……結界?」
「そ。そんなの、大事な奴にしかしないから」
「……そっか」
「大体どっから来たかも分かんなくて、どこ行っても関係なかったら、絶対守ったりしないだろ」
「……そっか」
「そうだよ」
そこまで聞いて、ん、と納得しかけて。
「あのさ、後の方の理由を先に言ってくれたら、もうちょっと、オレ、素直に頷けたんだけど……」
そう言うと、アランは、ははっと笑う。
「だってソラの反応、面白いんだもんな」
クスクス笑われて、からかわれてたのかと、やっと知る。
むー、何なのもう、とプンプン怒っていたら。
「ソラさん?」
いつの間にかアランと逆隣に女の子が座っていた。
「うわ、びっくりした。あ、ごめん、気付かなかった」
「ううん」
ふわ、と笑う。
色の白い、細身の女の子。髪の色は真っ黒。サラサラで長い。見つめてくる大きな瞳は、水色。綺麗だなーと、一瞬見惚れる。
「何か用?」
「お酒、どうですか?」
声、可愛いなぁ。
日本に居て、これが合コンだったら、ちょっといいなと思っていたかも。と、かなり不謹慎なことを考えながら、お酒を注いでもらう。
「お、ソラもモテてる」
クスクス笑いながらアランが言う。
「ちょっと他回ってくるから」
「あ、うん」
アランに頷いてから視線を戻すと、女の子が、お酒を注ぎ終えた所だった。
「ありがと……えーと、名前、聞いてもいい?」
「ユイカです」
「ユイカ?」
「はい」
「オレ、ソラさんじゃなくて、ソラでいいよ」
ユイカと名乗った女の子は、にっこり笑って頷く。
すごく可愛いなあ、この子。
ただなんか。なんとなく、不思議な感じがするけど。
リアに雰囲気、似てるのかな。この不思議感。……魔法使い、とか、かな??
「ん。あ……これって、果実酒?」
一口飲んで、美味しい、と思いながらそう聞くと。
「あ、はい」
「少しにしとくね。前これですごい酔っ払って」
「そうなんですね」
ユイカは、クスクス笑う。
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