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第3章

「帰れてよかった」

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「たくさん食えよ」
 アランに言われて、オレと、周りにいた人達は皆、いただきまーす、と新鮮な刺身を食べ始める。

「これ、ここでだけ食べてていいの?」
「他のとこには、他の奴が持ってってる」

 指さす方向を見ると、確かに、新たに置かれていくお刺身の大皿。

「漁師仲間と漁すんの久々で、すげえ楽しかった」

 アランの笑顔に、良かったね、と笑うと。

「ソラもありがとな」
「てか、オレはついてっただけだし」
「料理一緒に手伝ってもらったり、色々頑張ってもらったろ」
「んー……役に立った?」
「役にも立ったし、一人でやるより楽しかった」

 笑ってくれるアランにオレも嬉しくなって、そっか、と頷く。

 アランがモテるっていうのも、なんか分かるな。
 ただ、相手が何人もいるっていうのがおおっぴらっていうのは、この世界特有っていうか。自由すぎるけど。

「料理、結構覚えただろ?」
「うん」

 確かに、食材や、それぞれの調理の仕方とかも結構覚えられたかも。

「あ、そうだった!」
「ん?」

 すっかり忘れてたことを思いだした。

「オレさ、ルカのお城に戻ったらね」
「うん?」
「なんかすっごい真面目そうなジークって料理の人にね、料理を習わなきゃいけないの」
「……そうなのか?」

 ふ、と可笑しそうに笑うアラン。

「なんかね、料理の修業は厳しいですが、王子のためですし頑張れるでしょうって言われたんだよ?」
「王子のためですしって?」
「なんか、オレの、花嫁修業みたいな感じで思ってるんだと思う」
「おー……習うっつーか、修行、なのか? それは大変だな?」

 アランは、ますます面白そうに笑う。

「笑いごとじゃないのに、皆も笑っててさ~」
「まあいいんじゃないか? 一回修行したら、色々作れるようにもなるだろうし」

「……そうだけど。オレが、ルカのために料理修行とか。なんか不思議で」
「まあそうだろうけど……ルカのために作ってやりたいって気持ちはあるんだろ?」
「ん……あるけど」
「じゃあ頑張れば?」

 クスクス笑うアランに、まあそうだね、と笑ったところで、視界に知った顔。

「ソラ!」
「あ、ジェイだー」

 むぎゅ、と抱き締められた。

「ジェイ、料理作ってたの?」
「ん、さっきも港は行ったんだけど、すぐ始まりそうだったから即作りに戻ってた。今やっと落ち着いたから、出てきた。おかえり、ソラ。他の奴は……」
「あっちに皆いるよ」

 クスクス笑って、皆をそれぞれ指さす。

「ああ、皆、大人気な?」
「うん」

 ふふ、と笑う。

「さっきアランに聞いた。お前、魔物の腹に行ったりしたんだって?」
「あー……うん、行ったけど」
「頑張ったなー?」

 ぐしゃぐしゃと、頭を撫でられた。

「でも、ミウに連れてってもらって、すぐ出たんだけどね」

 そう言うと、ジェイは首を振って笑う。

「腹ン中のルカに、剣を届けたんだろ? すげーじゃん」

 めちゃくちゃ笑顔で、ジェイが言うので。

「ん!」

 嬉しくなって頷く。

「どうだった? 魔物の腹の中」
「どうだったって……んーと、どろどろしてて、ぐちゃぐちゃしてて……生ぬるくて……うーん、気持ち悪かった」
「へー」
「良かったなー、すぐ溶けるとかなくて」

「ねー、後から思った」

 アランとジェイが苦笑い。

 そう思うと、ほんと、帰ってこれて良かった。










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